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第12話 剣聖エステルが仲間になる

「あ、ありがとうございます……助けて頂いて」


 彼女は振り返った。落ち着いてみるとますますの美少女だ。美男美女だらけの異世界『ユグドラシル』でも、これほどの美少女は見た事がなかった。


 俺みたいな陰キャそのものの人生を歩んで来た男には、こんな美少女と向き合うのは荷が重すぎた。なんだか照れくさくなり、まともに視線を合わせるのすら困難であった。


「い、いや……無事で何よりだよ。怪我がなくて良かった。もし怪我してたら、ポーションなら余ってるから、遠慮なく言ってよ……ははは」


「あ、あなたは……この世界ではあまり見ない顔立ち、もしかしたら、あなたは異世界から召喚された勇者様ではありませんか?」


「……勇者様? ……あっ、ああ。俺は勇者じゃないよ……ここではない世界。君達からすれば異世界から来た住人であるのは間違いないけどね」


 そう、俺は勇者ではない。本来、勇者召喚で呼び出されるはずではなかった、ただのモブキャラだ。勇者召喚に巻き込まれた、ただの一般人だ。勇者なんて大層な存在じゃない。


「いいえ、間違いないです。あなたは勇者様ですっ!」


「だから、違うって……俺は勇者じゃないんだ。本当に何でもないんだよ」


「とにかく、この剣を装備してください」


 そう言って、彼女は俺に剣を渡してきた。不思議な力を持つ剣。


「なんだ? この剣がどうしたんだ?」


 俺はその剣を普通に持った。


「やっぱり、あなたが勇者様ですっ!」


「え? な、なんで?」


「その剣は普通の剣ではないんです。特別な力を持った、勇者様ではないと装備できない、特別な剣なんです」


「へ、へー……そうなんだ」


 俺には手違いで貰った勇者のスキルがある。その内、『全武器装備可能』というスキルがあった。その為、どんな武器でも装備できたのだ。だが、それは単に、俺が剣を装備できるというだけで、俺が勇者だという証明にはならない。


 だが、そんな事など知らない彼女は、完全に俺が勇者だと信じて疑わなかった。彼女にとってはこの剣が装備できる事が、勇者としての何よりもの証明になりうるからだ。


「良かった……私、やっと本物の勇者様に会えた。前に会った偽物なんかじゃなく……」


「もしかして、君はハヤトに会ったのか?」


「は、はい……その通りですが。勇者様はあの偽物をご存じなんですか?」


 だから俺は勇者ではないし。ハヤトは間違いなく、勇者ではあるのだが……彼女がそんな事を理解できるはずがなかった。彼女にとっては俺こそが真ある勇者という事になっているのだから。


「あ、ああ……一緒にこの世界に召喚されてきたんだからな……それと俺は勇者じゃないんだ」


「……で、ですが……あなた様は勇者の剣を装備する事ができました。これが勇者である証明でなくて、なんだというのですか?」


「……まあいい。その点は置いておこう。俺の名前はカゲトという……君の名前は?」


「私の名はエステルと申します。【剣聖】と呼ばれております。異世界より召喚されし、伝説の勇者様に仕えるべく、剣の腕を磨いて参りました。さあ、伝説の勇者様、どうかあなた様の為にこの力を役立たせてくださいませっ!」


俺は骨の髄まで陰キャなんだ。こんな美少女と二人で冒険をするなんて、心臓がいくつあっても足りそうにない。確かに、先ほどの戦闘を見ていれば彼女はかなりの強者だ。戦闘の役に立つのは間違いない。パーティーに加わってくれれば頼もしい事は確かであった。


「だから、俺は勇者じゃないって……。でも、それでも君が付いてきたいっていうなら仕方ない。勝手にすればいいさ」


「は、はいっ! 勝手についていきますっ!」


 エステルは笑顔で言う。


「それと、その勇者様っていうのはやめてくれ。俺は勇者じゃないんだから……」


「でしたら、『カゲト』様と呼ばせて頂きますっ!」


 様付けは変わらないんだな……まあ、いいけど。


「カゲト様はどこに向かわれる予定だったのですか?」


「この先にある墓地にアンデッドが出るらしいんだ。そこにリッチってモンスターがいて、経験値(EXP)稼ぎに効率が良いかと思って……」


 こうして、エステルを仲間にした俺は深緑の森を抜け、いよいよ目的地である荒れ果てた墓地へとたどり着くのであった。


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※エステルが仲間になりました。パーティーメンバーが2名になります

勇者の剣をエステルから貰い、装備変更がされました

※装備変更

銅の剣→勇者の剣※効果 レベル×10の攻撃力を持つ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 5から×10はぶっ飛んでて笑ったw でも多分レベル依存だったらハヤトだとレベリングしないからどっちにしろゴミになりそう
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