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唯一無二〜他には何もいらない〜  作者: 中村日南
1章はじまりの場所[ヘイルの里]編
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プロローグ

当時書いたものをリライトしながら順次アップしていく予定です。

 左側には小さな滝津瀬たきつせが流れ落ちている。舞い上がる飛沫ひまつが光に反射して、時々七色の橋を描いた。

 そのほとりに二つの人影がある。


「出来ないなんてことは、ありません」


 背の高い方の人影が鋭く厳しい口調で言う。


 流れるような銀の髪は背中半ばに届くほど長く艶やかだ。すっきりとした鼻梁、伏し目がちなその瞳の色は深い湖を思わせる。


 足首まで覆う純白の長袍ながぎに身を包んだ体躯は、無駄な肉など一片もなくしなやかで、その相貌は女とみごまうばかりに端麗。

 もっとも声の低さで男性だとうかがい知れる。


 そのちょうど真向いにもう一つ、小さい影が向かい合うように立ち尽くしている。

こちらは女性、その体つきから少女と分かる。


 肩先まで伸びた髪は茶色。痩せて薄い体はまだ女の匂いに乏しい。

 少女というよりも少女と女性の狭間といった感じだろうか。

 首を垂れて俯いた姿は、彼女を年齢以上に小さく見せた。


「原因を考えてごらんなさい」


 叱責の言葉がその背中に突き刺さる。

 柔和な面差しに似合わず、背の高い人影は厳しい眼差しで相手を見据えた。


「イレイン」


 イレインと呼ばれて少女は顔を上げた。

 何か答えなければと、しきりに視線をせわしなく地面の辺りに這わせ、口を開こうとハクハクと動かすものの、結局口をつぐんでしまう。

 そんな彼女をさらに声が追撃する。


「イレイン、何が分からないのか言ってごらんなさい」


 ぎりとイレインは唇をきつく噛んだ。


 ―――それすらも分からないとは言えない。

 言えば相手を不快にさせてしまう。きっとひどく呆れさせてしまう。


 黙り込んでも溜め息をつかせてしまう。

 相手の顔を見ることができず、イレインは泣きたい気分でひたすら地面を見つめるばかりだった。


 呪術の指導である。

読んでいただき、ありがとうございます。

続きます。


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