かつて、あの人が現れたとき
*注意
この作品は、別作品に大きく影響されて書いた作品です。似通った展開がある可能性があります。
―――目が覚めためたらそこは、知らない天井だった。
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New World Online。通称NWO。発売当初から絶大な人気を誇るフルダイブ型VRMMO。精巧なキャラメイクを自分で行えるという当時としては画期的な機能を備えたことで、プレイヤー達のそれぞれ思い思いのアバターを作り、楽しんでいた。
頭が異常に大きかったり、手足が驚くほど短かったりするアバターが大量に生まれたこともあったが、非常に作りこまれたアバターがあるのもまた事実。
それが現れたのは定期的に開催される、NWO芸術コンテストアバター部門の第二回。第一回は有名モデルや俳優といった一般人とはかけ離れた容姿を持った人物たちが表彰台を飾った。
しかし第二回では、無名の人物たちがその座を奪うこととなる。その人物たちは、綿密な計画をたて、アバター製作に妥協しない、猛者の人たちだ。
それは見事一位に輝いた人物。その人物は倍率数百倍の初期ロットを手に入れた強運の持ち主でありながら、ゲームの大地に降り立ったのはわずか第二回コンテストの数週間前。それまで毎日アバター作成に打ち込んでいた猛者だ。
現実ではありえない美貌を兼ね備えた容姿は老若男女だれもが思わず嘆息してしまうほど美しい。
このころになると企業がアバターを作り、自社をアピールするためにコンテストに参加するのだが、それら企業を抑えて見事輝いた一位は最も価値の高い一位とされている。
二位の人物は、第一回が終わった直後に大地に降り立った人物で、第一回のときにログインしていれば一位になっていたのではと噂されている人物。
残念ながら、一位とは大差で負けていたが、本人は気にしていない様子。
一位の人物とかなり親しく、他のゲームも一緒にプレイしている。
三位になった人物は、一位、二位の人たちが会場の票を掻っ攫ったせいで、四位以下の人物たちと差が無い状態で入賞した。
しかしその姿は第一回のときに比べてクオリティが高かったとか。
そして、一位の人物について、掲示板をはじめとした、さまざまな機関が動き、憶測が飛び交う。
曰く、誰もが、その人物が戦っているところを見たことが無いという。
曰く、その人物がログインしているときは常に傍に二位がいるらしい。
曰く、PvPを仕掛けたとき、1分もかからずにかけた側が全滅したらしい。2対5で、だ。
曰く、その人物は声までもが美しいらしい。
―――曰く、ネカマであるという。
三年がたち、熱が冷め始めたころ。
一人の配信者が配信をはじめた。
枠名は、「女神嬢100万人記念」
「こんにちは、皆さん。メイアです。今日は登録者100万人達成したので、雑談兼質問返ししていきます」
そう落ち着いた雰囲気で話すのは、第二回コンテスト優勝者、見る位置によって髪色が変化するという不思議な髪を持つ、見た目が小学校低、中学年ほどの幼女がいた。
腕や足はすらっとしているのに健康的で、思わず見てしまう美しさだ。
子供らしさと、しかしどこか妖艶な雰囲気を感じさせる未発達の胸部と臀部。
雪が光に照らされたかのように美しく、氷のようになめらかな、汚れひとつ無いきれいな肌。
配信用のアイテムをまっすぐ見据えるその瞳は七色に輝く美しい宝石のよう。
どこをとっても抜け目のないそのアバターこそ、メイアが一年を費やした最高傑作、【動く女神像】。
「さっそく質問返していきますね。一つ目。『その髪はどうやって作ったんですか?100万人いったら答えるってまえ言ってましたよね?』。はい。この髪ですよね。これは、髪一本一本、光の反射と屈折を計算して、髪に凹凸をつけたんです。でも、さすがに全部はできないので、内側とかは単なる銀髪ですよ?ほら」
自分の髪を持ち上げ、梳かしながら説明するメイア、その姿は一国の貴族のようで、品がある。髪が動くごとに、その色を変化させていくので、この世のものではない雰囲気を出している。
「二つ目。『かかった時間の内訳』。そうですね、まずかかった時間が1年と少しなのは皆さんご存知だと思います。はじめの一ヶ月で構想を立てて…で、髪が大体九ヶ月かかりましたね。そして肌を塗るのに大体四週間。瞳は割りとすぐできましたよ。一週間くらいで。あと、身体のバランスとかを考えるので1ヶ月。あと性能テストみたいなのをちょこっとしました」
言い終わると視界に映る、コメントをみてわずかに微笑む。コメント欄は驚愕や感嘆の声で埋め尽くされ、メイアを賞賛する声、熱量の違いに嘆く声が流れる。
「三つ目。『なぜ幼女?』。これ、よく聞かれんですよね。理由…んーっと、メリットが多いから、ですかね。攻撃が当たりづらくなる、って言うのは他の小型のアバターつかってる皆さんが言ってますし、当たり判定も小さくなることで、多少ギミックが無視できるっていう利点もありますよ」
小さな手足をつかって説明しようとするメイア。動くごとに服と髪がふわふわと連動して動く。これを見に来ている視聴者も少なくはないため、メイアも分かっていてやっているのだろう。
「四つ目。『マイクのそばで何かささやいて下さい』?…わかりました」
座っている椅子を降り、トテトテと近寄ると、配信用のアイテムに口が付くぎりぎりまで近寄って、口を開く。
「年下の女の子にこんなことさせるなんて、お兄さんの、えっち」
言い終えてすぐに椅子にもどる。かなりの羞恥であることは間違いないようで、耳の先まで真っ赤にそまっていた。
「あ、い、あえ、あの、へ、下手、でしたよね?すみません」
止まってしまったコメント欄をみて、涙を浮かべた目で悲しそうにするメイア。1秒、2秒と時間がたち、コメント欄がありえない速度で流れていく。
「あ、そんなことは無い?ふふ、ありがとうございます………
二位の人物はそこまで話題に上がることは無いが、その実力と容姿から、一部プレイヤーの間では非常に人気がある。
曰く、女神のお嬢と非常に仲がいいと。
曰く、数々の戦闘スキルを獲得し、どの武器でも達人級の動きができると。
曰く、女性プレイヤーと目が会うと必ず微笑んでくれると。
曰く、ゲーム内最高の戦力であると。
曰く、女神のお嬢に接触を試みる男性プレイヤーを排除しようとすると。
曰く、――ロリコンであると。
メイアが配信するとき、配信用のアイテムの後ろで常に待機して、メイアの安全を守る人。
名を、ケイト。今日も今日とて、メイアの配信の手伝いをしている。
「あ、あと、小型のアバターにした理由がひとつありました。聞きたいですか?聞きたいですよね!」
たまに元気になりすぎるメイアを卸すのは大変骨の折れる作業なのだが、ケイトは自分でやりたくてやっているのだ。
「それはですね…発売前に別のゲームでケイトさんが「小さい女の子っていいよな…」ってつぶやいていたのを聞いてしまったので、このゲームでも小さい女の子としてアバターをつくったんです」
「グフォッ…ッ!」
たまにクソデカ爆弾を投下することもあるが、その爆撃機は無自覚で投下しているので余計に質が悪い。しかし彼はそれがあったとしてもメイアから離れる気はない。
「ケイトさんってかっこいいのに可愛いもの好きなのでギャップに萌えますよね。いつまでも見てられますよ彼」
「う〝っ〝」
コメント欄に流れるコメントが段々と嫉妬や哀愁漂う感じになってきたが、この流れはいつもの流れなので、止めようが無い。
いつもこう無自覚で話されるものだから、視聴者もある程度慣れてくるものだ。一部視聴者はものすごく騒いでいるが、大多数の視聴者に宥められいるのを見るのも何度目か。
「次のコメント。今、何色ですか。えー。気になるんですか?仕方ないですね」
そう言い、着ていた上着に手を置き、しゅるしゅると脱いでいく。口に出そうとしたが、出している間に、下に着ているワンピースにまで手が届くと判断したケイトは無意識に行動に移していた。
「メイア、待った!!」
ワンピースに手がかかり、ワンピースも脱いでいく。それに比例して誰にも晒したことのないその白くて滑らかな肌がだんだんとさらされて行く。
たった数mの距離を走るだけだというのに非常に長く感じる。メイアの、誰もが見たことのない下着が、白日の下、晒されるというだけなのに。なぜ自分がこんなにもあせっているのか不思議に思いながらも、必死に駆ける。
ケイトが間一髪のところで覆いかぶさることで配信用アイテムからの視線をさえぎったため、下着が見られることはなかった。
「すまんな皆、ちょっとメイアとじっくり話しないといけないみたいだから配信切るぞ。乙~」
そう言ってウィンドウを操作して配信を終わる。
「さてメイアさんや何か言うことはあるか?」
「ケイトさんが止めてくれると思ってたから、でも、あぶなかったね」
全然悪びれる気配が無い友人に、思わずため息を吐く。
「はぁーー…あぶなかったじゃねえよ。今、お前がどれだけ美少女なのか理解してるか?」
「もちろん、だって俺の自信作だよ?ほら、全国の健全な男子たちにご飯のお供を配るっていう作戦は成功だね!」
「成功だね!じゃねぇよ馬鹿」
「あだっ」
無邪気に大量殺人兵器をばら撒こうとしている友人に思わずチョップしてしまったが、はたからみたらだいぶ危ないことをしているペアにしか見えないことに気づき、すこしばつが悪そうにするケイト。
「あぁ、そうだ、早く着ろよ、服。目に毒だからな」
視線をずらしながら、気まずそうに話す。その姿をみてメイアは悪戯心が刺激されたのか、悪い顔をした。
「ケイト?俺こっからじゃ服着れないからさ、手伝って?」
「ああ、分かったよ着せればいいんだろ着せれば」
やけくそ気味に了承してしまったが、たまにちらちらと見える水色の下着がいたたまれない気持ちを刺激してくる。
「……こ、これでいいだろ」
「うん、ありがとう!……眠くなってきた…」
「俺も。じゃ、今日はここら辺で落ちるか。…ってもう寝てるし」
器用に立ったまま、ケイトに寄りかかる風にして寝始めてしまったメイア。
「連れてくかぁ…」
▼メイアの寝室
「よいしょ。ふぅ、やっぱ軽いなこいつ」
そう独り呟きながら、ベットにメイアを降ろす。ゲーム内におけるステータス補正抜きでもメイアはその身体のわりに軽い。
「ん~…ケィ…行かないで……の傍にいてぇ…」
うなされているのか、そう弱々しく呟くメイア。さすがに可愛い女の子を独り寂しくさせる気はないケイトは、床に膝をつき、メイアの片手をつかむようにして寄り添う。
ケイトは段々と迫る睡魔に身を委ね、意識を手放す。
実は、ウィンドウをちょこっといじるだけで服は直ります。
シャンフ●の鯖幼女と、Mg●をよんで、ぴしっと来た作品です。
更新は気分