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異世界騒動録  作者: C:drive
騎士の道、未だ遠く
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若き領主アルフェウス

 特に旅の目的を定めていなかったノルドは街で見聞を深めることにした。雪纏う巨人の連れて来る象と呼ばれる大きな家畜は西の石混じりの固い土を良く耕した。人食い女人と恐れられていた異種族は男が生まれづらいから他種族の男をさらうことから生まれた誤解だった。彼女たちの紡ぐ糸は不思議と雪のように輝く美しさを持っている。鉄を食らう小人は良質な鉱石を持ってきた。この街では誰もが自分の持つ力の限りで助け合っている。それは父の道を見ることしかなかったノルドの心を否応もなく惹きつけた。


 旅から一月が経った。街には既に一週間滞在しているが、次の街に行こうとはどうしても思えずにいた。いつも通り朝早くから習慣としている鍛錬を街外れでしていると声を掛けられる。二人組の大柄の男でノルドに負けず劣らずの良い装備をしている。

「まことの騎士ウルドの子、ノルド殿とお見受けしますが、如何か」

 ノルドが是と答えると、ご同行願うと言われたので素直についていった。


 ノルドが連れて行かれたのは曇り一つない白亜の城だった。門をくぐると右へ左へと人が慌ただしく行き交うのが見える。ノルドは呼ばれたのは父の助力を得るためかと予想した。


 ノルドが連れられたのは大きなテーブルに地図が広げられ、いかにも軍議を行っているらしい場所だった。ノルドが入って来ても挨拶もなく議論を交わしている。椅子に座る人物は壮年の男が多かったが、一際若い少年が突如簡潔にノルドに問いかけた。

「ノルド殿。一月の間にあなたの父ウルド卿に助力して頂くことは可能か」

 ノルドは否と答えた。馬を限界まで走らせても往復三週間はかかる。西に行く準備など整えていない父に言ったところで一週間で主君に願い出て軍備を整えるには時が足りない。加えてノルドは己を磨く旅の途中であるから行ったとしても取り合ってもらえるか分からないと告げる。そうかと少年は頷くと、何事もなかったように軍議に混ざっていく。部外者ではあるが気になったノルドは脇に控える若い騎士に何事かを聞いた。


 高く広く隣国とを分かつソーディルナムは長く諍いを防いできた。地を隔て天を竜が支配するソーディルナムを越えること叶わず、戦狂いで名の通った隣国も手を出して来なかった。しかし交流を始めた鉄を食らう小人の幾人かがとある情報を持ってきた。小人が鉱石を集めるため山に作った穴の下。地より下に空洞と掘り進める音がするのだという。


 この話を聞いたノルドは騎士に礼を言い、少年の横に向かった。横に立てども少年は見向きもしなかったが、剣を抜き放つと驚いた様子でノルドを見る。今度はノルドが気にもせず剣を掲げた。高く、さらに高く。天を舞う竜に届かんばかりに。

「ソーディルナムに唯一天を統べる竜、ソーディルは己の力示すものに力を与えると言う。私は騎士に非ず父の助力も叶わぬ只人ではあるが、この万人有りとする西の都の為とあらば心は騎士であると示すのには十分」

 いざゆかんと言い放ち、ノルドは剣を収めて歩きだした。誰も声が出せないなか、ただ少年だけはノルドに言った。

「勇ましきもの。騎士ノルドよ。鷹の子は未だ雛であると侮った我らを許せ。鷹の子は天を恐れぬ竜であった。騎士ノルドの道のせめてもの幸いを願う」


 竜の噂はノルドの耳に入ってきていた。竜は人をめったに襲いはしないが、山を登る者を見ると力を試す。見事生き残ると竜の秘宝が与えられるのだという。しかしその秘宝を見た者は初代ソーディルウルム領主を除き、未だいない。

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