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奇童カティ
「燃えろ!」
乱れた長い黒髪を一束銀の短剣で切り落とし、少女は声高に叫ぶ。そうするだけで切り落とした髪はひとりでに燃え盛る。さらに浮けと言えば浮き、意のままに炎を操り逃げ惑う敵を燃やしていった。
少女、カティがアウゲルニウスに雇われたのはその摩訶不思議な力によるものだった。いくらかの対価を払えば思いのままに現象を操れるのだ。年若いながらも頭のよかったカティはその力を利用されることを恐れ、自身の力で安息の地を占いアウゲルニウスに雇われた。
周りを見渡せば、同じく主君を同じくするキ ュロスとダダも敵を討ち倒している。カティの見立てでは、キュロスの才もダダの身の丈に見合わぬ怪力もカティと根は同じ物であると感じていた。恐らくアウゲルニウスの目はそれを見抜いているのだろうとも。
気づけばもう敵もなく、ずいとダダに担がれる。争いばかりではあるものの、カティはいつもそうやって子供扱いをしてくれることにどこか心休まる気持ちとなった。