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106 ケイよ、これが芋だぞ!


 俺はカブの方を見た。


「僕も行きたいです!またあの凄いパワーが使えるんですね!?」


 カブも行く気満々のようだ。ならもう決まりだ。


「ターニャ、芋2つ新聞紙にくるんでカバンに入れて、ついでにほかの芋も取ってきてくれ。ケイへのお土産に持っていこう!」

「ういーー!」


 おっと、忘れずに野外コンロの炭火を消しておこう。帰って来たら家が燃えてたとかシャレにならん。


 ジューッ……。



 よし、準備は出来た。またあのガキに会いに行ってやるか!



 ――ドゥルルッ。


 俺達は最初からカブに乗ったまま、その木の穴の前まで行き、少しずつ前進していった。

 ふとここで思った。



『あれ?これもしかしてまた俺達あの王様んところへ行くんじゃね?』




 ――その通りだった。


 俺は周りを見回すと、そこはやはりあの王城だった。


「ようこそ、異国からの転移達者よ……ん?」


 昨日の王らしきおっさんが同じセリフを口にした。それテンプレートになってんのか?


 そして俺達もさっきまで眠ってきたようだ。

 やっぱりあの木から転移するとそうなってしまうみたいだな……。



 ここで強くなった俺は調子に乗って強気に出た。


「あ、王様。うっす。悪いけど魔物とか倒すの後回しにさせてくれねーかな?ちょっと向こうの世界で色々やる事あんだわ」


 カブが冷や汗をかいて俺を眺める。


「ぼ、暴言ですよカイトさん……」


 知ってる。


 そしてターニャも、

「おじ、ここはケイがいない。早く外いこー!」

 と続いた。


 すると王は、クックック……と笑った。


「重ねていうがそなたらに拒否権はない!前回と同じようにはいかぬぞ!」


 ん?……なにやら自信満々の王の言葉が気になり、謁見の間の後ろの出口を見ると、確かにこの前の3倍近い兵士が集められていた!


 しかも前と違い、後ろの扉はしっかり閉められている。


「なーるほどな。一応逃亡対策はされてるみたいだな」


「カイトさん、良い方法がありますよ!」


「お?何だ?」


 俺はタブレットに耳を寄せ、小声で話すカブの言葉に耳を傾ける。……なるほど、よっしゃ!



 俺はまたターニャをベトナムキャリアに乗せ、自分もシートに鎮座した。

 そしてエンジンをかける。



 ――ガギャギャギャギャ!!ドゴルゥウウウン。ボボボボボゴウンゴウンゴウンゴウン……。


 やはり馬鹿でかいエンジン音だ。というかもはや単気筒の音ですらない。



 そしてカブに乗った俺はUターンして、真剣な顔でターニャにこう伝えた。


「ターニャ、目を閉じてろ」


 ターニャはしばらく俺の目を見た後「うん!」と頷く。物分かりがいいぞ!



 そして俺も目を閉じて補助灯のスイッチを入れた……。



 ――カッ!!!!――。



 目を閉じて、さらに手で目を覆っていても視界がかなり赤くなるぐらいのとんでもなく強い光が辺りを照らしているようだ!


「ぐああああ!!目がああああ!!」

「うわああああ、な、何も見えないっ!」


 兵士達の悲鳴が次々に耳に入ってくる。


 まあ、例えるならこの場に小さな太陽が現れたようなもんだ。


「ぎゃぁああっ!な、何だこの光……はっ!?」


 どうやら王様もしっかり()()()()るようだ、はっはっはー!!


「カイトさん、兵士の皆さんはうずくまってます!門まで動かしますからしっかり乗ってて下さい!」

「おう、頼む」



 ドゴルゥウウウン!


 カブは跪いている兵士達を避けて、閉ざされた門の前まで運転してくれた。


「カイトさん。一旦補助灯消します!あの門開けられますか?」


 門にはしっかり鉄製のかんぬきがはめてあり、俺達を逃すまいとする強い意志が感じられた。しかし――!


「フンッ!!」


 俺はその鉄の棒に手を掛け、手前に引っ張る。すると。


 バキィイイン!


 思った以上に手応えもなく鉄棒はひん曲がり、そのままドアを押すと簡単にドアは開いてしまうのだった。ふはははは、俺強すぎだろ!


「よーしやったぜ!」


「おおー!おじ、すごい!」


 俺は再び素早くカブに乗り、門を抜けて城から脱出した。よっしゃー!!



「やりましたねカイトさん!」

「おう、お前の爆光ランプもかなりのもんだったぞ!」

「ケイ、まだいるかなー??」


 などと俺達は感想を述べながら、以前来た田舎の村付近までカブを走らせた。



 ――ゴルゥウウウン!


 そして辿り着いたのは例のデカい岩があった場所だ。

 岩は既に俺の手刀によって真っ二つに割られていた。これも昨日のままだな。


 そこにカブを止めると、ターニャがまず降りて駆け出していく。まあもちろんケイを探すつもりなんだろう。


「ケイー。きたよー!芋もってきたよー!どこー?」


 ここでケイの奴が言ってた事を思い出した。


「ターニャ、ケイは近くの村にいるって言ってたぞ」


 ターニャは振り向いて言った。


「じゃあ村いこー!」

「おう、でもどこに……あ!あれか?」


 俺はここで辺りを見回すと、小さな家が5〜6件建っているのを見つけて確信した。



 あれだ!



 俺達は再びカブに乗り込み、その村へ突撃した。



 ――村に着くと、最初に驚いたのは家の構造だった。


 どうやら全て石で作られているようだが、普通なら絶対あるはずの石と石の間の()()()のようなものが見当たらない。

 まるで元々あったデカい岩を中からくり抜いて窓や入り口を開けたみたいな……。


「うーん、……もしかしてこの村の家は全部、何かの魔法で建てられたんじゃ……!?」

「いやー、さすが魔法文明の世界ですねー!どんな魔法があるのか僕見てみたいです!」

「ターニャも楽しみ!」


 と、浮かれた俺達が騒いでいると。その岩の家の中から何者かがひょっこり顔を出した。


「なによもー。うるさいな……あ!」


「あー!ケイ」


 それはやはりケイだった。それにしても魔法使いだと一発で分かるような格好だな。


「ういーー!」

「ぐえっ……!タ、ターニャ、……アンタ、本当に来たんだ」


 早速ターニャが抱きつきにいき、ケイは物理的にくらっているがちょっと嬉しそうな顔だ。はっはっ、おもしれーなこの2人。


「おかし持ってきたよー!」


 ケイはちょっと困惑して答える。


「お菓子って芋でしょ!?……ホントに甘いの?」


 俺は背負ったカバンから芋を2つ取り出し、ケイとターニャに持っていった。


「ほら、あま~い匂いだろ?」


 ケイは俺が手に持った芋の匂いを真剣な表情で嗅いでいる。そして、ハッとしたように目を丸くした。


「え!?……ナニコレ、本当に芋!?……すっごい甘い匂い!ちょうだい」


 もちろんそのつもりだ。しかしこっちの世界の芋の味もちょっと気になるな。あんまり美味そうに見えないが……。


 よし、ちょっと味見してみよう。


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