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ライバル?登場



 珂夜を抱き締めて陽太と智仁に牙を剥く、アイリス・トーウェンは昨日の告白事件の時はいなかった人物だったが、次の会話で謎は解けた。

「アリー、体調はもう大丈夫?」

「熱は下がったから大丈夫よ。それより、私が休んでいる間に珂夜に虫がつくなんて!ショックよ。一体何があったの?」

 仮にも王子と呼ばれる有名人を『虫』扱いとはかなりの強者である。

 珂夜によるとアイリスはここ二日ほど風邪で学園を休んでいたそうだ。季節の変わり目だから暖かくなったり、寒くなったりして体がそれに対応出来なかったらしい。

 復帰した早々、珂夜が二人の男と共に歩いているのを見て気に入らなかったアイリスは排除することを決意したらしく、二人を見る視線は厳しいものだ。

 せっかく珂夜の手や髪を堪能していたのに引き剥がされた二人もちょっと面白くなかった。ただでさえクラスが違って接する時間が短いというのに。

 三人の間には火花が散っているが、珂夜の頭の上で起こっていることなので見ることは出来なかった。

 ちなみに周囲は異様な空気に狼狽え、遠巻きに見ていたりする。

「アリー、苦しいからいい加減、放してよ」

「ごめんなさい」

「それに陽太くんと智仁くんは友達だから、そんな関係じゃない(昨日なったばかりだけど)」

「そう?とても友達関係のようには見えなかったわ。手を握っていたり、髪を触らせているんだもの。何か弱みでも握られているのかと思った」

 アイリスは仕方なく、といった感じで珂夜を放し、ため息をついた。

 珂夜は珂夜で、やはり友達に見えない触れ合いなんだと青くなる。ちらっと斜め上を見てみれば、二人と目が合った。

「……仕方ない。今日は諦めよう。またな」

 極上の笑顔で智仁は珂夜に告げた。きゃーと小さめに悲鳴が聞こえた。陽太も負けじと笑顔で手を振る。さらに悲鳴が上がる。

 二人はそのまま自分達のクラスに行くようだ。名残惜しそうにちらっと見て、歩き出す。

 本当なら珂夜と親睦を深めるためそのままホームルームまで六組に居座る気満々だったのだが、思わぬ邪魔が入った。さらにこの邪魔者は珂夜を自分のものと称するので手強そうだ。

 そして、智仁の直感は同じ髪フェチではないかと告げていた。しかも、珂夜の髪がど真ん中の好みであると。

 日本人の特徴になる黒髪は重たい印象になるからと他の色に染める女性が多い。本当に勿体ないことなのだが、桜桃学園は生徒の自主性を重んじる校風のため、髪の毛を染めてはならないという校則がなかった。流石に明るすぎるのは注意されるのだが、ほとんどの生徒が染めていたりする。お洒落よりも黒髪を大事にしてほしいと思う。天使の輪がくっきりと分かり安いのは黒髪だというのに。

 とりあえずこの場は諦めることにした。智仁は密かにアイリスをライバル認定した。あの手つき、撫でることに慣れすぎている。また同性であることから珂夜の安心感が伝わって来るのだ。自分達が触ると昨日の今日だから仕方ないが緊張しているのだから。

 まずはやはり安心してもらえるように親しくなっていこうと気合いを入れる二人だった。





 一方、珂夜の方はアイリスに昨日の事件を詳しく語っていた。

 段々顔が険しくなっていくアイリス。休んだことを悔やんでいるようだ。自分がいない間にそんなことが起こっていたなんて。

 珂夜とは一年生の時に知り合った。長い付き合いとは言えないが、お互い気が合い、一緒にいてとても安心する。外見は地味だと珂夜は卑下しているが、アイリスは小さくてとても可愛いと思っている。

 何よりその艶めく黒髪。暇があれば珂夜の髪をいじっている。智仁が危惧した通り、アイリスもまた髪フェチだったのだ。

 しかも、珂夜の髪が一番だと思うほど。

 智仁に渡すものかとアイリスもまた決意した。そして、陽太にも手を握らせないよう邪魔することにした。

「珂夜ったら、騒がしいのは苦手でしょう。あの二人といたら、ますます注目されて嫉妬されるわよ。下手したら目をつけられて何されるか分からない。ちゃんと断った方がいい」

「……断ったけど、じゃあ友達からって」

 あいつら、許さん。

「珂夜、次会うときは私も一緒にいるわ」

「でも、アリー」

「このままだと、珂夜がどんな目に遭うか…すごく心配なの」

(あの二人は守ってくれるって言ってくれたけど。考えてみたら元凶よね……) 先程きゃーきゃーと騒がれていたのを思い出す。

 イケメンはどこへ行っても騒がれる。正直昨日や今朝みたいに嫉妬やら好奇心やらで見られる方はたまったものでもない。拒否したいのは山々だが。

(優しい笑顔を見るとほっこりするんだよなあ)

 陽太と智仁の笑顔が浮かぶ。

 自分だけに向けられていると感じると。ほだされる自分がいる。

「珂夜?いいよね?」

「う、うん」





 陽太と智仁の珂夜に寄せる想いは本気で。

 あの二人はどちらかをえらべと言っていたけど。

 まだちゃんと知り合ったのは昨日だし。

 これからどうなるか分からないけれど、今までの平穏な日々はなくなったんだなあと実感した。

 何だかよく分からないうちに燃えているアイリスに気づかれないよう、ひっそりとため息をつく珂夜であった。







―――アリーも十分目立つ人でしょうが。


読んでくださる方、お気に入り登録してくださった方ありがとうございます。


話短いうえ、あまり進まなくて申し訳ございません。

頑張ります。

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