告白
最終話です
文化祭・体育祭と校内イベントはつつがなく終わり、またいつものような日常に戻る。
昼休みにいつものように一色とごはんを食べて、ふとクリスの方を見ると席にいなかった。
(どこ行ったんだ?)
しばらくすると彼女はクラスに戻って来た。
(……)
「え? 昼休み?」
放課後になって日本語を教えていた時に話をふってみたら、クリスはキョトンとした顔になった。
「あぁ、それは……」
彼女はそう言いながら言葉を止めた。しばらく考えこんだと思ったらニヤリと笑う。
「私、実はめっちゃモテるの」
「ん?」
「よく男子から告白されるんだけど、私が良いと思った相手がいなくって」
「……」
「けど私もそろそろ16歳だから、boyfriendぐらい欲しい訳よ」
「お、おう……」
「彼とshopping行ったりー、カラオケdateしたりしたい訳ー」
「うん……」
「だからさー、誕生日前にはboyfriend出来たら良いなー」
「……あのさ」
「何?」
「校内の有名どころでフッた相手とかは誰なん?」
「んー? 例えばfootball部の部長とか、basketball部のエースとか?」
「……」
「それがどうかした?」
「いや、別に?」
「あ、電話。mamaからだわ! ちょっと待ってね」
「……」
彼女は廊下に向かって、僕は一人イスに座ったまま激しく思った。
(まじか!?)
そんな相手をフるなんて、あいつ一体どんな相手が好みなんだ!?
僕は自分の気持ちをクリスに言おうかなと吞気に構えていたが、これ告白して大丈夫なのかと急激に不安な気持ちになった。
「久しぶりのmamaからだったわ。……? どうかした優司、顔色悪いわよ?」
「いや、大丈夫……」
そして日本語の勉強を終わり、二人して帰った。
「あ、こんなところにクレープ屋出来たんだ! 一緒に食べようよ」
「僕はいい。クリスだけ食べに行きなよ。僕は待っているから」
「……そう」
そして彼女はクレープを買いに行き、僕はもの思いにふけった。
(幼馴染み同士でそれなりに仲の良い僕達だが、いざ僕がクリスに告白してみて、いや、ただのfriendでしょ? とか言われて気まずくなったら、今後どうすれば良いんだーー!?)
そして彼女が戻って来て僕はもやもやしながら帰って分かれようとしたら、
「ねえ、少しうちに来ない?」
そう彼女が僕を誘ってきて、僕は承諾してアパートの部屋に付いていった。
「お茶いれるから」
「うん……」
トクトクトクとお茶をいれる良い音がする。
「はい、お茶」
「ありがとう……」
「……」
「……」
しばらく無言が続く。それにしてもお茶が美味い。クリスのやつ大分上達したな~、とほのぼの思っていると、
「ねぇ」
「ん?」
「何かあった?」
「え?」
彼女は慈愛に満ちた目を僕に向けてくる。
「いや、別に……」
「……私に言えないこと?」
「それは……」
僕は彼女の目を見るが合わせにくい。見たり見なかったりきょろきょろする。
「そう……」
彼女は少し落ち込んだ顔をする。くそっ、好きな相手を落ち込ませてどうする!
「……僕には好きな人がいるんだ」
「!?」
「それで告白しようか悩んでいるんだが、なかなかハードルが高くて……」
「ど、どんな相手なの?」
「えっとー、普段は語彙力貧弱で変な要求ばかりして何を考えてるか分からないけど、頑張る時は頑張る努力家で優しい人だな」
「……そう」
返事が薄いので彼女の方をちらっと見ると、なんか下に俯いていた。
「ど、どうかしたか!?」
「いえ、別に!? 優司が体の調子が悪いんじゃなくて良かったわ!」
「お、おう?」
そして外に出てみると、もう暗くなって街灯が点いていた。
「ねぇ、優司……」
「ん?」
「……月が綺麗ですね」
「え?」
クリスに言われて空を見ると月が綺麗に出ていた。
「本当だな。綺麗なお月様だ」
「……馬鹿!」
そう言って彼女はアパートに戻って行った。
「? 何だ?」
好きな人がいると告白してからというものの何かクリスと気まずい感じが続く。
「これはこの日本語だからこうなる」
「えぇ……」
「ここはこうなる」
「えぇ……」
返事は返ってくるが、なんか少し上の空だ。
「おい、聞いているか?」
「え? えぇ、ちゃんと聞いているわっ!」
「?」
それからしばらくして休みの日にクリスから不思議な文面が届いた。
『今日の夜に私が懐かしんだ思い出の場所に弁当作って待ってます。あと、プレゼント欲しいからちゃんと考えてね』
(は、何のこっちゃ?)
そして僕はクリスに電話した。
「一体何のことだ?」
『これは貴方を試す問題よ。そこで待っているから』
「おい、夜じゃなくて昼にしてくれないか? そうじゃないと危ないぞ?」
『それなら早く来てね。ブッ』
ツーツーと電話が切れた。僕は急いで家を飛び出して、とりあえず彼女のマンションに行った。案の定いなかった。
(あいつーっ、一体何考えているんだ!?)
明後日あいつの誕生日なのに何かあったらどうするんだ!?
僕は彼女が懐かしんだ思い出の場所を考えながら急いで走った。
(くそっ。思い出なんてあり過ぎて分かんねーよ!)
登とも遊んだ公園、小学校の校庭、旅行、思い出すだけでもきりが無い。あいつが懐かしんだ所って一体……。
そしたらふと登の言葉が浮かぶ。
──ちゃんとクリスちゃんのこと考えてみろよ?
考えろって言われても……あいつの行きそうな所……、ショッピングモールかな? うーん、なんか違うな。昔は行ってない……と思う。くそっ、どこだっ。もう19:00まわったぞっ!
──じゃあtelepathyならどうかしら?
──それもSFの世界だろ?
──それはそうだけど、私と優司ならなんか出来そうじゃない?
そうだよ! そんなの空想の世界だって! 表情ならともかくいないなら分かるわけないだろ!?
──久しぶりねー
「まさか、あいつ……!」
あれから45分は経っただろうか。僕は広い公園に着いて、くまなく探した。
「はぁはぁ……。クリス……」
「遅いっ、待ちかねたわっ」
「まさか市内にいるとは思わなかったぞ!」
そう彼女は城址公園にいたのだ。
「なんで夜なん……」
「はい、お弁当」
僕は彼女の座っているベンチの横に座り、ごはんを貰う。見ると上は卵焼きに魚の煮物で下はごはんだった。魔法瓶を渡されて、中は味噌汁だった。
「やけに日本風にしたんだな」
「私、日本の料理の勉強をするって言ったじゃない」
「散々味見役したけどな」
「何よ、その言い方!? せっかく食べさせてあげてたのにっ。ふーんだ!!」
「あははっ」
クリスとのんびり食べるのも良いものだな。
「けど何でこんな夜なんだ? 昼でも良いじゃないか?」
「あれ……を見たかったから」
あれ……って月? 月がどうかしたか?
「で、プレゼントは考えてくれた?」
「え? いや、探すので精一杯で買う暇なんて……」
「私、別に物が欲しいなんて言ってないわ」
「え? じゃあ……?」
「……」
物じゃないなら一体……、
──ちゃんとクリスちゃんのこと考えてみろよ?
(だからそれが分かったら苦労しないって!)
はぁとため息をはきながら、色々考えたが一向に浮かばない。ふと見上げると、月が見えた。満月だった。綺麗なお月様だ。……まさか、
「……クリス」
「何?」
「好きだよ。お前のことが、好きだ」
「……」
返事がないので彼女の方を見ると、顔を下に向いて震えている。
「クリス?」
「……遅いわよ、馬鹿……」
「ゴメン……」
「もう! insensitive(鈍感)なんだからっ」
「返事は?」
「Me too」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
物語はこれで終わりです。
Thank you for reading my novels!




