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図書室で

 本を読むのは好きだ。だが、あまりしない。目の前で本を読む彼もあまりしない人間のはずなのに、今日はずっと読んでいる。

 六月初めの放課後、彼に初めて声をかけられた。

 同じクラスになって二か月目、彼が言った言葉は「白見さん」だった。

「何ですか? 紫桃さん」

 彼はもう読んではいなかった。

「クラスメイトだし、『さん』付けは止めてくれ。俺も止めて、『白見』と呼ぶから」

 それだけ言って、彼は本を片付け、図書室を出て行った。


 *


 俺はもう話そうと思った。

 放課後、見かけた時からそう思ってた。

 彼女に少し離れて歩いていたら図書室に着いた。彼女は本を選んで適当に近くの席に座った。放課後なのにまあまあ混んでいる。だから、俺が彼女の向かいの席に座ったとしても変ではない。読みそうもない本を選んでその席に座る。彼女は普通に読んでいた。教室では見せない表情で次のページをめくる。

 俺は彼女の名前を呼んだ。でも、それ以上のことは言えなかった。彼女も同じように俺の名前を言ったから、俺は他の奴らと違う呼び方がしたくてそう言った。もう言うことがなくて席を立った。本当は他にも言いたかったが、怒られそうで言わなかった。言い逃げだ。また同じようにはなりたくなくて、次こそは! と思い直して図書室から出るのがやっとだった。ぷらぷらと散歩のようにして彼女を見つけよう。

 ストーカーではない。自分の為の正義だ。今度こそ、流されたくはない。

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