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第7話 異人ギアとレイ

異人ギア。

私が住んでいた町では英雄として崇められた遺跡攻略者だ


一年にも充たない僅かな期間て、当時4階層までしか到達できてない所を15階層までマッピングした遺跡解読者。

それが異人ギアである。


だが、ギアは遺跡の攻略を終えると次の遺跡へと旅立ってしまう。

その後、あらゆる冒険者が挑戦したが、真の意味で攻略出来た者はいない。


なんせ、私とレイが出会った遺跡が表ルートだとすれば、ギアの道筋は裏ルートと呼ばれる遺跡の全てを明かした者だけが行ける、古の扉を通っていたからだ。


今じゃ、危険すぎるということで封印が施されているが。

何人も冒険者たちが挑戦し、帰らぬ人となる。


そんなギアとレイは似ていると思う。

誰にも思い付かない魔術を考案し、モンスターを蹴散らす。

まるで物語の主人公にも思える。



□□



「あんな衛兵が居たのに町は普通ね。いきなり、物陰から剣を持った男たちが押し寄せて来るかと思った」

「当然だ。なんせ、この町の内部には王国騎士団の支部があるからな。いくら、チンピラが多かろうが奴等の目が見えるところで襲うわけがなかろう」

「ああ、そっか。ここには騎士さまがいるのね」


王国騎士団。

私が住んでいた町にも小さな支部が有り、騎士が数人居た。

衛兵とは、異なり町の喧嘩等は一切関わりを持とうとしなかった。

だけど、冒険者の失態で遺跡からモンスターが出てきた時にはいち速く行動し、剣で切り裂く光景を見たことがある。


そんな彼らがチンピラをどうこうするとは思えないが、騎士に剣を向ければ挑戦と受け取られることもある。

故に表通りで暴れないのは自然なことだ。


「それに騎士など居なくても、ルリが付く。この国で君に危害を加えるのは不可能だ」


心配する私を安心させるようにレイがルリを引っ張り私へと押し出す。

咄嗟に受け止めると、ルリは笑顔で抱きつき『大丈夫だよ』と答える。


見た目は幼い子供だが、その正体は五竜を越える竜王である。

おそらく、ルリが本気を出せばこの町なんて容易く崩壊するだろう。


「できれば、戦いたくない……なんて、自分勝手ね。ごめんなさい」


同じ国ですら内乱で滅びた例など数多くある。

元に、帝国は元々共和国だ。


それに内乱により国の守り神である大精霊が黒石に成り果てた。

それは、二度と目覚めないことを意味している。


「別に僕だって好き好んで殺したいとは思わない。大精霊が王国から消えてしまえば、かつての帝国と同様に魔術に綻びが生まれやすくなってしまう。それは、魔術師にとって致命的なことだろ?」


確かに、精霊の力を借りずに魔力を感知することは難しい。

大精霊が認めた英雄の中には、生まれながらに魔力を関知できる天才も居たらしいが、そんなのは極僅かだ。


「今の王国から魔術師が消えたら、滅びそうね」

「確実に滅びるだろうな。それくらい魔術師に依存しすぎている。帝国とは正反対だ。科学を発展させることに重きを置くしかない帝国とはな」


レイの横顔を見ると口元が歪み、目もここではない遠くを見つめている。

帝国のことを毛嫌いするような行為とは少し違うように思える。


「……まあ、いい。あんな奴等どうにでもなればいい」

「そ、そういえば今日はどこの宿に泊まるの?」


明らかにくらい雰囲気を払拭するように、レイへ声をかける。

すると、少し黙り。


「そうだな。ここは、話が懐を自慢してやろう」


と、懐から金貨を取り出す。

そして、私に一枚指で弾く。


「わわっ、何するの!」


思わず叫んでしまい周囲の視線を集めてしまう。

だけど、いきなり金貨を投げられるなんて想定外過ぎて落ち着かない。


「くれてやる。それで、服でも買ってこい。宿を探しておく」


レイが早足で先に進む。


「ちょっと! 後から合流なんてどうすれば」

「ルリに聞け」

『任されました。お姉さん、買い物にいこう?』


レイに引きずられハリ君もどこかにいってしまった。


どういうことなの?

いきなり、変人な行動に戸惑ってしまう。


だが、ルリは何時もの事だと言わんばかりに動じない。


「……うん。いいや、買い物にいこう」


何を考えても変態の思考回路なんて読めるはすがない。

それに、あの二人に襲い掛かりどうにかなるとも思えない。


とりあえず、今は洋服を買いにいくこととする。


□□


薄暗い路地にそれは居た。

見た目は黒い猫に過ぎない。


だが、それは口を開くとーー


『死神が居るなんて珍しいことあるのね。あなたが町に来るなんて何年ぶりかしら』


と、流暢に言葉を話す。

そして、そこにレイとハリが現れると同時に氷雪魔術を放つ。


しかし、それを空中に避けてかわす。


『相変わらずね、死神君。私の次はあの少女のことを実験材料にでもしようってこと?』

「久しいな黒沼。それに、鏡月も居るんだろ?」


レイの問いかけに応じるように、路地の暗闇からローブに包まれた人影が現れる。


『……』


だが、口を開こうとはせずに黒沼を抱き抱える。


『ニャハ、死神君もまだ諦めてないんだね。てっきり自分の不甲斐なさに溺れてもっと暗闇に呑まれていると思ったんだけどにゃ』


黒沼はレイを挑発するも眉一つ動かない鉄仮面ぶりに呆れてしまう。


『その様子じゃあ、あの少女に何も説明してないのね。貴方がーーを殺そうとしていることですら』


その言葉でレイの口元が微かに揺れる。


『ーー殺しなんて大罪よ?』

「そうであろうな。ーーを殺すなんてあいつと同じ結末に辿り着くだろう」

『それでも諦めないの?』

「……ああ」


僅かに悩むも、言い切る姿に黒沼と鏡月は呆れている。


「誰に何を言われようと、変わることはないーー僕はあいつを殺す」

『そう……貴方、録な死にかたしないわよ?』

「わかってるさ、あの時からな」


レイの冷酷な声が場に響く。


『最後に言うわ……あの子がそんなことを望んでいると私たちは思わない。』


黒沼がそう言い、地面に吸い込まれるように消えてしまう。


「たわけが……見ていたんだろ?」


レイが振り向き、私に声をかける。


「あはは、ばれてた?」

「やはりな。いきなり、離れようとした僕も悪いけど盗み聞きされるのは気分が悪い」

「ばれてなかったっ!?」


どうやらレイの誘導に引っ掛かてしまったようだ。


「隠蔽魔術か……隠れることに関しては、僕よりも凄いね」


どうやら、隠蔽魔術で姿を消して見ていたことに本当に気づかなかったようだ。


「凄いでしょ、私の隠蔽魔術は」

「ああ、大したものさ」


素直に誉めるレイに対し、少し驚いてしまう。

てっきり隠れることしかできない臆病者の為に存在するとか、言いそうな気がしていた。


「君の魔術は凄い……それがあればきっとーーいや、なんでもない」

「ええ、そこまで言っといて」

「これはただの悪口に過ぎないからね。これは、言うべきではないのさ……先程の話は当分放っておいてくれないかな」


先程の話といえば、黒猫と話していた内容だろう。

「僕はーーを殺す」


肝心の誰を殺す所だけ聞いたこともない言葉で話していたから意味は分からない。

だが、レイが誰かを憎んでいることは理解できた。



「そう、まあいいわ。私にも隠し事の一つや二つあるし……それに、理由もなく貴方が誰かを殺すなんてことをするとも思えない。」

「そうか、ありがとう」


レイが微笑を浮かべる。

やはり、レイには落ち込んだ姿は似合わない。


「それじゃ宿を取りましょ。二人ともお腹ペコペコよ?」

「ああ、では行こうか」


□□


今はまだ知らない事が多い。

会って数日にしては、話しているがレイがどこの生まれなのかすら分からない。

けど、悪人でないことだけは何となく思える。


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