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第7話 2日目 門番補助

初投稿です。よろしくお願いします!

 日の出とともに目を覚ますと代り映えのしない朝食を掻き込み、早めにギルドへ向かうことにした。悩んで立ち止まったら人生終了なんだ、開き直っていくしかない。




 ギルドにつくと空元気で挨拶をした。


「おはようございます。昨日はご迷惑をおかけしました。今日もよろしくお願いします」


 シーラさんは意外そうな顔をしてこちらを見ていた。


「あら早いわね、おはようリョータくん。今日は宿までお迎えに行かなければ会えないかと思っていたわ」


 シーラさんなりに発破をかけてくれているんだな、きっと。


「今日は北門のお手伝いよ。門番で1番背の高いガルドさんの所に行けばわかるわ」


 僕みたいに戦闘力のない便利屋なんて門で体を張ることなんて出来ないのに何をすればいいのだろう?


「門番の仕事って何をするんですか?」

「この街では人の出入りは自由で、そのかわり外からの積み荷に通行税を掛けているわ。その税を計算するために入門待ちの列から積み荷のリストを回収する仕事になると思うけど、行ってみなければわからないわね」


 体を張る仕事以外にもあるなら、僕の体格を見て即チェンジと言われてしまうことはないと信じたい。


「門番の仕事が忙しくなることなんてあるんですか?」

「いい質問ね! 明日は10日に1度の自由市の日なの。町の外から自由市に参加する行商は前日に通門すれば少しだけ積み荷にかかる税金が安くなるのよ」


 なるほどそれで今日だけ忙しいのか。


「門番の仕事でやっては駄目なことってありますか?」

「不正を見逃す代わりに利益を得ること、貴族を待たせること、犯罪人を通すこと」


 シーラさんは指を1本ずつ折り曲げながら説明してくれている。


「とは言っても人の出入りの管理はもうずっとやっていないから気にしなくていいわ。私が渡すお給金以外は受け取ったらダメ、それだけよ」


 早く来て聞いておいてよかった。チップとか渡されて知らずに受け取ったらアウトだったのか。シーラさんは昨日と同様に書類の中から1枚のカードを取り出し、こちらに向かって机の上を滑らせてきた。


「忙しいとは思うけど、明日は便利屋ギルドお休みだから今日1日頑張ってね。役立たずって追い返されて来たら、その時はまた慰めてあげるわ」





 北門に到着したもののまだ時間が早いせいか閑散としていた。一目見てわかる程に背の高い門番の人に目星をつけて挨拶をする。


「便利屋ギルドから派遣されてきましたリョータです。ガルドさんはお見えになりますか?」

「ごくろーさん、俺がガルドだ。今日1日よろしくな」


 そして僕の方を確認しながら乱暴に頭を掻きむしると、気を取り直したように話を続けた。


「それにしてもちいせぇな。ほんとに15になっているのか?自分の身は自分で守れるのか?」

「いえ、それはたぶん無理ですけど……まずいですかね……」


 やはり僕の容姿はこの仕事に向いていないようだ。でもきっとシーラさんが言っていたように向いてないなりに回せる仕事もあるはずだ。そんな思いもあり曖昧な返事で様子を伺うと、のんびりとした口調でガルドさんは返事をした。


「まぁ大丈夫なんじゃねーかな、ここ数年は治安も落ち着いているし。門番がいきなり刃物でブスリとか、魔法でドカンてことはあんまり無いと思うぜ」


 何が大丈夫だよ! 大丈夫のハードルが低すぎる。その数年前に転生してたら余裕で死んでた。何が原因かわからないけどこんな世界でも治安が回復することなんてあるんだなと感謝ついでに聞いてみた。


「何か治安が良くなることがあったんですか?」

「そりゃソフィア様が街に帰って来て下さったからに決まってんじゃねーか!」


 ソフィア様??昨日ファットさんが泣きつけって言ってたソフィアさんと同じ人なんだろうか?そんなに偉い人だったの??


「ソフィア様は王都の聖騎士で勇者候補の1人だったこともあるエリート中のエリートなんだぞ。最終的に勇者には選ばれなかったから、それを契機に王都の騎士団を除隊して生家のバーリエル商会に戻ってきたというわけさ」

「……ソフィア様ってすごい方なんですね」


 これはファットさんに揶揄われているだけなのかもしれないな。僕みたいな半奴隷がそんな偉い方に泣きついても相手してもらえるとはとても思えない。


「話が逸れたが、今日は荷物の目録の回収と整理をやってもらう。通門待ちの連中は事前に用意しているはずだから、どの荷馬車の目録かだけ確認して回収してくるんだ。荷馬車の中は後で通門時に照合するから見なくていいぞ」


 よし、シーラさんが予想したとおりだ。


「わかりました、何か気を付けることってありますか?」

「貴族が手違いで並ばされていたら先に通せ、ただし貴族だって自己申告してこないのは気づいていないフリをしておけ」


 ん?なんかややこしい話をしだしたぞ。そもそも貴族の見分け方もわからないのに、見て見ぬ振りもないのだけど、この話をする意図がイマイチつかめない。当たり障りない程度に、もう少し聞いてみよう。


「なにかあったんですか?」


 ガルドさんは、おっ、と僕のことを改めて品定めしなおすような仕草をした。


「坊主は大丈夫そうだな! そのとおり! なにかあったんだよ! 以前に半端に気が利く出来損ないがいてな、お忍びで来ていた貴族を目聡く見つけて、わかってます! こんなことろに並ばせるわけにはいきません! こちらにどうぞ! って具合に大騒ぎしてな……」


 あ、わかっていますよ。ガルドさんもキメ顔したいのですよね。どうぞ。


「その場で首飛ばされてたわ」




 それから、貼り付けた笑みを絶やさずに黙々と目録を回収する作業に没頭した。聞いていたとおり多くが明日の自由市で販売する品を運び込んでいる人々で、近くの村から簡素な馬車で食料品や日用品を運び込んでいるようだ。目録にある食料品の名前は理解できないものが多かった。動物にしても植物にしても翻訳が効かないということは生態系がかなり違うのかもしれない。思い返してみると今までちゃんと翻訳された動物は人と鶏と馬ぐらいだった気がする。ちなみに、どうみてもロバですよねというのも馬と呼んでいた。


 たまに幌のついた大きな馬車も混ざっている。遠くから行商に来たのだろうか服装も少し違うような気がする。そしてそういった馬車に声をかけると決まって最後にチップを渡そうとしてくる。


「決まりですから受け取れないんです」

「何だ坊主、チップぐらい受け取るのがマナーというものだぞ」


 半奴隷が小銭に目が眩んで犯罪奴隷にステップアップしてしまっては目も当てられないよ! そう自分に言い聞かせて断り続けた。


 目録を5枚ほど回収するたびにガルドさんの詰めている部屋に戻り整理をする。何度か往復していると声を掛けられた。


「おう坊主。この目録はどの馬車のだ?」

「それは幌のかかった2頭立ての大きな馬車のものです。緑色の服を着た御者の髭のおじさんしか顔を見せませんでした。チップを渡そうとしてきたので断りました」


「こっちの目録は?」

「そっちはお婆さんとお孫さんぐらいの男の子が乗っていた幌のない小さい馬車のものです。スキフ村から来たと言っていました」


 かなり曖昧な答えしかできなかったが、きっと判別ぐらいはできるだろう。


「おう、坊主はよく見ているな。悪くないぜ」


 大丈夫みたいだ。目録を見ても翻訳が上手くかからずに何が積まれているのか判らないのでかなり不安だったが、積み荷を確認しなくていいので特に問題にはならなかった。今日はかなり運に恵まれていると言っていいだろう。




 3の鐘が鳴ってしばらく経った頃には入門待ちの列はすっかり消化され、今日は何事もなく任務完了となった。


 帰り際、同じように働いていた同年代と思われる少年たちも同じく帰路についていた。便利屋ギルドでは見かけない顔なので、たぶん別口からの斡旋なのだろう。


「今日もかなり儲かったな。やっぱりガレオンの商人は気前がいいぜ!」

「そうだな、明日の自由市が楽しみだな!」


 そんな会話を聞くとさっきまでの達成感は霧散し、やるせない気分に落ちていってしまう。冷静に考えてみれば積み荷の確認もしない使い走りにチップを渡しても実益もなければ実害もない。本当に挨拶というかお駄賃程度なので、原則チップは禁止だったとしてもやはり受け取ってしまうヤツも出てくるだろうし、取り締まる側も身が入らないのだろう。




 そんな考えが顔に出ていたのだろう。ギルドに戻ると、シーラさんは満足そうな顔をして

 こう言った。


「おかえり、リョータくん。その顔をして帰ってきたということは合格よ」


 何もかも見透かされていて赤面しかできなかったが、驚くほど気分は晴れやかになっていた。

初投稿です。よろしくお願いします!

わからない事ばかりですが優しく教えていただけたら嬉しいです。

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