卒業 ..:*
「仰げば尊し」が哀しかった
この曲が終わったら
このキャンパスともお別れだから
たぶん一番輝いていた青春時代がここにある
あのイチョウの木の下で貴方に恋をしたよね
あのカフェテリアで放課後 お茶したよね
あの教室でノートの貸し借りしてたよね
授業をそっと抜け出して海へ行ったっけ
音楽室でサークルの仲間と騒いでいたっけ
桜並木を肩を並べていつも歩いていたよね
静かな図書館で友達とふざけあって叱られたっけ
ゼミの先生に呼び出されて落ち込んでいた時
優しく慰めてくれた親友
「明日から全部想い出になっちゃうんだね」
そう呟きながら卒業の唄を口ずさんでいた
卒業式が終わった後 記念写真撮ったよね
背景には懐かしい校舎
隣には4年間ずっと支えてくれた親友
後ろにはイチョウの木の下で初めて逢った貴方
大正時代の女学生みたいに袴姿で笑っている私達
スーツを着込んで少しだけ大人びた貴方
未来なんて見ることは出来なかったけれど
それでも夢を持っていた
楽しかった
楽しいことばかりじゃないと
何処かでわかっていたけれど
それでも新しい扉の前に立ち
その先を見つめていた
みんな笑顔で
この笑顔が永遠に続けばいいって
誰もが思っていたはず
現実の厳しさに笑顔が消えそうになった時
きっと支え合えるって信じてたよね
「ずっと友達だよ」
そう言い合った その言葉が嬉しくて 哀しかった
大学の正門を出た時 みんなの後姿を見送った
あんなに背が高かったっけ?
あんなに肩が広かったっけ?
ずっと好きだった人に思った
あんなに素敵な女性だっけ?
あんなにスタイルよかったっけ?
ずっと一緒だった親友に思った
明日からみんな 別々の路を歩いて行くけれど
この記念写真がいつかセピア色になっても
あの輝きは色褪せないって
ずっと思っているから
未来への大切な贈り物だから
もしかしたら もう逢えないかもしれない
もしかしたら また逢えるかもしれない
写真の中の笑顔がずっと変わらないように
みんなもずっと笑っていて
そう願いながら笑顔で手を振った
みんなの姿は今も私の宝物
いつかまた逢える日が来たら
その時は また笑い合おうね
約束だよ
桜の便りを聞く季節になると
遠い異国の地にいても 皆のことを思い出す
頑張っているかな
笑っているかな
時々は思い出してくれているかな
皆がそれぞれに幸せでありますように
そして今
少し色の変わった写真に目をやると
口ずさむ歌がある
『 卒業写真 』
と……
『 未来予想図 』
fin.