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唯一無二〜他には何もいらない〜  作者: 中村日南
歓びの里編 『番外編 ― イレインの里帰り』
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閑話2・優しいキスが降り注ぐ (中)

こちらは通常通り、三人称イレイン視点のお話です。

 里の生活はひと言で言うと――とても甘やかされた。それはもうデロッデロに。


 翼を傷めているからと移動する時は、いつもより(くつろ)げたリヴィエラの衿合わせの内側が定位置。


 それどころか、移動の時だけのはずが、いつの間にやら常にそばから離さないという徹底ぶりだった。


 それは――まだいい。イレインにとって何よりも大きな問題が一つあった。


 (ほう)の中が薄い肌着一枚ということだ。


 季節によってこれが厚物に変わるのだが、今はまだ薄めの生地である。


 けして、素肌ではない。ないのだが――薄い肌着ごしに、体温だけでなく意外に逞しい体つきが、触れあうところからじかに伝わる。これがあまりにも生々しい。


 なまじ生地が薄いばかりに、身動きするたびに、引き締まった筋肉の硬さまではっきりと分かるのだ。そればかりでなく、リヴィエラのいい匂いが常に鼻孔をくすぐる。


 ――これはなんの拷問か…!


 リヴィエラは養父。家族。変な気を起こすなどあってはならない。きっと自分が男性に不慣れだからだろう――こんな風にどきどきするのは。


 こんな自分はもしかして、()()()()なのではないか。イレインは少しばかり悩んだものの、(いや)と首をひと振りし、その思考に待ったをかけた。


 師の若々しく男らしい体がけしから…(わざわい)の種なのだ。そう自身を慰めた。けして自分は助べえではない。断固として。

 

 いずれにしろ、この環境はとてもじゃないが、平静でいられない。心臓は脈打ち、いつこの鼓動の速さをこの方に気づかれやしないかと気が気じゃなかった。


 ――大問題である。


 あの…リヴィエラ様。お話があります。いったんここから出してもらえますか?


「? どうしましたか?」


 リヴィエラは言葉通りに、(ふところ)から、岩つばめを出してくれる。


 しばらくモジモジしていたが、意を決してイレインはきっと顔を上げた。


 ――落ち着きません。私、小汚(こぎたな)い鳥ですよ? お着物を汚すのは忍びないです。


 もちろん嘘偽りない気持ちである。ただその前に、密着度が高すぎて心臓がもたないという本音があるだけで。嘘は言っていない。うん。


 イレインはじっとリヴィエラを縋るように見上げて、返事を待った。


「なるほど――では、少し失礼しますね」


 そう言うや、小鳥を目の高さに持ち上げる。 

 何をするのかと小首を(かし)げるイレイン(岩つばめ)を大きな手が優しく握り込んだ。


 にっこりと、極上の笑顔をひとつ。


(あ…これ、()()なヤツだ)


 本能的に身の危険を察するも――小鳥はあまりにも非力だった。


 ひょいっと岩つばめの体がひっくり返された。はわっと変な声が思わず出たが、次の瞬間にはそれが絶句に変わる。


 あろうことか仰向けになった白いお腹に、リヴィエラの、まっすぐに伸びた鼻梁が(うず)められたからである。


 イレインが口もきけずにいると、リヴィエラがすうっと深く息を吸い込んだ。あまりの羞恥にぷるぷると体が身震いする。


 鳥、そう鳥だ。だから別に辱めを受けているわけではない――と思う。しかし! 中身は立派な女子、しかもそれなりにお年頃である。


 いい加減、我慢も限界と思った時、リヴィエラが顔を上げた。


「うん。大丈夫。いい匂いがします」


 それはいい笑顔で言った後、それともと言葉が続く。


「気になるようでしたら、お風呂に入れましょうか? しっかり()()()()()()()()()()


 イレインは涙目でただただ首を振った。


 こ…このままで、今のままでお願いします…。


「分かりました。気になる時はいつでも言うのですよ?」


 確信犯だとイレインは心でつぶやいた。だが、それを口に出す勇気はどこにもなかった。

読んでいただき、ありがとうございます。


次話は明日、更新予定です。

次回更新も頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。

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