リメイク 10 怪物の生まれた日
9回の表、大吾のカーブが見逃し三振を奪った。
あと二人で試合終了である。
結局、大吾が最後まで投げることになった。他が容赦なく交代させられていることを考えると相当期待されているのだろう。
八代にせよ、大吾とバッテリーを組むのは楽しいと認めざるを得ない。
キャッチャーをやった事のある者にしかわからないだろうが、カーブを軸にピッチングを作るのは独特の楽しさがあるのだ。
(まずジャイロを落として、カーブを外に、最後はインハイストレートで仕留める)
八代の要求通りの球が来てイメージ通りにバッターを討ち取った。
(もう9回だってのに本当、こいつは精密機械みたいに投げやがる)
9回二アウト、最後のバッターにまずカーブを投げた。
(いやまあ全力投球していねーって事かもしんねーけど)
次はストレートを低めに、
(でも、コントロールが良くて失投がないつーのも強みだよな)
その次はジャイロを低めに外した。ツーストライク、ワンボール。
(これで三軍なんだから笑えるよな・・・)
最後はカーブを外に入れた。ボールが上がってから落ちるカーブ独特の軌道に対処できず、空振り三振してバッターは膝をついた。
・・・。
・・・。
終わりは静かだった。寄せ集めの急増チームだったからか、八代以外が全員ライバルだったからかはわからないがとにかく静かだった。
そんな中、グランドの一番高い場所に立っている一番背の高い男が小さく拳を握っていた。
結局この男はただの一人も塁に進ませなかった。
プロを目指している奴ら相手に完全試合をやりやがった。
(完全に怪物だなコイツ)
(こんな奴が今の今まで無名か、おかしな話もあるもんだ)
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〜甲子園の実況〜
「打ったぁ! これは大きい!」
「入るか? 入るか? ああ、入ったー!逆転のスリーランホームラン!」
「9回表、深海鮫高校4番の島田君! 値千金のホームランです! これでスコアは3対1で深海鮫高校がリードしました」
「これまで好投を続けていた神原君ですが遂につかまりました。打たれたのはストレートですか?」
「んー、おそらくスライダーが抜けましたね。8回くらいからとりわけ変化球が甘く入ってくるようになりましたからね」
「なるほど・・・そうなると交代も視野に入れてくるものですが、ベンチに動きはありません! エース神原君に全てを託します!」