祭り!祭り!
1時間後、俺は集合時間ちょうどに校庭に着く様に部屋を出た
「お待たせしました」
時間ちょうどに第11校庭についたら、すでにターゲット先輩は浴衣を着て待っていた
「巫女さん衣装じゃないんですね」
「お祭りには浴衣なのではないのでござりますか?」
「まぁそうですけど...」
ここ8日間、放課後に巫女さん姿のターゲット先輩を見続けていたので巫女さん姿以外の和風な衣装のターゲット先輩には少し違和感があるが、決して浴衣が似合ってないワケではなかった
むしろ、超似合っていた。
普段はマリさんやメジェド先輩と比べると顔の良さは一歩劣るがそれでもターゲット先輩の顔は美男美女揃いのこの世界でも周りとは格が違う程良い
もともと和風の顔立ちで巫女さん衣装も凄く似合っていた美女が、浴衣を着て似合わないはずがない
「ま、まぁでも、似合ってますね」
「ありがとうございます」
俺はドギマギしながら言ったがターゲット先輩はその言葉を軽く受け流した
「早く行かないでござりますか?花火までまだ時間があるとはいえ、後夜祭を回るのはかなりの時間がかかるでござります」
「そうですね」
俺とターゲット先輩は外に向かった
敷地がバカ広いので学園の外に出るための校門まで30分近く歩いた
その間、俺は何度かターゲット先輩に話しかけたが会話が続く事はなかった
べ、別に会話が続かないからってか、悲しくなんかないぞ
「おぉー祭りやってますねー」
外に出ると直ぐに祭りの屋台が出ていた
まだ外は少し明るく、時刻は6時頃だがそれでも祭りに人はたくさん来ていた
見た感じ子供連れの家族が多いようだ
「結構、人いますね」
「これでもまだ少ない方でござりますよ」
「へ、へぇー」
俺とターゲット先輩はとりあえず適当に歩き出した
途中、綿飴など適当に買い物をしながら1時間近く歩いたが、どこまで行っても屋台は、まるで線路の歌のように、どこまでも続いていた
「これってどこまで屋台が続いてるんですかね」
「屋台は超常学園の敷地内と花火の観覧席以外、島中のどこにでもありますよ」
信じられない話だが、もう同じ方向に1時間以上歩いても屋台の数が減ることすらないので間違ってはいないのだろう
「花火まで後2時間くらいでござりますね。もう観覧席に向かった方が良いと思います」
「そうですね」
俺達は特にデートのような甘い出来事は一切なく、足早に観覧席の方向に向かった
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺とターゲット先輩が観覧席に向かい歩き始めてから1時間、俺達は観覧席に着いた
「じゃ後はその辺で適当に時間でも潰しますか」
「そうでござりますね」
祭りに来てから2時間が経過した
その間に、慣れない下駄を履いて、靴ずれをし、歩けなくなったヒロインをおんぶしながら歩くなどの定番イベントは起こらなかった
異世界でも現実なんだと確信したのであった
俺達が観覧席の近くを適当に買い物しながらブラブラしていると見覚えのある顔があった
「何してんだ、おめぇ」
「愚問だな」
見覚えのある顔それは、カーナだ
カーナは射的屋の屋台に座っていた
カーナは射的の屋台で商売をしているようだ
「金稼ぎに決まっているだろうが」
「...お前って金持ちじゃなかったけか?なんか金持ちが射的の屋台をやって、金稼ぎをしてるとは思えないんだが」
「何を言っている金持ちが金稼ぎをして何が悪い」
「まぁ確かに」
カーナが経営している射的の屋台は、随分と普通な感じだった、決して商品が豪華というわけでも、料金が高すぎてボッタクリと言えるほどのことではなかった
「てか、なんで射的屋なんだ?」
「この島の住民はガキ連れの家族が多い、全屋台売上1位を目指すならガキが無駄にやりたがるくじ引きか射的にするのは当たり前の選択だろうが」
「ガキって...まぁ間違っては無いけどさ」
俺も引きこもる前の時代、祭りにいけば食べ物なんか買わずに、射的とくじ引き、後は金魚掬いあたりに散財してたし、カーナの言っている事は間違いでは無いから困る
「全屋台1位を取ると、この俺でも小遣いとバカにできないレベルの金が手に入るからな」
「それが狙いか...」
俺が呆れたような声を上げた
「まぁ、折角だしお前の屋台の売り上げに1プレイだけ貢献してやるよ」
「折角なので私もよろしくお願いでござります」
「貴方は、あーそうか貴方が噂
の」
「...」
「噂?」
「まぁ、僕は噂を気にするようなしょぼい人間では無い、ほらこれが1プレイ分のコルクだ」
急にガーナのターゲット先輩に対する態度が先輩と接する態度から、俺と同じような舐めた態度になり、コルクを5発渡してきた
「ありがとうでござります」
置いてあった銃の中で空いていたのが1丁しかなかったので、ターゲット先輩に先にやってもらうとこにした
ターゲット先輩は大きくも無く小さくも無いサイズのぬいぐるみを狙った
ちなみに、熊と象とライオンを足して3で割ったみたいな見た目のぬいぐるみで、キメラ感が出ていて可愛くもなんとも無い、むしろ気持ち悪いレベルだ
「それ...欲しいんですか?」
「欲しいでござります」
「そんな良い見た目には思えませんが」
「運命を感じたのでござります」
そして、ターゲット先輩はそのぬいぐるみ目掛けて引き金を引いて、続々と球を打ち出した
「うわぁ」
「...」
ターゲット先輩は全ての球を打ち終えた
ターゲット先輩は下手だった。ものすごく下手だった
5発ともどうやったらそっちに飛んでくの?!、という方向に飛んでいったのだ
ここは俺が男気を見せてあのキメラ、じゃ無くてターゲット先輩の運命の相手を取るとするか
「まぁ、任せておいてください」
俺は、さっきまでターゲット先輩が使っていたコルク銃を手に取った
「割と自信あるんですよねぇ」
俺はこれでも警察学校に通っていた時期がある
当然、マジモンの銃で訓練もしたことがある
学校には1年間しか通って居なかったがもともと俺はわりかし器用な方だし、中二病による銃マニアだった俺は銃の扱いは当然マスターしている
こんなオモチャに手こずる俺では無い
俺が引き金を引くとコルクはぬいぐるみに吸い寄せられるように飛んでいった
「よし!」
ぬいぐるみにコルクが当たることを確信した俺は、コルクがぬいぐるみに当たるより前に喜びの声を上げた
しかしコルクがぬいぐるみに当たる瞬間に突風が吹いた
突風に晒されてコルクは大きく軌道を逸らしてしまい、ぬいぐるみに当たる事はなかった
「カーナ、お前ッ!」
この突風は言うまでもなくカーナが神通力で意図的に吹かせたものだ
「何だ?風が吹いただけだろう?」
突風はこの屋台にしか吹いていなかった
「いや、この屋台ピンポイントに突風が吹くわけないだろうが」
「運が悪かっただけだろう」
椅子に腕を組みながら座っていたカーナは少しニヤついたような顔をして言った
俺はその後も諦めずコルク弾を打ったが、その全てがカーナの風によって咲き飛ばされ、残る球は5発中2発になってしまった
「さて、どうしたものか」
これは、魔法を使うしか無い
何だか反則をしているような気もするが、先に異能を使ったのはカーナの方だし別にいいか
「ふぅ〜オラァ!!」
俺は深呼吸をした後、俺の魔法の一つである超回転を発動させた
超回転は自分の腕が届く範囲にある物質を回転させる魔法だ
正直、戦闘向けでは無いので陶芸の時以外ほとんど使ってこなかった魔法だ
俺はこの魔法を使い、打ったコルクにジャイロ回転を施した
マジモンの銃は、ジャイロ回転をする事で威力を上げ、その軌道を安定させている
俺はコルクをできる限りの速さで回転させた
すでに威力はマジモンの銃と同等ぐらいになっているはずだ
「貴様ッ!」
カーナは突風を吹かせたが、弾道が逸れる事はなかった
「よし!」
コルクはぬいぐるみに命中した...のにも関わらず倒れるどころかびくともしなかった
「ハッ?!」
多少、重りが仕込まれているだろうとは思ったが、あの威力でびくともしないのはいくらなんでもやりすぎだろ
「オイッ!カーナ!」
「運が悪かっただけだろう」
「いや、な訳...まぁいいや」
俺は最後の一発にかけることにした
「何が何でも落としてやるよ」
俺は形質変化を発動させてコルク銃をスナイパーライフルに変化させた
元銃マニアの俺はスナイパーライフルが1番好きだったので色々なスナイパーライフルの構造を覚えている
コルク銃の素材からは古式的なスナイパーライルしか作れなかったが、ぬいぐるみを落とすのには十分だろう
いや、ぬいぐるみを落とすためだけにスナイパーライフルを使うのは訳が分からないが、まぁいいや
コルクの密度を上げて強度を上げ、火薬がないので極炎でコルクを押し出し、さらに先ほどのように超回転でジャイロ回転をかけまくる
俺の計画は完璧だ
「オッラァァ!!」
「何ッ!」
俺が打ったコルクは大砲並みの威力になり、カーナが突風を起こそうと反応すら出来ない速度になった
コルク弾は無事命中した、が...
「...」
「...」
「...」
コルクが命中した衝撃でぬいぐるみの中心に穴が空いてしまった
余りにコルクの速さが早すぎて逆に、木っ端微塵にならずに済んだのだが、ぬいぐるみの中心部には五百円玉ぐらいの大きさが空いてしまった
「このぬいぐるみはお前らにやるからお引き取り願おうか」
「スイマセン」
俺とターゲット先輩は穴の空いたぬいぐるみを貰う代わりにカーナの射的屋台を追い出された
「何すいませんねターゲット先輩」
「いえ、私はこれでも十分満足しております」
ターゲット先輩は穴の空いたキメラ...ではなくぬいぐるみを持ちながら言った
ちなみにそのキメラは半端なく重かった
受け取った時、小学生1人分の重さを俺は感じた
非力な俺はすぐにターゲット先輩にキメラを押し付けたのだが、ターゲット先輩は軽々しくキメラを持っている
「そんなに景品が重かったら一般客が取れる訳ないですよね」
「そうでござりますね」
だが、全く取れる気がしないのにも関わらず子供達は喜んで射的をやっている
無邪気な子供の接客をしているカーナの顔はいつもの何倍も邪悪に見えた
「大先輩...?」
俺とターゲット先輩を後ろから声をかけてきたのはマルガメだった
「な、何で大先輩が美女と祭りなんか来てるんだよ」
「いや、違うんだマルガメこれは...」
「裏切り者ぉ〜!」
マルガメはそういうと泣きながら走り去ってしまった
「大丈夫でござりますか?」
「大丈夫じゃないです。親友を失いました」
明日、しっかり言い訳するしかないな
マルガメのことは一旦忘れてまた屋台を回ることにした
ご愛読ありがとうございます
本日は更にもう1話投稿させていただきたいと思います
次話も是非ご覧ください




