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第1話 少女は遺跡にて

世界を救った勇者に憧れて、私は魔法師を目指した。

結果として、攻撃魔術、防衛魔術、収納魔術、日用魔術には向かないと烙印を押された。

残ったのは、隠蔽魔術だけだった。


皆、私のことを可哀想な人を見るかのようだ。

だけど。


「それも今日までね。あいつらをギャフンって言わせてやるわ、この隠蔽魔術でね」


私の持つ魔杖が白く光り、身体を覆うと姿が見えなくなっていく。

確かに、隠蔽魔術は戦闘には不向きだ。

誰かを助けることもできない、弱小の魔術だ。


だけど、遺跡開拓に限れば、これ程使い勝手の良いものはない。

敵に見つかることもないので、戦闘も起こらず。


結果として、遺跡の奥深くまで来ることができている。

冒険者ギルドで買った遺跡の地図を見るに、15階層の内、10階層までは下ってきたようだ。


飲み水を2Lも担いできたが、杞憂だったようだ。

もう少しで遺跡の地底も終わりが見える。


「これで、私も誉められる!」


脳裏に浮かぶのは学校で嫌みを言う少年たちだ。

彼らは攻撃魔術の素質があり、度々私を馬鹿にする発言が多かった。

それでも、5階層のゴブリンキングには勝てないようで、未だに到達階層は4階層までだ。


私は既に10階層まで降りている。

これは、町に住む冒険者の中でもトップに匹敵する階層だ。

それも、一月以上潜り続けてやっと来れたと酒場で語っているのを聞いたことがある。


「私って天才魔法少女ね」


12階層も攻略し、最早余裕すら感じでしまう。

この迷宮には、コウモリみたいに魔力を感知して襲い掛かるモンスターも居ないため、とても楽だ。

唯一、不安があるとすれば魔力の使いすぎによる気絶だが……


「隠蔽魔術は10時間は持つから、まだまだ余裕かしら」


潜り初めてから、3時間程度。

これなら、15階層まで行って戻るのも簡単だ。

それに、階層を降りる旅に、冒険者の骨と一緒に金貨が落ちており、10枚以上も手に入れた。これは、冒険者の年収に匹敵する大金だ。


「余裕ね。さて、後は15階層のみ!」


14階層の扉を開き、15階層へと足を踏み入れる。

そこには、一際大きい部屋が1つのみあり、中央には祭壇が置かれている。


「これが遺跡の心臓部分かしら、見たことがないから分からないけどこれを抜くと遺跡が崩壊するのよね……?」


祭壇に埋め込まれた紫の水晶は魅力的だが、今は放置だ。

それより、祭壇の地面に目を向ける。


「これって階段よね」


祭壇の中央には黒く染まった階段が地底へと伸びている。

この先は暗く、冷たい冷気すら押し寄せる。


「15階層て終わりって聞いたのに、これは何だろう。もしかしたら、見逃していたのかな」


本来なら、遺跡の地図にない場所に行くのは無謀だった。

だけど、金貨に浮かれ15階層まで到達し高ぶった心は動き、私は未知の世界【16階層】へと入る。


暗く回りが見えないも、階段は一定間隔で続いているようで、なんとか降りられる。


「ここが16階層……」


階段も終わりを迎え、冷気が吹き寄せる間へと着く。

今まで感じたことのない、恐怖が全身に走り、温い獣の体臭が鼻から脳へと付く。


「……っ」


叫びたくなる衝動を必死に抑え、なんとか息を飲み込む。

それは、絶望的な現実を押し殺すように。

小さく誰にも聞こえないように息を吐く。


「……」


遠くの天井に光る苔の真下。

視界が暗闇に慣れ、目に飛び込んだ光景は一生忘れないだろう。

遺跡の16階層。


そこで私は化け物と遭遇しました。

人類の天敵であり、忌み嫌う存在。


世界最強の五竜と。


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