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スライム、外へ出る

 エムマークの話はとても与太話と言えるものでなく、私にとって頼りになるものだった。


 「ユニークとは通常の魔物とは格を逸した存在で…」


 「ほう。」


 「…そしてワシらの中に存在する魔石が成長する訳じゃ。」


 「ふむ。」


 「その成長した魔石が体に変化を起こし…」


 「ほう。」



 そう。とても有益な情報'だった'。

 私の中にある知識と矛盾はなく、それでいて話の筋が通っている。要するに卑下するような与太話ではない事が分かる。


 「それによって新たに…」


 「おいジジイ。いつまでスライと話してんだよ。」



 イータが唐突に話に横槍を入れてきた。しかし正直な話、私はイータに感謝をしていた。



 「なんじゃイータよ、今はいい所なんじゃ。後にせんか。」


 「ジジイが戦闘経験積ませろって言ったんだろうが!いいから連れてくぞ。」


 「ふむ、そうじゃったな。仕方ないこの続きは帰ってからにするかのう。」


 「どうせ同じ話を一晩中繰り返してただけだろクソジジイ。俺以外に注意されねぇからってボケてんじゃねぇだろうな、ガハハ。」



 そう、私はエムマークの話を長時間に渡り聞き続けていたのだ。最初は私の知らなかった魔物の成長メカニズムやそれによって起こる変化、ユニークモンスターについて等の興味を惹かれる話を聞けて満足していた。

 しかし、話の途中で似通った話が混じり、遂には全く同じ話の内容になってしまった。

 そして内容が同じになり、その話が凡そ10回程繰り返された頃にイータの助け舟が入った。



 イータは私を狩りへと連れていこうとした。そしてエムマークも理解を示したのだが、イータが最後に笑ったのがいけなかったのだろう。



 「ふん!」


 「ピギィィィ!」



 エムマークは目にも止まらぬ速さでイータに体当たりをしたようだった。先程イータのいた場所にはいつの間にかエムマークが居座っており、イータの不甲斐ない声が急激に遠ざかって行く。



 「イータなら入口の方へ飛ばしたから、見つけて連れていってもらうがよい。戦闘に影響の出ない程度にぶつかったからそのまま外に出ても問題無かろうて。来た道は分かるかの?」


 「あぁ、問題無い。エムマーク殿との話はとても有意義だったぞ。」


 「やはりあのバカとは違うのぅ。ワシゃあ嬉しいぞい。…スライよまた会おう。」


 「戦闘経験を積んで戻ってくるさ。」


 私は帰省を約束し、泣き顔のエムマークに背を向けて住処の入口へと向かった。

 会話の成り立つ存在がイータ以外におらず、更にイータはエムマークの話を聞かなかったのだろう。エムマークはまだ話を聞いてもらいたそうにこちらを見続けていたが私は振り返らなかった。



 「おう待ってたぜ。」


 「あぁ、待たせた。」


 「ピギィー。」



 住処の入口に着くとそこには既にイータ達四匹が待っていた。イータは兎も角として、バブルの体は今はしっかりと水滴型になっている。

 どうやらみんなの準備は整っているようだ。



 「張り切らなくても初めは慣らしだから力を抜けよ。最初っから飛ばしてたらいざと言う時に力が出ねぇぞ。」



 どうやら私のやる気が余りにも迸っていたようだ。これに関して反論の余地もないので私は全身の力を抜いて軽く跳ねた。

 その様子を見てイータはこの後の流れについて説明をする。



 「おっし、いいぞ。とりあえず外に出てからの事を話すぞ。」


 「ああ。」


 「今回の目標はゴブリンを一匹殺ることだ。」


 「大丈夫なのか?コボルトには劣るかも知れないが、やはり2ランクも上の魔物は厳しいのではないか?」


 「ジジイから聞いたのか?よくゴブリンのランクなんか覚えてんな。」



 前回戦ったコボルトと同じランクであるゴブリン。その生態は雑食であり、基本30匹からなる群れで生活をしている。そして他の種族と交わる事が主な繁殖方法となっており、人間全体からもその存在が忌避されている。



 「コボルトは一体だったから反応出来たが、複数の相手はどうなるか分からないぞ?」


 「ゴブリンは基本的に群れで行動してるらしいが、ここのゴブリンは半数が一匹で行動してんだぜ。なんたってココは天敵なんてものは殆ど居ねぇからな。」


 「そうなのか?珍しいな。」



 自然界においてゴブリンは(スライムは例外として)最弱の部類に入る魔物である。よってゴブリン達は絶対と言って良いほど群れで行動をする。そして住処の外では更に少人数で行動するのだが、その匹数に大小が存在しており、数が多ければ二乗的に脅威度が跳ね上がっていく。その理由は、指揮する存在が強れば

 強い程求心力を持つ事が挙げられるだろう。

 しかし、この場所では天敵が存在しないために、そういった危険性というものが少ないらしい。



 「まずはトカゲから慣らして順番にって感じだな。お前のナイフも使えれば強力な武器になるし、いざとなりゃ俺が助けに入るから心配すんなよ。」


 「頼りにしているぞイータ。」


 「おうともよ。それじゃあ行くとするか。」


 「よろしく頼む。」


 「ピギィー。」



 コレからの流れを把握したところでイータ、ブルー、レッド、バブルそして私は再び小さな入口を潜り、自然という危険地帯へと赴いたのだった。

次回、濃厚戦闘シーン(予定)

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