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実は、あなたの前世のことなんですけどね  作者: 渡邊裕多郎
第四章
33/53

その4



        2 メアリー・クレメンス




「おはようございます、メアリー様」


「おはようございます、メアリー様」


 朝のあいさつの、最初の言葉は、いつものエリザベスの声でした。ふたり目は誰だったでしょうか? どこかで聞いたような記憶もあるのですが。頭のなかで思い返しながら顔をむけると、いつもと同じエリザベスと、それから魔族のエイプリル様が立っておりました。


「あ、おはようございます、エイプリル様」


 私はエイプリル様に会釈をしてから、少し怒った顔でエリザベスに目をむけました。


「いつになったら、あなたは私のことを呼び捨てにするのです? 小さい頃からの友達なのですから、様などいらないと言っておりますのに」


「メアリー様と呼ぶと、そうやって、少し怒った顔をされるのがおもしろくて。それで私はメアリー様と呼んでいるのですよ?」


 笑顔でおかしなことを言ってくるエリザベスでした。まあ、私とふざけっこがしたいだけなのかもしれません。私も、べつにそれが不愉快なわけではないから、付き合ってしまうのですけれど。


「ふうん。メアリー様とエリザベス様は、小さい頃からの友達なのですね」


 エリザベスのすぐ隣に立っていたエイプリル様が私に話しかけてきました。


「あ、そういえば、エイプリル様も、エイブラハム様のことを呼び捨てにしてはいませんでしたけれども」


 私の横で、エリザベスが声を上げました。


「昨日、聞いた話では、エイプリル様も、エイブラハム様とは昔からのご友人だそうですが。そこは、やはり、私たちと同じで、あまりくだけた感じではないのですね」


 エリザベスの質問に、と思う私の前で、エイプリル様が変わらない笑顔のままで口を開きました。


「それが淑女の作法ですので」


「ああ、なるほど」


 私の横でエリザベスがうなずき、私も納得しました。


「魔界の宰相のご令嬢とは聞いていましたが、そこまで公私の違いをわきまえているとは思っておりませんでした。とんだ失礼を」


「あの、それで、今日のことなのですが」


 私は話題を変えることにしました。


「昨日、エイブラハム様がアーサー様と決闘をするというのは」


「ああ、たぶん、言葉通りにすると思います」


 なんでもないように返事をするエイプリル様でした。こういうところは、さすがに魔族です。


「お互いが動けなくなるまで殴り合うなんて、とても楽しみです」


 やっぱり、言うことも魔族ならではのものです。


「皆様、おはようございます」


 そして、またべつの声が私の耳に届きました。シルヴィア様です。エイプリル様が、私たちにむけるのと変わらぬ笑みをシルヴィア様にむけました。


「おはようございます、シルヴィア様」


「ごきげんよう」


 シルヴィア様がエイプリル様に言ってから、私たちのほうを見ました。


「エイブラハム様はいらっしゃらないのですね」


「私は、家から直接ツイン学園にきたので。ここで会えると思っていました」


 と返事をしたのはエイプリル様でした。そのまま、シルヴィア様と同じように私たちに目をむけます。


 無言ですが、何を聞きたいのかは理解できました。


「私とエリザベスは、エイブラハム様より下の学年ですし、違う講堂で授業を受けています。普段からエイブラハム様と一緒にいるわけではありません」


「お昼ご飯のとき、中庭でメアリー様と食事をしていると、いつもエイブラハム様が笑顔で声をかけてくる、というのが普段の形で。昨日もそうでしたし」


「あ、そうだったのですか」


 納得したようにエイプリル様が返事をして、スカートのポケットに手を入れました。スマートフォンをだします。


「いつ頃、どこで決闘をする予定なのか、ちょっと聞いてみますね」


 言って、どこかへかけはじめました。たぶん、エイブラハム様に連絡をとったのでしょう。


 ですが、すぐにエイプリル様が不思議そうな顔でこっちを見ました。


「おかしいですわね。つながりません」


「え? ちょっと失礼。よろしいですか」


 シルヴィア様が、少し意外そうな顔をしながら、エイプリル様の持っているスマートフォンをのぞきこみました。


「本当だ。圏外になってますわね」


「まだこっちにこないで、魔界の家で寝ていらっしゃるのでしょうか? あちらでは、まだ圏外になることが多いですから」


 魔界に行ったことなどありませんから私は知りませんでしたが、むこうでは、まだ中継機の設置が十分ではないようです。


「ひょっとしたら、午前中はツイン学園の授業がなかったのかもしれませんね。それで、午後の決闘にむけて、自宅でトレーニングに励んでいるのかも」


 小首をかしげて言うシルヴィア様に、エイプリル様もうなずきました。


「そういうことでしたら、午後、また連絡をとってみます。昼食のときに、みんなで集まりませんか? 昨日と同じ、中庭のあの場所で」


「ええ、もちろん構いません」


「それでは。私が授業を受ける講堂はあちらですので」


「また午後に」


「では行きましょう、メアリー様」


「私のことは呼び捨てにしていいと言っていますのに」


 午後に会う約束をして、私たちはわかれました。

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