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第4話:宮中の秘密と毒入り茶

朝の宮中は、いつもより張り詰めていた。

今朝届いた匿名投稿は、ただの符号ではなかった――『宮中の茶会』とだけ書かれている。


「月城さん、大切な知らせです」

藁屋咲が息を切らして駆け込んできた。手には茶器が入った小箱。今日は皇族の小規模茶会の日で、何か異変が起きる予感がする。


茶会は華やかだ。香炉の煙、漆塗りの茶器、湯気の立つ茶。だが、私の鼻は、ほんの微かに異質な香りを捉える。甘い――しかし、これは薬草ではなく、人為的に混ぜられた香味。誰かが茶に手を加えたのだ。


私は静かに薬匣へ戻り、茶に使われた葉や水分を調べる。微量の毒成分が確認できた。被害者は、茶を口にした者だけではなく、侍女たちの一部にも軽い吐き気が現れている。偶然ではない。


そのとき、秋月禄がそっと近づく。

「月城さん、君の推察は正しい。この茶に仕込まれたのは、単なる毒ではない。操作された薬の痕跡だ」

冷静な声だが、瞳にはわずかな緊張。やはり、これは宮中権力者に絡む事件なのだ。


私が符号と匂いを組み合わせ、調合を逆算する。小瓶を取り出し、混ぜられた成分を中和するための試薬を作る。薬は、操作された者を救うだけでなく、次の証拠にもなる。


茶会の終盤、私は小さな声で呟く。

「誰かが、宮中の権力を揺さぶろうとしている」


その瞬間、誰かの視線を感じる。振り返ると、薄暗がりに人影。短く、「……繭か」とつぶやかれた。その声は前回と同じ。警告か、試練か、まだわからない。


茶会が終わり、薬匣の前に戻る。和紙がもう一枚滑り込んでいた。

『次は宮中の書庫』。


胸がざわつく。匿名投稿者は、単なる噂屋ではない。宮中全体を試すかのように、私を導いている。

私は小瓶を握りしめ、深呼吸する。甘い香りの奥に潜む陰謀を、解き明かす覚悟を胸に、夜の宮中を静かに歩く。


薬匣の引き出しに手をかけると、匂いと記憶が交錯する。

そして、その奥に潜む、宮中と外部薬商ギルドの密やかな糸――私は、それをたぐり寄せる。

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