幻想2
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私が帰国した頃には全てが手遅れになっていた。
たった半年。
当時、付き合っていた彼の訃報を聞いたのは、古びたアパートに到着してからすぐのことだった。
当時の私は、国際学科に通いながらも語学なダメダメな女子大学生。
進路相談の時に、たまたま英語が好きだったからというちっぽけな理由で今の学部に決めた。
信念も慎重さもなく、私は流されていた。
結果。
遊び尽くす大学生活を送ることになった。
勉強よりも自分を優先していて、酷いものよ。
自分は真面目な人間だと思っていたのだけど、単位が足らずに留年。
我ながらバカだと思うけど、だったらもっとバカになりましょう。
そんな理由で、海外へと留学した。
いけないことをしていただけにお金はあったのよ。
ふふふ、詳しいことは秘密ね。
発音から情熱までダメダメで、大学側から留学することは出来なかった。
だったらこちらから休学して留学しましょう。
私は自費でカンボジアへと飛んだ。
その時、付き合っていた彼からお金をセビったものよ。
懐かしいわ。
彼との馴れ初めを話すと長くなるから省略。
大したエピソードがあるわけでもないし、彼、セックス下手だったのよ。
男の威厳があるだろうから、そこを追求することはなかったのだけどね。
ただ経緯としては、私が半年間、日本から離れていただけで一人の人間が死んだ。
そう。
――どこにでもある些細なことよ。
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私は暫くの間、言葉を無くしていた。
誰の気持ちも知らずに笑いかける彼。
元気なものね、と呆れながら呟いていた。
私が居なくても元気にやってるのね。
残念。
もうちょっとしたら私も行くから、覚悟しなさいよ。
また一緒に出かけましょう。
あの日の観覧車のように。
――ケータイ小説ならここで死んでいるのかしら。
恋空と赤い糸を読んだら、あまりにも感動的で号泣しちゃったのだけど、私、物事を斜めから見るキャラクターでしょ?
バカにするつもりで読んでいたから、もうやるせないわね…。
べ、別に面白くないんだからねっ!
あら、デレてしまったわ。
私のデレは貴重なものよ。
ベッドの上でしか甘えなかったもの。
…欲求不満なのかしらね。
あとで処理でもしときましょう。
さて、このフォトフレームは、飾っておきましょうか。
気味が悪いから捨ててしまっても良いのだけど、もし知人が私に送ってきたのだとしたら。
正当に攻める権利を獲得したってことね。
差出人不明の小包。
ホント、誰が送ってきたのかしら。
神のみぞ知る。