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序章①

 眩い光りが収束され、固く閉ざしていた瞼を開けると、そこは広大な荒野が広がっていた。

 俺は周囲を見渡す。


「ここが本物の【イザスト】…………ゲームまんまだな」


 ここから、俺の止まっていた時間が動き出す。

 不安が無いと言えば嘘になる。

 この選択が、本当に正しかったのかは、今の俺には分からない。

 けれど、ここで足踏みしていれば何も変わらない。

 俺は俺の、ちっぽけで狭い世界で、また生き続けないと行けない。

 変わらないといけないと思ってた。変わる必要があるんだ。俺自信が…………。

 でなければ、また同じことの繰り返しになる。

 今度こそ、この世界で俺は自分の居場所を手に入れてみせる。


 俺は目を瞑ると、先程までの出来事を思い出してみた。





 ユーザー数約百万人を誇る、VRMMORPG【Akashic records Online】ーー。


 俺は、小学生の頃から虐められていた。

 陰険だからとかキモいからだとか…………まあ、理由は何でも良かったんだと思う。

 俺はコミュ障で口下手で、だから虐められるのも、もしかしたら必然だったのかもしれない。

 そんな俺が、中三の頃にこのオンラインゲームに出会う。

 このゲームは、ハッキリ言って王道ゲームだ。

 簡単に言えば、魔王を倒せば良いだけの話だった。

 ただし、その魔王が馬鹿強いらしい。

 しかも、その配下も馬鹿強いと言う話で、魔王まで辿り着く事が出来たのは、十年間でたった十二人だとか……。

 そして、未だに魔王を討伐出来たと言う話は聞いたことがない。

 無理ゲーもいい所だろう。

 だからか、最近では普通に冒険者として魔物を狩ったりダンジョン攻略を目的としたり、或いは最悪出合い系目的で来る奴も居たりする。

 誰も魔王城に乗り込もうとしたりしなくなってしまった。


 確かに、楽しみ方は人それぞれだが、俺にとってこれはとても由々しき事態だった。

 折角魔王と言う強敵が、態々人参ぶら下げて待っているのに、それをスルーするなどゲイマーの風上にも置けなかった。

 だが、俺はそれ程強い【職業(ジョブ)】ではなかったのだ。

 けれど、自分の好きなこのゲームが廃れて行くのを黙って見過ごす事も出来ない。

 だから十年を掛けて、レベリングに専念して打倒魔王を目指してみた。


 俺は引きこもり生活十年目の駄目人間である。


 自分でも、このままではいけない事は分かっていた。

 けれど、どうしても止められなかったのだ。

 

 外に出るのが怖かった。

 人と関わるのが怖かった。

 人の視線に晒されるのが怖かった。


 だからか、もしかしたらこのゲームをやり遂げれば何かが変わる…………そんな期待も込めてもあったんだと思う。


 そして、とうとうその日がやってきた。

 レベルもカンストして、準備万端で魔王城に乗り込んだのだ。

 魔王城は八百階層あり、百階層毎に七魔将軍と呼ばれる、魔王の配下が行く手を阻む。

 冗談抜きで、そいつらはめちゃくちゃ強かった。

 これは確かに、無理ゲーと言われてもおかしくない程だ。

 けれど俺は、如何にかこうにかそいつらを撃退することに成功し、そして漸く魔王が居る部屋の前まで辿り着いたのだった。


 魔王城でセーブポイントは存在しない。

 これもまた、無理ゲーと言われる一つの理由だ。

 負けたら最後に立ち寄った街まで戻らされるし、何よりも一番最悪なのが、魔王城内で負ければレベルを半分削られてしまう事だった。

 それらの理由があった為に、誰も魔王城に戦いを挑もうと思う者が居なくなってしまったわけだ。

 こんな無理ゲーを制作した奴に、一度会ってみたいものだ。

 それでも、このゲームが人気があるのは、広大且つ繊細な世界観によるものだろう。


 だが、決してデメリットだけではない。

 魔王を倒せば、タイトルにもあるように、【アカシックレコード】と言う物が手に入るのだ。

 一般的な意味のアカシックレコードとは違うが、この世界でのアカシックレコードは、全ての事象……森羅万象を司り、ありとあらゆる魔法を使用可能とさせる。

 そして、全てのリミッターが外されると言う話だ。

 例えば、この世界でのレベルのMAXが百五十なのに対し、そのアカシックレコードを入手すれば、更に上を目指す事も可能となる。

 他の能力値なども同様だった。

 まさしく、この世界で神に等しき存在になれるわけだ。


 俺はステータスやアイテムの確認をし終わると、煩いくらいに高鳴る胸を抑え、魔王が居る玉座の間の扉を押し開け、いざ最終決戦へと赴くのだった。


「さて、どうなる事やら……」

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