目覚め
連日投稿ですが、今話から一旦書きだめに入ります。
次回投稿がいつになるか分かりませんが、お待ちください。
「ん、ん~」
もう朝か…寝落ちしてたな。
もう少し寝ようかな。
「んぁ、ふぁー…ん?」
声が…高い?
目を開けると、そこは知らない天井だった。…正確には知らないわけではないが、よく見なかったし、気にしていなかった天井がそこにあった。
自分の部屋の天井。そんなもの、気にしている人のほうが少ないだろうものが目に映った。
「うぇっ!?」
思わず飛び起きてしまった。
起きると、それと連動して頭が引っ張られるような感覚になる。ビックリして頭を振ると、クリスタルのようにキラキラと輝く髪が目に映った。
その髪は3年間、毎日のように見てきたので、ひとつ疑問が浮かんでくる。
ログアウトできていない?機器の故障か?
いつもゲームで見てきた髪があることで、ここが現実ではないことが分かる。
ゲーム内ということを手っ取り早く確認する方法、それはステータス画面、オプション画面を開くことだ。
…いくら操作しても反応が無い。…でもまだバグという可能性がある。MWOは、フルダイブVRゲームが登場してからまだ2、3年というまだまだ開発されていない分野のため、バグがあっても不思議ではない…が、ここまで致命的なバグを放置するだろうか。
まだ、音声入力が生きている可能性も…捨て切れないし…
「コマンド・オープン」
反応無し。
「ゲームコール」
これも反応なしか、
「ステータス……はぁ、反応なし。か」
ゲーム世界に閉じ込められたか?いやでもなんで……夢の可能性も?
「ふぬぅ…しっかり痛いな」
頬を思い切りつねると、痛いのだ。これで普通の夢という可能性がほぼ潰えた。
どうじに痛みで、頭も冴えてきた。
考えられる仮設は三つ。
一つ目、夢の可能性。
これはほほをつねったときにしっかり痛いので、無いと考えてもいいだろう。
二つ目、ゲーム内に閉じ込められた可能性。
現状ゲームなのか確認することもできないため、なんとも言えない。
三つ目、ゲームと似た異世界説。
妙にリアルだし、精巧な質感で、いままで見てきたようなものよりも綺麗だ。しかし、異世界に行くなんてそんなふぁんたじーな出来事が起こるとは思えない。
恐らくゲーム世界だろう。
…仮に俺だけこのゲームでバグに遭遇しているとしても、機器の方のシステムで落とされるだろう。しかし、それは8時間連続ダイブし続けると起きるもの。俺はかなりダイブしたあとに寝落ちした気がするから機器の方も死んでるか。
…家の人が気付いたら電源コードを抜いて強制ログアウトさせてくれるだろうし、あせらなくてもいい、か。
それでもログアウトできなかったときはそのときだ。
「ふっ、んっ…」
現実世界で、ダイブ後や起床後にするストレッチをしてから、いったん部屋を見渡す。
かなり高級そうな部屋で、机が壁にくっついており、その壁には化粧をするようなのか、かなり大きい鏡がおいてあった。
それ以外ほぼ何も無い簡素な部屋だったが…まぁ、ゲーム内じゃ部屋なんてほとんど使わないしな…と納得してしまう。
ベットから降りようと手を動かすと、くまのぬいぐるみに当たったが、そのくまを枕に寝かせて、ベットから降りる。
そのまま鏡の前に立つと、おおっ、と小さく嘆息する。まるで人形のように整った顔、パッチリした目。七色に輝く腰の少し上まですらぁっと伸びた髪。
…HPバーとかが表示されていないせいで余計にこれが現実なんじゃないかと錯覚しそうだ。今、俺はこの子になっているのか。すこし罪悪感。
鏡の前でいろいろなポーズを取って自分で見とれていると、ドアがノックされた。
「…お嬢様、入りますね…失礼します」
「あ、うん、どうぞ?」
お嬢様?
そんなことを考えていると、メイド服を着た女の人が入ってきた。
しかも好みな雰囲気だったりするので、一瞬呆けてしまった。
「お嬢様…!お目覚めになられたのですね!ご体調のほうは大丈夫なんですか?」
「え、えっと…どうして?」
こちとら昨日まで普通に楽しく健康に生きていた身なのだが!?ゲーム内で自分が病弱とかそういう設定はしていなかったはず。
「覚えていらっしゃらないんですか…三日前、お嬢様が急に庭で倒れてしまったんです。すぐに医者を呼んで診てもらったのですが、異常はないと診断され、わたくし達メイドが毎日付きっ切りでお世話をしていました。もう一度お聞きしますが、ご体調は大丈夫ですか?」
「あ、はい…多分大丈夫です。特に不調はないですよ?」
「では、わたくしはニーティアス様を呼んできますのでお部屋でお待ちください」
「分かりました…」
ニーティアス…知ってる名前だ。やはりゲーム内か?いや、でも…
また鏡の前に立ち、ふと気付く。
「着替えって、どこだ?」
今は完全に寝巻きの状態で、人と話すような格好ではない。そのため着替えたいのだが、インベントリを開けないので、出そうと思っても出せないのである。
クローゼットを探したが、部屋はこの鏡と机とベット以外においてあるものが無い。
もう少しもの置こうよ。こんな殺風景の部屋いたくないよ。
もう一度鏡を見ると、ありえないことが起こっていることに気付いた。それは…
「…なんで内側まで虹色になってるんだ…やっぱりなにかおかしい…」
髪の内側がただの銀髪だったのが、そこまで虹色の髪に変化していたことだ。
…プレイヤーの容姿に関してはNWO公式は一度も変更したことがないはず、それにこんなに自分だけが該当するような変更をするだろうか。
そうこう考えているとまたドアがノックされた。
「どうぞ、お入りください」
そう言うと、ドアが壊れる勢いであけられた。
「メイア殿下!。おお、ご無事でしたか!」
そう言ってきてたのは20代前半だろうか、かなり若い男の人だった。
殿下?いつ自分は王族の人間になったんだろう。たしかに、王家の人とは仲良くしてたけど、婚約なんてしたはずが無いし、やっぱりなにかが違う気がする。確信はないけど。
とりあえず役作り役作り。
「すみません。私はいま記憶がほとんど抜け落ちているようでして…自己紹介していただけますか?」
「おお…なんとおいたわしい…。そうでした。私はサーディアグラッセ王国ニーティアス領領主。サスミア・ニーティアスです。爵位は侯爵、特技は戦うことです」
ニーティアス…以前までゲーム内でお助けNPCとして配置していた代理領主だ。それが領主として存在していることはやはりなんらかの異常が発生していると見ていいだろう。
いまの領主がニーティアスならば先代の領主はいったい誰なんだろう。自分だったらどうしようか。
「質問です。先代の領主様は誰で、いったいいつ退かれたのですか?」
「先代は、私の祖父のローランド・ニーティアスで、5年前に亡くなり、そのときに私が次代領主に任命されました。それで、今に至ります」
自分が領主していたことなどどこにも記録されていないのか…そしてひとつ気になったことがある。それは殿下と呼ばれたことだ。
「私についても何か知っていることがあれば教えてください」
「はい…サーディアグラッセ王国第5王女。メイア・ジェシア・サーディアグラッセ。生まれつきのその美しい髪の毛と宝石のような瞳。そして幼いながらにして王城にある専門書が置いてある書庫に入り浸っていたといわれ、民衆からは女神のお姫様、だったり女神のお嬢だったりとさまざまなあだ名でよばれています」
王女…つまり、運営が自分の所属を変更したってことか…?
「そして、現王室の唯一の女性なので、さまざまな期待やらなにやらを寄せられていますが…まぁ、気にしなくてもいいでしょう」
「なるほど…私の歳はいくつですか?」
ゲーム内であれば歳はとらず、また自称でしか歳は設定できないはず。これが否定されたら、仮設が傾いてしまうことになるが…どうだろうか。
「…たしか、今月で11歳になるはず…です」
…ここがゲーム内で無い可能性があがってしまった。このような情報のほかに、もっと、確実な情報はないものだろうか。
「…そうですか。すみませんが、ひとりにさせてくれますか。少し、考え事をしたいので」
心配そうにメイドとニーティアス様?が出て行った。
「…ふぅ、…ここがNWO内じゃなければ、どこなんだ?異世界…と、いう仮説が有力になってきたけど、だとしても…」
科学技術は発達した現代でふぁんたじーな出来事が起こるとは思えないし…あたまがおかしくなりそう…
「様子見が、一番かな…ん?」
なにか感じる。
…おかしい、ゲーム内では絶対に再現できない、して欲しくもない感覚。初めてかんじる感覚なのに、その危険性は十分に理解できてしまう。
下腹部が重苦しくなっていく、あって欲しくない感覚。
…すなわち、尿意。
「トイレ行かなきゃ…!」
勢いよくドアを開けて、廊下を駆ける。
「トイレどこ、まずいまずい」
…漏れる、漏れちゃう。この身体は10歳だけど中身は成人男性だからっ!精神的に死ぬっ!こんなところで漏れるわけにはいかない!
どこをどういったか分からないまま、トイレを見つけた。そして迷わず男子用トイレに入っていく。
そうして、便器の前に立ち、ズボンを下ろそうとするが、今着ている服はズボンではなく、いわゆるネグリジェというものを着ていることに気付く。
そして、それと同時に今自分は女性の身体になっていることにも気付く。
「……」
あわてて男子トイレからでて、女子用トイレに入ろうとして、ためらってしまう。
いちおう、これでも心は男だ。女子トイレに堂々と入っていくだけの勇気は持ち合わせていない。
「…くぅ…ぅぅ…」
下腹部のそれの存在感がどんどんと大きくなっていく。それと同時に圧迫感も育っていき、額にいやな汗が浮かんでくる。
腹の奥でうずくたび、悪寒が背筋にぞくぞくと走り、涙が浮かんでくる。
「ぅ゛ぅ゛…」
もう足は生まれたての小鹿のようにがくがくと震え、ただ立つことが不可能になっていく。出口を押さえてせめて時間を遅らせようとするが、脚は閉じてもそこまでは閉じれないし、手で触ることも躊躇してしまうことから、なれない感覚を気力だけで何とか保っている。しかし額の汗は次第に大きくなり、滴って床に落ちるほど身体は限界に近い。
―ほら…もうすぐそこに入ってしまえば楽になれるじゃないか。
頭の中に悪魔がささやいてくるように感じる。その悪魔が指し示す先は先ほど間違って入った男子トイレ。
そう、確かに男子トイレに入ってしまえば心の中は安泰かもしてない。
しかし、悪魔と対立して天使のようななにかがまたささやいてくる。
―だめよ、あんなところに入っちゃ。誰かが入ってきたらどうするの!?ほら早くこっちに入りなさい。
天使が指し示す先は、女子トイレ。
自分のなかで、体感的には4、5分に感じる長い葛藤を経て、決断を放棄して、本能のまま動くことにした。
「う゛ぁ゛ぁ゛…も゛う゛無゛理゛」
もう誇りやらプライドやら勇気やらなにやらを放棄して女子トイレに入る。
自分の投稿頻度、不定期すぎ!?
11/3 領主の名前をサスティアからサスミアに。
ティの音自分が好きすぎて多くなっちゃう。