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第2話 1日目 借金生活

初投稿です。よろしくお願いします!


 目覚めると、隣には昨日の大男がまだ眠っていた。


 昨日の印象とはすこし違い、大男というよりは巨漢という方がしっくりくるような……ありていに言えばデブだった。ただ元の世界でよく見るような軟弱な感じはまるでしないので、やはりここは別の世界なのだろうなということを改めて強く意識してしまう。


 あたりを見廻すと、粗く織られた布で日差しが遮られ、自分自身も同じ素材の布に包まれて地面に転がっていた。布の匂いを嗅ぐと土埃と汗とカビが混ざったような悪臭が喉の奥に纏わりつき、大きく咳き込んだ。


「坊主、起きていたのか」


 巨漢はのっそりと上半身を起こし、こちらを振り向いた。


「坊主!今から大通りの便利屋ギルドに行って、これからの身の振り方を決めるぞ。付いてこい」


 それだけ告げるとテントの外へと出ていった。慌てて後を付いて外に出ると、昨日の火事現場のすぐ向かいの広場のような場所にテントは立てられていた。火事で焼け落ちている民家は2軒だけで、燃え尽きた民家の残骸の向こうには煤だらけの庭が広がっていた。幸いなことに燃え広がらなかった道向かいにも木造の二階建ての民家が建っていて、きっと燃え尽きてしまった僕の家も同じような家だったのだろう。


「すいません、おじさん、便利屋ギルドって?」

「おじさんって呼ぶな、ぶん殴るぞ。まだ独身だ。ファットさんと呼べ」


 ふぁっ……と?


 今まで割と自然に話していたので気にも留めていなかったけど、きっと異世界の言葉が自動翻訳されているのだろう。そして翻訳が追いつかない固有名詞はそれなりに近い言葉に変換されているか、僕の都合のいいように捻じ曲げられているのかのとどちらかなのか……それにしても酷い変換だ。ただ、名前を呼び間違える心配はなさそうだ。


 僕からの返事が無いことにわずかに舌打ちをしながらファットさんは話を続けた。


「俺も坊主の親父さんと同じで便利屋ギルドのギルド員だったから、今後の話をつけに行くんだよ」


 話が急すぎて思考が追いつかない。歩いているとすぐに広い道へ出たが、馬車がすれ違うには少し無理があるような幅なので、大通りまではもう少し距離があるのかもしれない。


「何を話に??」

「燃え尽きていたのは坊主の家と俺の家だ。どちらが失火原因か今となってはわからないから、お互い泣き寝入りだな」

「そういうものなのですか、でも、その、便利屋ギルドと何の話をするんですか?」

「家を買う時にギルドから金を借りているが、担保になるはずの家が燃えてなくなってしまったからな。無担保の借金が50万ファーレルを超えれば自動的に奴隷落ちだ」


 なにか雲行きが怪しい、奴隷ってなんだ?


「坊主の親父は昨日の火事から行方不明だぞ。焼け死んだのかどこかに逃げたのかわからないが、死体は出ていないから大方逃げちまったんだろうな」

「はぁ」


「それにしても坊主はツイてねーな。昨日養子に貰われてきてすぐ火事だかんな。借金押し付けられただけじゃねーか」

「はぁ」


 ファットさんは乱暴に自分の頭を掻きむしりながら僕の方を振り返った。


「気のない返事だな、怒りとか悲しみとか憎しみとか何かないのか?そのまま萎れて消えちまうぞおまえ」


 邪悪な眼光とは裏腹に僕のことを心配してくれているらしい。これはちゃんと説明しないといけないなとは思うが、異世界から転生したばかりなのですとはさすがに説明できない。


「じつは記憶がなくて。家族のことも隣に住んでいたおじさんのことも……」


 ファットさんは僕の言葉が予想外だったのか、戸惑ったように少し視線を彷徨わせていたがすぐに腑に落ちたようで言葉をつづけた。


「俺とは初対面みたいなもんだが……なるほどな、そういわれた方がしっくりくるぜ。普段ならふざけるなと殴り飛ばしているところだが今なら信じられる。」


「だが、おじさんとは呼ぶな次はぶん殴る」




 便利屋ギルドに着き扉を開けると、歯医者の待合室のように不自然なまでの清潔感で満たされていた。酒場のような雑然としたイメージとはかけ離れていて落ち着かない。


 受付に向かうと、ギルドカードの提示を求められた。


「ファットさん、ギルドカードって?」

「首から掛けているだろう?早く出せよ」


 たしかに首から掛かっているカードケースには薄茶色のカードが入っていた。それを慌てて受付のお姉さんに出すと、


「ファットさんとリョータくんね。それぞれ奥に部屋を用意しているので、すぐにどうぞ」


 りょー……た?


 きっとこれも自動翻訳だ。もう気にしないことにして受付で告げられた部屋へ向かい、扉をノックをしてみたが返事がない。恐る恐る中を覗いてみると誰もいなかった。テーブルの上には何もなく、椅子が4脚収まっている。テーブルの反対側には壁一面すべて書棚として埋まっており、その圧迫感から逃れるようにテーブルの方へ移動すると、髪を短く刈り込んだ壮年の男性が部屋に入ってきた。


「担当のマークだ。昨日は災難だったね。体の方は大丈夫かい?」


 と言いながら窓側の席に座り、こちらにも着座を勧めるように手のひらで向かいの椅子に座るように促してきた。


「大丈夫です。それより奴隷になるかもしれないと聞いたのですが……」


 手元の書類を確認していたマークさんは、もう一度僕の方に視線を上げるとニコリと笑みを浮かべながら話を続けた。


「君が父親から引き継いだ借金は合計で55万ファーレルだからこのまま行けば奴隷だが、心配することではないよ。わかっているとは思うが三か月の間は半奴隷として自由が保障されているからね。帰る家もないし今日からは向かいのギルド直営の宿に泊まるといい」


 わからない話が次から次へと流れていき、まったく理解が追い付いていかない。


「すいません、ファットさんにも話したのですが、昨日までの記憶がなくて……お金が返せなかったらギルドの奴隷になるのですか?」


 マークさんは少し驚いたような表情をみせると、すぐに手元の用紙に忙しなく何かを書き込みながらこう言った。


「そうではないよ。ギルドが奴隷を保有することは許されていないからね。この3か月の間に買い取りを希望するものが現れなければガレリアの奴隷商会に売り払うことになるだろう。それまでに借金を15万ファーレル以上減らすか、買い取ってくれる優しい飼い主を見つけるかだね。リョータくんはかわいい顔をしているからそういう選択肢もあるんじゃないかな。」


 15万ファーレルがどれだけのお金なのかわからないが、とにかく返済しないと奴隷になる事が決定らしい。


「記憶がないのか……この後の説明が長くなるかもしれないので、一度宿に行って部屋をとってくるといいよ。宿にはこちらから先に話は通しておくからね。」


 そう言い残すと、先程何かを書き込んだ用紙を手に慌ただしく部屋を出ていった。


初投稿です。よろしくお願いします!


わからない事ばかりですが優しく教えていただけたら嬉しいです。

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