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107 土魔法で家の材料を作ってもらおう!


「なあケイよ、ちょっとお前が非常食で持ってた芋、味見させてくんねーか?交換だよ交換」


 俺がそう言うと、ケイはキョトンとした顔を見せた後、ポーチから黒い里芋のような芋を取り出した。


「いいけどこれホントに美味くないよ?」


 首をかしげてケイは俺に確認する。むしろどれだけ不味いのか興味が湧くぜ。


「不味くてもいい。ターニャも食うか?」


 ターニャは「当然!」と言わんばかりに大きく頷く。よし、じゃあ物々交換といくか!



 俺とターニャはケイにもらった芋を手に取り、まず思ったのは「これ、このまま食えるのか?」という事だった。

 なんか土とか付いてるし、どっかで洗って食いてえな……。


「なあケイ。これ、洗って食いてえんだけどどっかに川とかねえか?」


 俺がそう言うと、ケイはニヤァと笑い。自慢げに話し出した。


「あっ、そっかー。おじさん達魔法使えないんだったね。しょーがないなー私が洗ってあけまるよー。この『水魔法』でね!」


 相変わらず生意気なガキだが水魔法というのは俺も興味があった。


「水まほー!?ケイ、見せて見せてー!!」


 ターニャは大はしゃぎだ。あれ?そういやターニャも火の魔法使えるんじゃ……?


 俺がケイから貰った芋を手に持った状態でいると、ケイは俺の前に立って手をかざした。


 ――すると、ケイの腕の周りに円形の陣が現れた!これがもしかして魔法陣か!?


水巻みずまき!」


 ケイがそう唱えると、どこからともなく水が溢れてきた、ええっ……!?


 そして俺の掌全部を覆うように丸い水球が現れ、そしてまるで洗濯機のように渦を巻いた!


 ――ジャバアアア……。


 おっ……おお!手がなんか気持ちいい!そして当然ながら芋の方もしっかり洗われている。


「うわー、ケイすごーい!」

「ふふーん、これぐらい余裕だからね!本気出したらもっと凄いんだから!え?なに?見たい?見たいの??えーしょうがないなー」


 なんかめっちゃアピールしてくんなコイツ。


 ケイはキラキラした目で俺の顔を見てくる。よし、そこまで言うなら……。


「おう、芋はもう洗えたわ。ちょっとその本気の魔法とやらを見せてくれよ、ケイ」


 その言葉を聞いたケイは自己顕示欲を満たせると分かったからか、ニヘャッとした笑顔を浮かべて今の水魔法を解いた。


 俺は綺麗に水で洗われて食いやすそうになった茶色の芋を軽く握ると、ケイの魔法に注目した。



「岩々がんがんそう!」



 ん?地面がちょっと揺れ出した!な、何だ何だ!?


 ゴゴゴゴゴゥン!!


 ドドドドドドドドッッ!!


 …………。


 うおお、すっげ……!!な、なんか、土の塔みたいなのが出来たぞ!?


 ケイは腰に手を当て胸を張って得意げに語り出す。


「これが土の上級魔法よ!どう?子供でこの魔法使えるの私ぐらいじゃないかなーうふふっ……」



「やーーーーっ!」


 ボボボボッ!!


 そのケイの隣でターニャが、自宅の木の近くでも披露した火の魔法を使っている。

 おおっ、家で見た時より炎がデカいぞ!


 それを見たケイは激しく動揺した。


「え、……タ、タタタ、ターニャ!?あ、あんた今何歳??」


 ターニャはあっけらかんとして答える。


「4さいだよ!」


 すると安心したように

「あ、そう。ま、まあ私今10歳だけど、それぐらいの魔法は3歳から使えてたんだからね!」

 

 なんかターニャに対抗意識でも湧いたのだろうか?負けず嫌いな奴め。



 よし、ここは俺も大人の力を見せてやるかー。



「俺も使えるぞ?土の魔法!」


「え!?」

「おじ!?ホント?」


 もちろん嘘だ。だが今の俺なら魔法っぽい事も出来てしまうのだ!


「ちょっと離れとけよー」


 ターニャとケイは揃って逃げ出した。


「僕も逃げておきます!怖いです」


 ドゥルルルン!カブも危機を察知して離れていく。


 俺は拳を握り込んで地面に対して構える。そして――。



「チェリャアアアアア!!」



 ――――――ドゴォッッッ!!!!



 地面に向けて放たれた俺の拳は、信じられないぐらいの威力で地面に大穴を開けた!!

ふはははは、気分は地上最強の生物だ!


「ふっ。見たかケイ、俺の土魔法を」


「それ魔法じゃなーい!ただ地面殴っただけでしょ!?」


 ちょっと怒ったように叫ぶケイだったが、その通りだ。あはははっ。


「もー、ビックリしたー。おじさんにまで魔法使われたらどうしようかと思った……」


「おじ、すごーい!」


 ドゥルルン。

「……カイトさん。密かにこの世界楽しんでませんか?」


 カブはクレーターのような穴の中にいる俺にちょっと引いたような顔を見せた。


「凄い力を得たら試したくなるのが人情だろ?それよりケイ、芋貰うぞ。お前もその芋食えよ」


 ダッ。


 俺は一飛びで穴から出て、芋を頂く()()をすると案の定ターニャが大慌てでこちらに向かってきた。


「あー!おじ、まってまって!ターニャも食べるー!!」


 そこでケイが、

「ターニャ、落ち着くのよ。もう一個あるんだから」

 とちょっとお姉さんっぽく伝え、例の水魔法でその芋も洗ってくれた。



 ……という訳で、俺達は各々の世界の芋を交換し、そして同時に口に入れるのだった。


 カシャッ……。モグモグ……。


 その芋は不思議な食感で、密度が低いのか軽く一噛みするだけで噛みちぎれた。

 そして味の方はなんか苦くて、正直言ってマズい。

 ……というか芋って普通、蒸したり煮たり焼いたりして食うもんなんじゃねーの?これ、生だよな?



 イマイチこっちの世界の食い物がどうなってんのか分からず、俺は困惑していた。


 ターニャも大好物の芋を食ってるにも関わらず渋い表情を浮かべている……、子供ながらケイに貰った芋だから気を使って「マズい」とは言えないようだな。


「おじ、この芋はまずい、ダメ。美味くない!」


 前言撤回、やっぱ素直な奴だったわ。



 ……そこでふと隣を見ると、真顔で俺達が持ってきた焼き芋をむさぼるケイの姿があった。

 目を見開いて完全に芋を食うのに集中している。よほど美味かったと見える。


 そして即食い終わり、しばらくうっとり虚空を見つめた後驚きの表情を浮かべ感想を述べた。


「な、なにこれ……。う、うますぎるんだけど!!それに、すっごく甘い……。ホントにお菓子みたいっ!!」


「その芋はそういう甘い種類の芋なんだ――」


 俺は説明したがケイはそれを聞く前に俺の腕を引っ張ってきた!ん?


「もっとこの芋欲しい!おじさん、ターニャ……も、もっとない?」



 ……!ここで俺はある事を閃いた。


「なあ、ケイよ。土魔法で()()()()()()()()()()()()()出来たりするか?」


「うん、出来るけど?……てゆーか余裕。ね、それより芋、ほしいなー」


 コイツもターニャに似て芋好きなのか?


 ようし、じゃあ芋と交換でケイに石材を作ってもらおう。


 それをスズッキーニに持ち込んで俺の会社『スーパーカブ』の事務所を作ってやる!!


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