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第9話 酒場でモンスターの情報を聞く

 俺はある酒場を訪れていた。酒場というのは色々な人が集まる。故に色々な情報を得られる場でもあった。ロープレでは常識みたいなもんだ。


 俺はカウンターに座った。


「いらっしゃい……何を飲むかね?」

 

 酒場のマスターが尋ねる。


「オレンジジュースで……」


 異世界とはいえ、俺は未成年だ。異世界が何歳で成人になるのかはわからないが……。酒を飲むには些か早すぎる。酒は頼まない事にした。


「はいよ……オレンジジュースだな」


 マスターはカウンターの上にオレンジジュースを置く。


 ずずず……。


 俺はストローでオレンジジュースをすすった。


「マスター……」


「なんだい?」


「情報を聞きたいんだ」


「情報? どんな情報だ?」


「モンスターの情報だ。効率よく、経験値と(ゴールド)を稼げるモンスターを探している」


「モンスターか……腕に覚えがあるなら、この国を出て、北に深緑の森がある……そしてそこを抜けた先に、荒れ果てた墓地があるそうだ。そこに出るらしいんだよ」


「出るらしい?」


「アンデッド(不死者)だよ……アンデッド(不死者)。奴等は普通のモンスターとは違うんだ。普通のモンスターなら致命傷になりうる攻撃でも、あいつ等には致命的なダメージを与える事はできない。何せあいつ等の身体はとっくの昔に死んでいるんだからな」


「へー……アンデッドか……」


「腕の立つ冒険者が何人も挑んでは、その墓地の主に返り討ちに合ってきたらしい……くれぐれも無茶だけはするなよ……少年。死んだとしても俺に責任は取れないんだからな」


「ありがとう、マスター。貴重な情報を聞けたよ」


 北にある深緑の森を抜けた先、そこにある荒れ果てた墓地か。


 今すぐに向かうというわけではないが、今よりももっと強くなれたとしたら、行ってみる価値はあると思った。


「へへっ……なんだよ、坊主。北の墓地に行くつもりなのか?」


 ゴロツキと思しき、男達、三人に絡まれた。当然のように、彼等は酒を飲んでいた。相当に酒が回っているからか、顔を赤くしていて、目も据わっている。


「……だとしたら、何か問題があるんですか?」


「やめとけ、やめとけ……あんな恐ろしい所、お前みたいな青びょうたんが行ったら、命が何個あっても足りねぇよ」


「マスター……彼等は?」


「奴等は冒険者だ……ガラが悪いけどな。とはいっても冒険者なんて連中はそういう気質の人間が多い。冒険者らしい、冒険者とも言えるな」


 冒険者。


 聞いた事のある職業だ。冒険者ギルドからモンスター退治などの依頼を受け、それをこなし、生活をしている職業。元いた現実世界にはいないが、この異世界『ユグドラシル』では割と一般的な職業だった。


 腕に覚えのある奴が職業に就く上で、一番最初に思いつく職業が冒険者なのだと思って差支えはない。


「北の荒れ果てた墓地にはなぁ……恐ろしいアンデッドのモンスターがいるんだよ。それもうじゃうじゃとよ」


「とりわけ恐ろしいのは、アンデッドの大軍を率いているボスモンスターのリッチだ。こいつはアンデッドの上に、強力な攻撃を放ってくる、厄介なモンスターなんだからよ」


「詳しいですね……まるで、どこかで見た事があるみたいだ」


「当たり前よ。何せ、俺達はそのリッチの討伐依頼を受けて、失敗しているんだからな」


 胸を張って言われる。苦笑せざるを得ない。失敗した事を誇らしげに言ってのけるなどと……。


「命からがら、俺様達は逃げ出してきたんだ。そりゃもう、本当に死ぬかと思ったぜ」


「だから、やめとけよ少年。これは俺様達からの忠告だ。俺様達みたいな、凄腕の冒険者達でも敵わない、恐ろしいモンスターがいるんだからよ。まあ、確かにリッチから得られる経験値(EXP)は多いし、噂じゃ、墓地にはお宝が眠ってるって噂だが……命あっての物種だからよ」


 喧嘩を吹っかけてきているわけではない。彼等なりに、心配しているのだろう。だが、行くなと言われれば余計に行きたくなるのが人間のサガというものだった。


 北の墓地に対する興味が俄然として増してきたのだ。


「マスター、お代」


 俺はオレンジジュースのお代をカウンターに置いた。銀貨一枚だ。そして、酒場を後にする。


 そして北の方角を目指す事にしたのだ。目的は勿論、北の墓地である。忠告された事で、反って好奇心が湧いてきたのだ。なんとも人間らしい動機であった。


 そこで俺は思わぬ出会いを果たす事になる。


 後に俺の仲間となる、剣聖エステルとの出会いであった。


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