木梨登
新キャラ登場です
15話です。
「うまうま~」
「……」
僕の隣でクリスが美味しそうに各クラスで作った料理をむしゃむしゃと食べている。僕も食べるがあまり気分が盛り上がらず、ちまちまと食べるしかなかった。
「どうしたの優司? 食欲ないの?」
クリスは不思議そうにこっちを見る。
「いや、そういう訳では」
「あらっ? 口の横に食べ物が付いているわっ」
そう言って彼女は僕に付いていたそれを取り、嬉しそうに食べた。
「甘くて美味しっ」
彼女はニコニコしながらこっちを見るが、僕は気持ちの高ぶりと同時に一種の不快感がよぎる。
「……人の気を知らないで」
「? 何か言った?」
「いや、何でもない……」
(? 何を口走っているんだ僕は?)
そしてまだ回っていない他の出し物を複雑な気持ちのまま一緒に見て回って、午後の演劇をして一日目の文化祭は終了した。
「いやー、楽しかったわーっ」
「それは良かった……」
一緒にクリスと帰っているのだが、なんか不愉快が続く。劇をするごとになぜか嫌な気分になっていくのだ。成功して嬉しいはずなのに、なぜだろうか。
「どうしたの優司? 楽しくないの?」
クリスは不安そうに言う。
「いや、そんなことはないが……」
そう別にそんなことはないのだ。そんなことはないのだが、何かしこりの様なものがあるように感じる。
「……まあ、後二日しかないし、楽しまないとっ!」
クリスがそう言ってくれたが、僕はよけいむっときた。
「クリスは楽しいのか?」
「Yes,もちろんよっ!」
そして僕はその言葉にカッとなり、
「そうだよなっ! あんなイケメンと甘いことが出来るんだ。そりゃあ嬉しいよなっ!」
と、つい僕は余計なことを言ってしまう。
「……何よそれ?」
そして急にクリスも声を低くした後、
「私はクラスの皆の為に成功したいと思って劇をやっているのに、何よその言い方!? あまりにもヒド過ぎるわ!」
彼女は声を張って怒る。当然の意見なのだが、僕は余計に腹が立ち、
「何だよ! 嫌なのかよ!?」
「劇よ! 仕方ないじゃない!?」
「劇なら何やっても良いのかよ!?」
お互いに喧々囂々とケンカをする。そして最後彼女は少し目をうるうるさせながら、
「本当は私は……」
と言う。僕は、? となったが、彼女は反対向きに振り返り、
「もう帰る! See you!」
そう言って彼女はさっさと早歩きで帰っていった。
「……何だよ、一体」
二日目、僕達は険悪な状態のまま、目も合わさず話もしなかった。(しかしお互いの仕事は全うする)
「何だよ、何だよクリスのやつ! 結局嬉しんじゃないのか!?」
昼になり僕は一人ぶつぶつ言って回りながら、むしゃむしゃと料理を食べる。
「クソっ! 美味しくないっ!」
そう言いながら食べ終わったフランクフルトの棒をゴミ箱に捨てていると、
「よっ、優司っ!」
と呼ばれた方向を見ると、そこには小学以来の友人である木梨登がいた。
「登!」
彼はかなり勉強が優秀で県内有数の進学校に行き、高校が別々になってあまり関わらなくなったが、今回中学振りに出会った。
「何だ来てくれたのかっ! それより何も変わってないなっお前!」
「そっちこそ! 何も変わってないなっ! いや少し禿げたか?」
「うるせっ、変わってないわっ!」
「あはは、そうかそうか」
「……」
「ん? こちらの方は?」
「あぁ、紹介するよ。俺の彼女の由実だ」
「始めまして」
「え!? お前彼女出来たのか!?」
「いやーっ、何とかなーっ」
そうか。あの登にも彼女が出来たのか。僕は何か微笑ましい気持ちになった。
「で、さっきから機嫌が悪そうだが、何かあったのか?」
「ん? あぁ、それは……」
言うか迷ったが、言ってみた。
「小学校の時に英国に転向したクリスのこと覚えているか?」
「何だ? いやに懐かしい話だなっ。よく覚えているさ。子供の頃3人でよく遊んだものじゃないか!」
「そのクリスが今うちのクラスに入学しているんだが……」
「なんと! クリスちゃん日本に戻って、そんなことになっていたのか!」
「それで昨日ケンカをしてしまって……」
「ほう? 何だ、聞かせてみろよ?」
「実は……」
昨日のあらましを登とその彼女に言った。
「……ということがあってだな」
「なんでそういう気持ちになったんだ?」
「それが分からなくて……」
「……」
彼は渋い顔をして聞いていたが、ニヤニヤして言う。
「全く、お前がここまでにぶちんとは思いもしなかったぞっ!」
「え? それはどういう……」
「ま、恋なんて不条理だよな由実?」
「まぁ、そうね」
「恋? 恋なんて大層なことじゃないよ」
「はぁ~っ、まぁとにかくそういう気持ちになった原因を自問自答してみろ? いいな?」
「はぁ……」
そして時計を見ると午後の演劇の時間が近づいていた。
「いかん。もうクラスに戻らないと!」
「どこで、何時からの公演だ?」
「体育館で、14時30分からの公演だ」
「そうか。時間になったら観に行く」
「そうか、分かった」
「優司」
「あん?」
「ちゃんとクリスちゃんのこと考えてみろよ?」
「あ、あぁ?」
僕は彼の発言をよく分からないまま、二人と分かれて自分のクラスに向かって行った。
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