表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

衣谷ユウの優雅な生活という番組の怖さと小栗栖まりんのキュートさ

アイドルランドの建設工事がすべて完成したのは6月の終わりころだった。


7月からはいよいよオープンだ。


それと連動して僕の冠番組が4本スタート予定でもある。


まずはそのうちの1本が収録が始まった。


番組タイトルは“衣谷ユウの優雅な生活”で、番組の中で僕が5人のアイドルさんを相手に恋愛ドラマを演じていくというものだ。


相手が5人いるので5つの恋愛ドラマをパラレルに進めていくことになる。


しかもこの番組には台本が無い?! そんなバカな!!


という恐ろしい無茶ぶりの番組だったのだ。


僕は彼女いない歴17年の恋愛経験値ゼロの男です。


台本も無い恋愛ドラマをどうやって演じろというんでしょうか?


プロデューサーの福井さん! 何を考えているんですか?


取りあえず第1回分の収録はこんな感じだった。以下に説明します。


今回のお相手は小栗栖まりんちゃん。午前2時の仮面舞踏会のセンターをつとめていて、男性週刊誌のグラビアでグランプリをとったというとてもあどけない感じの可愛いアイドルさんです。


まずは自己紹介からということで、ユウの部屋とか呼ぶ応接セットとカウンター付きのキッチンがある部屋に通された。


応接セットのソファーに腰掛け、二人で自己紹介を兼ねた雑談を始める。


ユウ 初めまして


まりん 初めまして


ユウ まりんちゃんは結構売れてるから情報も多いけど、僕のことはよくわからないでしょ。


まりん はい。情報が少なくてわからないことだらけです。


ユウ ですよね。ということで、まずはまりんちゃんからどんどん質問してみてください。


まりん わかりました。それでは最初の質問で~す。


    おいくつですか?


ユウ まりんちゃんより1学年下です。


まりん エッ そんなにお若いんですか?


ユウ 老けて見えますか? (笑)


まりん いえ ミューズ・プロジェクトの総合プロデューサーもされているし、それなりの年齢の方だと    

    ばかり思っていました。


まりん ご家族は?


ユウ 実は僕、孤児なんです。 天涯孤独の身の上ってやつです。


まりん ごめんなさい!


ユウ いいんですよ。気にしないでください。


   あっ そうだおいしいケーキを持ってきたんです。一緒に食べてくれると嬉しいんですが。


まりん (ニコッと笑ってから)喜んで!


ユウ アキラ! ケーキと紅茶の準備をお願いします。


アキラ かしこまりました。 


    (準備を終えると一礼して退出する)


まりん このケーキ凄くおいしいです。 どこのお店のケーキですか?


ユウ 僕の手作りケーキです。


まりん ?? これってプロの作ったものにしか見えないんですけど。


ユウ はい。 フランスでパティシエの仕事もしていたので。


まりん え~ 凄いです。


    あっ そうだった。 福井プロデューサーさんから4つのお願いを準備するように言われてい         

    て、そのうちの3つはデートの最初でユウさんに伝えるように指示されました。


ユウ えっ全然聞いていない。 福井さん! 


   逃げられたか…


ユウ まりんちゃんの3つのお願い聞かしてくれますか? 残りの1つは最後かな?


まりん ええそうです。 では3つのお願いいきま~す。


    1つ目 私の似顔絵を描いてください。


    2つ目 私のためにピアノを弾いて下さい。


    3つ目 私に何か手料理を作ってください。


ユウ 了解です。


   それではまずはお絵描きタイムとしましょうか?


まりん はい! お願いします。


僕は40分くらいかかってまりんちゃんの似顔絵を仕上げて彼女に渡した。


まりん うわ! とっても綺麗な似顔絵で、素敵です。 ありがとうございます。


    ユウさんて絵も上手なんですね。


    お礼に私もユウさんの似顔絵を描いたのでプレゼントします。


ユウ 衣谷ユウってこんなに可愛い顔してましたか?


まりん 手料理もご馳走になるので、大サービスしときました。


ユウ プッ(笑) 社交辞令みたいなものですね。


まりん はい! 


ユウ じゃあ 次は手料理にしますか?


まりん お願いします。


僕は彼女が好きなオムライスを作ってあげた。 サラダとスープ付きで。


まりん うわ~! 凄くおいしいです。


ユウ それでは、もっと美味しくなるよう、素敵な曲をプレゼントしましょう!


   僕は部屋の片隅にあったピアノを弾いた。


まりん 素敵な曲ですね。


ユウ はい。 宇宙戦艦ヤマトの挿入曲で“おおいなる愛”という曲です。


   気に入ってもらえて良かったです。それではもう1曲大サービスしておきますね。(笑)


まりん ニコッ(満面の笑み)


ユウ 超時空要塞マクロスの挿入曲で“愛・おぼえていますか”を弾き語りで‥


僕はピアノを弾きながら情感を込めて歌った。


歌い終わったとき、まりんの顔はほんのり赤くなって上気していた。そういえばこの歌の歌詞危険かも…


ユウ これで3つのお願いは済みました。 残りの1つを訊いてもいいですか?


まりん はい。 最後のお願いは、お互いに歌のプレゼントをし合うということです。


ユウ わかりました。 それではまりんちゃんはチャプチャパを歌ってくれませんか?


   お礼にまりんちゃんが大好きなあの曲を歌わせてもらいますから。


まりん わかりました。何を歌ってもらえるのか楽しみです。


まりんはとってもキュートにチャプチャパをソロで歌ってくれた。


僕は彼女が大好きな曲であるきみわずらいを華麗なダンスを織り交ぜながら熱唱した。


そして最後の歌詞である「さあ責任とって僕の胸に墜ちてよ」の時に両腕を思いっきり横に広げて飛び込んでくるよう促した。まりんには伝わっていないようなので、再度繰り返しの「さあ責任とって僕の胸にに墜ちてよ」で再び同じように両腕を広げて1歩前に進みながら彼女の眼を見つめて頷いてみせた。


ようやくまりんに伝わったようで、彼女はゆっくりと僕に向かって歩みだした。

僕は彼女に歩調を合わせながら前に進み彼女を優しく抱きしめた。


そして彼女の前髪に唇を寄せて「大好きだよ」と囁いた。

彼女は一瞬震えたようだった。

そしてかぼそい声で「私も…」と返事した。

その瞬間ギュッと僕は彼女を強く抱きしめていた‥

そしてそのままエンディングロールが流れて番組は終わった。



   


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ