アウゲルニウスの慧眼
アウゲルニウスには己になんら才が無いことに物心ついた頃からなぜか感じることができた。そしてそれを証明するように、父が行ってきた教育のおおよそは上手くいかなかった。そうして十五になった折にアウゲルニウスの領地は攻め込まれた。なんとか追い出したものの父が討ち死にしたのが問題だった。どうしたものかとひねる頭もないアウゲルニウスは気分転換にと領地を見て回った時に見つけたのがキュロスだった。
アウゲルニウスがキュロスを見た時に感じたことは二つ。弓と馬の才があることと信用に足る人物であるということだった。どういうわけか何もないはずのアウゲルニウスには人を見る目だけはあったのだ。
そうして良い人材と信用のできる人材を集めるうちに領地は豊かになった。そして争いも共に増えていった。今回のいくさもそうだった。豊かな土地を求めてわざわざ山を越えてきたのだ。
アウゲルニウスが領主となって五年。豊かになったとはいえ、けして十分な褒美は渡せなかった。アウゲルニウスの私室に集まった三人に詫びの言葉と共に頭を下げる。しかしいつものことながらやはり気にするなと言われるばかりだった。
アウゲルニウスはキュロス、ダダ、カティを見ようとして、止めた。かわりとばかりに外を見渡した。小麦畑は眩いばかりに輝いている。見るまでもなく、この愛すべき故郷を守ったのは彼らなのだ。