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112 高額報酬!


 さて、その後俺はケイにカレーをご馳走し、ケイはもう夢中になってカレーを食っていた。


「あ……ああ……。なに、何!?……この、とんでもなく美味しい食べ物は!?」

「ケイ、これがカレー!おいしいよー」

「カ、カレー……っていうの!?こんな美味しいご飯……初めて食べた!」


 食後、ケイはうっとりしてしばらく食い終わった皿を眺めていた。いつも通りのカレーなはずなのにそんなに美味かったか?


 いや、多分このカレーが美味かったというよりケイの世界の飯がマズいというのが正解だろう。あの芋しかり。


「カレーが食いたきゃいつでも来いよ、ケイ。ウチは週一でカレー作るからよ」


「カレーも持って帰りたいなー!」


「あの木くぐった瞬間寝て鍋ぶちまけるから無理だ。材料持って今度そっち行ってやるよ」

「ホント!?絶対来てよカイトおじさん!ターニャも、あとカブも!」


 ――パッパーッ!!


 おっと言ってる側からカブの合図だ。木が光ったらしいな。


 カブのホーン音に反応してみんなで外に出てみると、やはり例の巨木が光っていた。


 俺は忘れないようにケイに芋が大量に入った箱を渡し、ターニャとカブも一緒に木の前に集まった。


「じゃあな!気が向いたらまた来い」

「……うん」


 ケイはうつむいてちょっとさみしそうな顔を見せている。

 ターニャはそんなケイの手を握った。


「ケイ、こんどはいつあそぶ?」

「あ、明日でもいいけど?」

「明日は(ギルドに)用事があるんだ。スマンな……あと、そっちの王様に伝えといてくれ。『魔物倒しに、行けたら行くわ』ってな」

「カイトさん……それ行く気ない人のセリフでは?」


 俺はちょっとはにかんで笑って答えた。

「まあそれは冗談だけど、本当にお前にはちょくちょく会いに行くからよ。なあターニャ?」


「うん!ぜったい行く!」


 ケイは服の袖で顔を隠し、最後に別れの言葉を言った。


「バイバイ!!」



 ――スゥー……。


 ケイの姿が木の間へと消えていく。近いようで遠い世界へアイツは帰った。

 そして、それと同時に木の光は静かに消えていった。


 ターニャは振り返って俺の顔を見た。意外にも寂しそうな顔はしていなかった。


「おじ、こんどはカレーのざいりょう持ってあっち行こう!」

「おう、そうだな」

「僕ももちろんお供しますよ!」

「頼むぜ」


 俺はその木を見ながらふと思った。



 もしかしたらあいつも王城に連れて行かれてんのか?……と。




 ――次の日の朝、俺はワクワクして起きた。


 何と言っても今日はギルドで報酬を貰えるかも知れないからだ。


「ふふふふふ……」


 俺はニコニコしながらターニャに挨拶した。


「おっふぉっふぉっ!おっはよーターニャ!」


 そんな俺を見て、ターニャがちょっと困惑している。


「おじ!だいじょーぶ??あたま」


「おう、俺は健康だ!今日は良いことがあるかも知れんからな。ウキウキしてるんだ!」

「なんでー?」

「お金だ。報酬でお金が貰えるんだ!」


「お金!?おお……、いっぱい芋が買える!」


 ターニャは微笑んだ。


 まあ、もちろん俺は芋より会社経営の資金が出来るという事で嬉しいのだ。

 まとまった金があれば色んなことが出来るぜ。ふふ……。



「よーし、早速飯食ってヤマッハのギルドへ行くぞ!!」

「ういーー!」



 ――ドゥルルン!


「ヒャッホーウ!」


 ヤマッハに向かう途中でも俺は浮かれていた。


「カイトさん、やけにテンション高いですね。お金絡みですか?」

「ふっ、まあな。セシルの話によれば、昨日国の役人達がギルドに来て、ニンジャーから運んできたモノを確認し報酬をギルドに置いていってるハズだ」

「やくにんって何ー?」

「国民が稼いだ金を○○税とかいって何割かブン取っていく悪い奴らのことだぞ!」

「カイトさん、私怨しえんが入りすぎじゃないですか?というかそれ、どっちかというと政治家では?……」

「よくわからん!」


 ターニャがちょっと拗ねている。もうちょっと大人になったらコイツにお使いとかさせてみよう。

 そして最終的には『スーパーカブ』の会計も……。まあ気の長い話か。



 ――などと言っている間にギルドに着いた。

 俺はカブを停めて、ターニャと一緒にニヤニヤしながらドアをあけた。


「あ、カイトさん。こんにちは!」


 いつものイングリッドの明るい声が聞こえた。


「おっす、イングリッド。コレを貰いに来たぜ!」


 俺は親指と人差し指でコインの円を作ってみせた。


「あ、報酬ですか!それで上機嫌なんですね。ふふっ、素直ですねー」


「ほうしゅー!ほうしゅー!」


 隣でターニャが反復している。


「じゃ、セシルさん呼んできますねー」


 そう言ってイングリッドはカウンター奥へと消えていった。



 俺は心を踊らせながら待っていると、何やら後ろから男2人組のヒソヒソ話が聞こえてきた。



「お前、スーパーカブって会社知ってるか?荷物の配送会社らしいんだけど」

「ああ、聞いたことあるな。なんでもあのハイビム村まで半日とかからず配達して戻って来たとか……」

「スゲーよな!一体どんな車乗ってるんだろな!?」


 ふっ。カブなら今外に停まってるぞ。


「でさー、もう一つ謎な事に、そこの代表者……あの氷のように冷たいギルマスのセシルさんとなぜか仲がいいらしいんだよな……」


「ええ!?マジかよ……美人だけど何考えてるか分からなくて心を開かないあの人と!?」


 おいおい随分な言い草だな。あいつは不器用なだけで根は優しいぞ。


 俺はサッと後ろを振り向くと、20代後半ぐらいの男2人がテーブルに座って依頼書を並べながら話し合っていた。

 コイツらも何らかの商人だろうな。


 ちょっと一緒に話でもしてみたかったけど、俺が出しゃばるとカブまで注目されちまうからやめとくか。


 ……ってゆーか俺、結構有名になってんのか?マズいな、カブの事は秘密にしたいんだが、……いや、しかし有名にならんと仕事が増えねえし……。うーん。

 俺はまた会社運営のジレンマに陥ってしまった。



「お待たせカイト」


 奥からセシルが出てきて手招きしている。

 俺はターニャと一緒に奥へ入っていった。


 そして奥にしばらく進むと、セシルは素早く振り返り、大きめの声で喜びを露わにした。


「カイト、やっぱりあなたは凄いよ!あの神経質な大臣が文句なしと評価してたんだ。来月も仕事を頼みたいって!」


「お、おお!やったぜ……あ、あのよ……、報酬は?」


 そう聞くとセシルは、自分の鞄から皮の袋を取り出し俺に渡した。

 そしてこう付け加えた。


「報酬は30万ゲイル。確認頼むね、カイト」


 俺はすぐさま脳内で日本円に直してみた。



 ――ひゃ、120万円か!?うおおおおっ!!


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