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目を覚ますとそこは…

 主人はその昔にこう言っていた。



「睡眠というものは良いものだよ。何も考えずに微睡む、あれ程の快楽は他になかったね。」と。



 そう言っていた主人は、今は睡眠時に帯剣をしていないが襲撃者が間合いに入れば難無く撃退するだろう。

 帯剣していない理由は私を信頼しているからと言っていたが、睡眠時の警戒は解ける事は無い。

 実際、今まで1度も主人の睡眠時に襲撃者を近づけたことは無かったが、それでも主人の警戒は解ける事は無かった。



 主人は博識であった。

 私の知らない事を沢山知っており、それを私に教授して下さった。

 気付けば主人と同じ様な知識の量を保持していた気がするが、その時には主人は私の未知を教授して下さらなくなった。



 私にとって料理、食事の時間が一番の楽しみだ。唯一私の出来ることで主人の楽しそうな顔を見られるから…

 その様な顔を最近ではあまり見られない。

 しかし、それを思い出せる事、一瞬でも主人の意識があの頃に戻る事、それがあるからこの時間は一番の楽しみだ。



 私が寝ている時、その時は………



 意識が浮上して行くような感覚がする。

 目を開けるのが億劫になっている。

 まだ微睡んでいたい。

 そのような感覚になるのは何時ぶりだろうか?



 体は動きたくないと言っているようで、手も足も全く動かない。何なら目も開けたくない。

 しかし、意識が覚醒してしまってはもう一度寝る事は難しいようで、暫くじっとしていても睡眠に落ちることは無かった。


(仕方ない、起きるか。)


 そう観念をし、目を開ける。


 ………?



 そう観念し、目を開ける!


「………」



 これは何だろうか?目があかない?

 視界は暗いままで、手も足も動かない。

 先程手も足も全く動かないと思っていたが、実際は拘束されていて動かす事が出来なかったという事なのだろうか?

 今現在自分の置かれた状況を理解してない状態で大声を出すのはまずいだろう。取り敢えず喉だけ震えさせてみるか…


「〜」


 少し感覚がおかしい気がするが、振動はするようで会話は出来そうという事はわかった。

 声帯は動くが、目や四肢が動かないと言うのは特殊な毒物だろうか?

 昨晩に食べた物で怪しいものは無か…昨日の食事が思い出せない。

 そもそも昨日はどこに居た?

 まて、私の記憶はどこまで遡れる?

 何も思い出せない。

 これが主人の言っていた記憶喪失というものなのだろうか。自分の事すら思い出せないが主人の体格や仰っていた事を少しでも覚えているのが驚きだが、この際少し置いておこう。



 目と四肢が動かない事に驚いたが、まずは自分の今の状況を整理してみよう。

 現状拘束されているのか手足は動かない。

 目は開いている気がするが視界は無い。

 昨晩の事を思い出そうとしてみたが思い出せない。ちなみに自分の事も思い出せない。

 記憶は無いが、知識はある。

 と言った所か…



 状況を整理した所で周りの気配を探ってみることにしよう。目は見えないが魔力を周りに撒くことで物の位置が感覚的に分かるという技術だ。

 周りには…人は居ないか。

 いるのは…スライムが数体だけ。これは脅威度で言えばそこら辺のネズミの方が高いだろう。ネズミはスライムの天敵であるからな。

 他には…何も無い…か。



 私を拘束した人物は誰だろうか?目的は?

 そもそも私を亡きものにするのであればこのようなスライムしかいないような場所に拘束するのではなく、殺傷能力の高い魔物のいる場所に放置するべきだろう。

 全くもって犯人の目的が分からない。



「そんな所で何をしている?」


「!?」


 少し考え事をしていたが声を掛けられて警戒をする。一秒にも満たない時間で私の感知外からすぐ近くまで接近を許したようである。

 手足は動かないが何があっても良いように魔力の出力を上げ警戒を強める。



「ピギィ!?」


 周りにいるスライム共が私の魔力に声を上げるが、そんな事はどうでもよく、私は警戒を続ける。

 しかし、私の感知にはスライムしか反応せず、他の動物は一切感知されなかった。


(どこだ?私の感知すら引っかからないとは…)



 人型一つすら感知されず、言葉を操る様な警戒度の強い魔物すら感知されない。



「お前ユニークか?」



 またもや言葉が投げかけられる。

 ユニーク、その様な危険な魔物が近くにいるのか?尚のこと警戒をしなくてはならないな。

 声が聞こえるなら振動は感知できるか?



「まだ喋れねぇのか?」



 その振動源は…スライムだと?



「喋るスライムだと?」


 魔力による人型の感知を振動の感知に意識を切り替えたところ、その振動源はスライムの一体から発せられていた。

 それと同時に驚きのあまりに声が漏れてしまった。



「そりゃお前もだろうが」


「私か?」


 その一言で今の状況に気がついてしまう。

 手足が動かないのでは無く、手足が無いのだと…

 目が開かないのでは無く、目が無いのだと…

 魔力による感知を自分に向けるとそのフォルムを理解した。

 これは…このフォルムは紛うことなきスライムである事を…

スライムさんの生き残りをかけたサバイバル()は〜じま〜るよ

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