スライムの体は自由自在?
本日2話目(っ'ヮ')╮
何というか、いざ自分がスライムになってみるとスライムだなとしか思えない。
意外ではあるが、手足が無くなってもそこまでの動揺は無かった。
はてさて、これからどうしたものかと。
「お前生まれたてだろ?俺と一緒にこねぇか?」
これからの人生、もといスライム生をどのように生きていこうかと考え始めたところ思わぬ一言が飛んでくる。
「いいのか?私としては助かるが…」
「良いってことよ。生まれたてであんなすげぇ魔力を放ってんだ。こっちとしても生き残れる可能性は高い方がいいしな。」
「それなら同行させてもらおう。それはそうと、その生まれたてと言うのは何なんだ?」
「あ?俺らが増えるのは分裂か自然発生だろうがよ。まぁお前は自然発生型だろ、ここら辺の魔力濃度が高かったからな。その様子を見に来たんだよ。」
「なるほど、自然発生型か。」
以前に主人から聞いたことがある。魔物は基本的に生殖をするが、ごく稀に魔力の濃度が高い場所で自然発生をする事があると。今回は何の因果か私がスライムとして発生したということか…
「それにしても生まれたてで話せるってのはかなり珍しいな。まぁそもそも俺以外が話してるのも見たことは無いがな、コイツらも未だに話せねぇしガハハ。」
目の前のコイツは愉快そうに笑いながら体を震わせた。コイツらと言うのは周りのスライムの事だろう。他のスライムも体を震わせたり跳ねたりしている。
これは個体の区別がつかないかもしれないな…。
「おう、そう言えばまだ名乗ってなかったな。俺はイータってんだ。」
目の前のコイツはネームドだったらしい。よく感知をしてみると周りのスライムよりも魔力は高かった。まぁコイツだけでも区別できるだけいいとしよう。
「手前ぇの名前はなんて名前にしようか?せっかくのユニークだからなかっけぇ名前しねぇとな。ん〜、白いから…」
生まれたてということで名前を付けようとしたのだろうが、私には名前がある。それを他人に変えられるのは勘弁してもらいたいところだ。
「まて、私の名前はスライだ。」
「なんだその犬にポチって名付ける様な名前は。まぁ元からあるならいいか。コイツらも紹介しとくか。赤いヤツがレッドで青いヤツがブルー、緑の奴がバブルだ。」
何故そこの緑のヤツがグリーンじゃないのかと言うのは言っていいのだろうか?しかし、今の私には色の区別が付かないのでどうしようもない事なのだが…
「申し訳無いが、私は色は分からないんだ。もう少し分かりやすく紹介してくれないか?」
「色なんざ目を作りゃあいいじゃねぇか…って生まれたてだったなほらよ」
私が色について分からないと言うとイータは自分の体で作った球体を私のスライムボディに突っ込んだ。
「核に当たったらどうするつもりだ!?」
思わず私は声を上げて一瞬で避けてしまうが、それも仕方の無いことだろう。スライムは核が壊されるとそこで死滅してしまうのだ。
私が避けたせいでイータの球体は地面に落ちてしまったので、それを申し訳ないと思いつつスライムボディを伸ばし拾い上げる。
「そんなへまはしねぇよ。分裂型の基本だぜ?って生まれたてだから知らねぇか。それを真似してみな。」
私は拾い上げた球体を撫で回すように調べ、自分のスライムボディへと入れ直した。するとスライムボディの外で触るよりも詳細な構造が手に取るようにわかった。気が付けば球体は私のスライムボディに消化され、完全に無くなってしまう。
「よし。」
その一言を集中への梯子として、イータから貰った球体の模造の作成に取り掛かる。少し違和感があるので自己流でアレンジしつつ作成を続ける。
作成を始めて二十秒ほどしてぼんやりと視界が出来てくる。
「これが景色か…」
想像してたよりも低い。例えるなら寝転がって見る地面と言った高さだろう。
周りを見渡すと湿度の高そうな洞窟の中に居るようで、水溜まりや雑草がチラホラと見える。ちなみに私のスライムボディは白色だった。
先程イータが紹介してくれた三匹を見る。
確か赤いヤツがレッドで青いヤツがブルー、緑のヤツが…バブルだったな。もう一度イータを見ると目が見開いたような形をしていた。
「目を渡してみたが、最初から作れるとは思わなかったな。ただ、その目は人間みてぇで気持ち悪いけどな。」
イータの目は他のスライム同様にザ・スライムと言ったパッチリとした目だった。私自身の目は恐らく人間みたいということで人間の眼球だけがスライムボディに存在しているのだろう…
想像したら気持ち悪くなったのでみんなの目に形を合わす。
「お、やりゃ出来るじゃねぇか。優秀、優秀。」
今更ではあるが、イータの色って青色だったんだな。大きさもブルーと変わらないし違いは表情(?)の豊かさと魔力量だけのようだ。他のスライムは口がUになっていてほとんど動かない。
(…口か。)
口を動かすようにしても動く感じがしない。恐らく口も同様に開けないといけないのだろう。
一先ず作ってみる。
「お前ぇ口も作れんのかよ、ガハハ。それ作れんの俺らだけだぜ。最高だぜ」
知識の中のスライムには口は存在していなかったが、イータ達に口が付いていたので作成してみた。
するとイータ達はとても喜んでくれ、イータ以外が気の抜けた笑顔で私に体当たりを繰り返す。
流石にずっと続けられるのは面倒なので作成した口を元に戻すとスライム達は落ち着きを取り戻してくれた。
「さて、ある程度落ち着いたところで縄張りに戻るか。みんな歓迎してくれるぜ?」
「よろしく頼む。」
「よっしゃ、こっちだぜ。」
私はイータ達の縄張りへとついて行くことにした。
移動方法であるが、イータに限らずみんな這いずったり飛び跳ねたりしていた。私もそれにあやかったが思っていたよりも行動にズレは無くスムーズに移動が出来た。
ちなみにブルーは立体的に動いたり、暫く天井を移動し続けたり、思わぬ動きをしていた。
「ヴァァ」
移動の最中、後方から獣の叫び声が響いた。
「チッ。もう一匹出やがったか。」
イータは此方に振り返ると私を抜いて最後尾へと移動する。
するとバラバラに散っていたレッド、ブルー、バブルがイータの少し後ろで隊列を組んだ。
「スライの後に生まれた奴だったらそこまで強くないはずだ。お前ら気張れよ。」
イータの掛け声を三匹は体を震わせて返す。
軽く跳ねているのが準備をしているようで、私も同じように跳ねようかと悩んだ。
「スライはそこで見てな。俺達の下克上をな」
慣れていない体で戦うのは遠慮したいと思っていたのだが、イータ達は四匹で襲いくる魔物を倒すようだ。
私が自然発生した後の薄まった魔力濃度で発生した魔物。その強さは明らかに弱いとは言え全種族で最弱の地位を築いているスライムが自信を持ち、戦闘に加わらずに見てろと言ってくる。
私は更に後方へと移動し、彼らの邪魔にならないように見守る事にした。
そして私達が通って来た道からはコボルトがこちらに向かって走って来ていた。
あれですからね
○生したらス○イムだった件じゃないからね
スライムだけどスライムじゃないからね!