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お友達生活の始まり



 学園アイドル白王子と黒王子の告白からのお友達になりましょう宣言から一晩が明けて。珂夜はあれは夢だったんだ!と期待しながら登校していた、が。

 何故か正門前で立っている二人を見つけた。物凄く…ものすごーく目立っている。正門前の人だかりが半端ない。

「きゃー朝から王子達が見れるなんて幸せー」

「白王子可愛いわ!!」

「はぁ…。漆谷様素敵…」(うん。色々な声が聞こえる。あの回れ右して帰っていいですか?)

 二人は周りの声を気にしていないようだが、珂夜は恐怖を感じていたりする。あの二人はわざとあそこに立っているのかと思ってしまう。

 あまりの様子に立ち止まっていると、智仁に気づかれた。流石髪フェチ。距離があっても見つけられるようだ。うっすらと笑みを浮かべ珂夜を見つめてきた。その様子に隣の陽太も珂夜に気づき、笑顔を振りまく。笑顔の眩しさにくらくらする女子達。歓声があがった。

 逃げちゃダメだ…某アニメの主人公のような覚悟を決めて近づいていった。 「おはよう(朝から何目立ってるのよ!)」

「おはよう。珂夜ちゃん」「ああ。おはよう珂夜」

 珂夜は不機嫌さを隠しきれず、顔をひきつらせたまま朝の挨拶をしたのだが、恋する王子達は爽やかに返してくれたのだった。

 ぎゃーとか何よあの子とか嘘でしょとか聞こえてくる。

 ちやほやされるのは好きじゃないと言っていたはずだが、周りから注目されることには慣れすぎだろう。「じゃあ行こう」

 陽太は笑顔のまま周りを気にすることもなく、珂夜と智仁と連れ立って歩き始めた。人波は自然に左右に割れて通りやすくなる。

 何故だ。

 珂夜と二人は身長差があり、珂夜は見上げないと二人の表情が分からなかったので気づかなかったが、陽太と智仁は周りにそれぞれ見てんじゃねーよと言わんばかりに鋭い視線を向けていた。珂夜を守ると約束したので早速実行中だ。

 ちなみに珂夜の身長は百五十三センチ。陽太は百七十八センチ。智仁は百八十三センチある。

 普段と違う王子達の様子に本気度を察した者達が避け始め、それにつられて動いたその他大勢という具合である。

「俺はお前の髪の毛を弄りたくてな。先に待っていたんだ」

「僕だけ除け者なんて酷いから一緒に待ってた」

 歩きながら正門に居た理由を教えてくれた。

 そして二人は髪や手に触れてくる。後頭部に感じる智仁の大きな手の感触。さらに右手は陽太に握られていて。暖かさに包まれる。 このスキンシップは友達の範疇なのだろうか。

 手つなぎの状態なんてまるでカップルだよ。されるがままになっていたが、言いたいことを言ってみた。「あの、正門前で待っていられると困りま…」

「なら、別の所で待ち合わせすれば問題ないな?目立つのは嫌なんだろう?」

 智仁に言葉を遮られた。確かに問題はない。ないのだが。

 二人はやはり確信犯のようだ。一度わざと目立つ行動を取り、珂夜の逃げ道をふさぎつつ別の案を提案してくる。譲歩された案は珂夜が賛成しやすいもので。 今回の場合は『正門で待つ』という行動にあたる。周囲の注目に耐えかねた珂夜が拒否すれば、別の場所なら問題ないだろうと提案するのだ。暗にこちらも断れば、また正門前で待っているぞと脅かしてくるのかもしれない。いや、してくる。





 陽太と智仁だって本当に騒がれるのは好きではない。周囲が――特に女子達が勝手に騒いでいるだけなのだ。

 それは彼らがイケメンだからである。

 外見に幻想を抱き、憧れる。また彼らと付き合うことが出来れば自慢になる。選ばれた自分は他者より優れているという証明になる。その優越感に浸りたい女子は多い。

 下心が透けて見える女子ばかりが近寄ってきたので陽太と智仁は顔ではなく、好みの手や髪であるか、また性格を重視していた。

 そんな中で唯一条件を満たしていた存在が珂夜である。二人にとって正に理想のパーツを持っている彼女。さらにこちらに興味はないようで、きゃーきゃー騒ぐこともないし、話かけられることもなかった。そこらへんも好感がもてる。

 実は告白を断られるのは想定内だった。まずは自分達を知ってもらいたかったのだ。いくら珂夜が拒否しようとも、知り合うことが出来れば離れる気はなかったから。だからこそ朝の告白、正門前待ち伏せを決行した。

(俺達のことを忘れないようにしないと)

(まずは会える時間を増やすことが先決だね)

 珂夜に自分達が好意を持っていることを伝え、知ってもらう。それからゆっくりと距離を縮めていけばいい。邪魔する奴らは指先一つで……いや、牽制していくのみ。

 珂夜が何も言わないのをいいことに思う存分手や髪の感触を堪能しながら歩いていると、珂夜のクラス、二年六組が見えてきた。

 しかし、出入り口に一人の女子生徒が仁王立ちしていて、入ることが出来ない。

「おはよう。アリー。どうしてそこで立っているの?」

 珂夜と同じクラスのアイリス・トーウェン。愛称アリー。親の仕事の都合でアメリカから日本へ引っ越してきていた。金の長い髪をポニーテルにしていて、青い瞳はやや怒気を含んでいる。日本語ぺらぺらで、友達の少ない珂夜にとって親友と呼べる存在だ。身長は百七十二センチ。珂夜はちょっと斜めに見上げなければならない。

「おはよう珂夜。―いつまで触っているのよ!」

 珂夜に笑顔で挨拶し、陽太と智仁から引き剥がした。べりっと。

 うちの子に何すんのよと警戒心を顕に珂夜を抱き締める。

「アリー…?」

「珂夜。嫌なら嫌って言わないと。ずっと触られたままじゃダメよ。私だって触りたいのに」

 昨日はいなかった金髪の女子生徒。

 突然の保護者(?)登場に陽太と智仁はちょっと驚く。彼女も学園には滅多にいないアメリカ人ということで有名だった。まさか珂夜の友達とは。

 珂夜をしっかりと腕の中に閉じ込めて、頭を撫でながら、王子達を睨みつけてきた。

「あなた達に珂夜は渡さないわよ!この子は私のものだわ」

「……アリー…」





 まさかのライバル宣言。タイトルは『白か黒の二択』だったはずだが『金の三択目』もあったらしい。

 キーワードにガールズラブを増やす気か!?


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