自覚
やっと優司は気づきます
16話です
そして文化祭暫定最後の劇を行った。(三日目は最優秀劇の発表をするため)
そして僕はいつものように袖から演者を見て、ライト操作のクラスメイトに照明の合図をする。そして僕は登に言われたように色々思索する。
(僕はどうして嫌な気分になるのか……?)
「鏡よ、鏡。一番美しいのは誰?」
『白雪姫です』
「何ですって!? 何てことっ! これだと私が一番になれないわ。どうにかしないと……」
そして照明を暗くし、緑の森の背景に換える時、後ろにいた金髪の彼女とすれ違う。暗くしても彼女のことは分かる。彼女の金髪は暗闇に支配されず、服も白いからうっすらと見える。目に頼らなくても彼女から匂ういつものほのかな香りで、僕の近くにいるのが分かる。慣れのせいかこの匂いを嗅ぐといつも落ち着く。だから気配で。
彼女と七人の人達が遠くにいるのを確認し、明るいライトを点けさせる。そしてそこに白雪姫扮するクリスが彼等と共に壇上で登場することになる。
そしていつものようにおぉ~っと客席から歓声が上がり、白雪姫と七人の人達がしばらく踊り愉しむところを僕は眺める。
(ここは別に嫌な気分にならない。楽しそうなクリスを見て嬉しいと思うことすらある。しかし終わるといつも嫌な気持ちになる。なぜだ?)
その頃になると僕の隣に年老いた魔女が待機している。そこから落ち着かない気分になる。別に彼女は同じクラスの宮野さんだし、リンゴなんてスーパーで買ってきた(と思う)美味しいリンゴだ。
別に不安になる必要なんてない。しかし……なんか嫌な気分になる。
そして魔女が壇上に登場し、彼女に毒リンゴを渡して、白雪姫は倒れる。
もうその頃の袖には僕の近くに中嶋君がいる。姿勢をピンと伸ばして格好いい。少しコスプレ気味な王子様の格好もとても似合っている。
しかし僕は彼が近くにいると、モヤッとした気分になる。まるで曇りのち大雨の感じだ。
別に彼は僕に対して嫌なことはしたことがない(というかそれ以前にあまり関わったことがない)。そして俳優並のイケメンで凛々しいと思える程の彼だが僕はなんとなく嫌な気分になる相手だ。
そして彼が突然囁きながら僕に声をかけてくる。いつもならそんなこと無い出来事だ。
「小山君」
「は、はいっ」
「いつも彼女の相手をして悪いねっ」
「……いえ、そんな。劇ですから」
「本当は僕が相手役なのは相応しくないのかもしれない」
「え?」
「相手をして分かるのだが、彼女は芝居に関しては素人だから、微妙な感情が隠しきれてないんだ」
「え? それは観客にバレてますか?」
「いいや、素人とはいえ芝居は上手だから、普通の人には分からないよ」
「はぁ……」
しかしそれならなぜ彼は僕にそんなことを言うんだろう。
「いつも彼女は僕が相手だと不満げだ」
「え? そうなんですか?」
「そしていつもちらっちらっと袖の方を見ているんだ」
「……」
全然気づかなかった。そうだったのか。しかしそれにしても何でだ?
「……」
一方壇上では七人の彼等は彼女をガラス棺を模した白のカーテンを被せた机の上にのせて彼等は嘆き悲しむ状況だ。
「……おっとそろそろ時間だ。じゃあ行ってくるよ」
「はい……」
「小山君」
「はい?」
「君がちゃんとしておかないと、彼女は悲しむよ」
「……」
そして中嶋君演じる主人公の王子様が登壇し、いつものように観客から歓声が上がる。
王子様と七人の内の一人が色々と話す。しかし全くその言葉が耳に入らず、彼の言葉がよぎる。
そして彼を見ながら僕は思う。
僕が彼の代わりに立っていれば……。
(はっ、何を思っているんだ。彼の代わりなんておこがましい。イケメンでもないのに王子役なんて出来ないっ。しかし……)
そして劇は順調に進んで行き、劇の山場のキスシーンに近づく。
僕はドクンドクンと心拍数が上がり、途方もなくモヤモヤした気持ちになっていく。
──まぁとにかくそういう気持ちになった原因を自問自答してみろ?
(? なんでここで登の言葉が?)
そして僕は考えてみる。なぜこんな嫌な気分になるのか。
「はい、姫が毒リンゴを食べて、倒れてしまいました」
「一体どうすれば良い?」
「はい、助かるには愛する者からの接吻が必要です」
「そうか、分かった……」
そうか。僕はクリスが他の誰かにキスされるところを見るのが嫌なんだ。その子と付き合っている感じに思うから。そうか、僕は……。
そして二日目の劇を無事終えて、しばらく一人で廊下を回っていると、
「おーい、優司」
「おぉ、登」
「めちゃめちゃ劇良かったじゃないか!」
「そうか、それは良かった」
「クリスちゃんめっちゃ綺麗になってたし」
「……そうだな」
「……謎は解けたみたいだな」
「! あぁ、まあな」
「ちゃんと彼女に謝っとけよ」
「! あぁ……」
「そろそろ帰るか由実」
「えぇ」
「うちのクラスに寄っていけよ。久しぶりにクリスと会えばどうだ?」
「もう会ってきた」
「早いな」
「まあな、久しぶりに話してみたかったし」
「そうか」
「あんまり彼女にツラい思いをさせるなよ」
「……」
「じゃあな、優司。またどこかで」
「お、おう」
そうして二日目の文化祭を終えて僕は下校した。歩いている僕の少し前にクリスがいる。お互いの距離を保ちながら歩く。
どう話かけるか……、言葉に迷う。色々考えた挙げ句とりあえずまず謝ろうと決めた。
「クリス」
「……何?」
「昨日は言い過ぎた。済まない」
「……」
「他の男子と仲良くして、なんか僕から離れて行った感じがしたから」
「……そう」
「悪かった。許してくれないか?」
「……なら一つしてほしいことがあるわ」
「何だ?」
「私にkissして」
「へ?」
僕は度肝を抜いた。えっ? キス!?
「キスってクリス……」
「仲直りの印だけど出来ないのかしら?」
彼女は挑発じみた顔をしている。
く、くそっ、欧米人ならともかく日本人がキスなんて恥ずかしいこと出来るかっ! し、しかし……ん?
僕は彼女の顔を見ると複雑な表情をしているのに気がつき覚悟を決めた。ドキドキしながらチュッと彼女の頬にキスをした。
「……これで許してくれないか?」
僕は恥ずかしさのあまりクリスの顔を見れなかったが、彼女は満足したのか、
「……そうね、許してあげる」
と言ってくれた。
「ところで、登君に会ったわよ。girlfriendを連れてビックリしちゃった」
「そうだな。僕も驚いたさ……」
どうやら僕はいつの間にかクリスのことが好きになっていた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
ブックマーク、評価頂き励みになります。




