わたしの名前
外へ出る大きな扉の前でテンちゃんが待っていた。
『おっ、来たか。じゃあ行こう……ん? どうしたお嬢?』
わたしの浮かない顔に、テンちゃんが首をかしげる。
「ミーヤちゃんが同人活動してるって言うから、どんな活動か聞いたのに、ぜんぜん教えてくれないの」
そう告げると、ミーヤちゃんが必死にテンちゃんへ視線で訴えかけていた。
『あっ…(察し)。お嬢、世の中には“知らない方がいいこと”ってのがある、わかるか?』
「ん? うん……」
『恐らくこれはまさにそれだ。“好奇心は猫をも殺す”ってやつだな。諦めた方がいいぞ』
そこまで言われたら、わたしでも危険案件だとわかる。触らぬミーヤちゃんに祟りなし。
「わかった、もう聞かない」
『いい子だ。じゃ、気を取り直して行こうか!』
テンちゃんのエスコートで扉をくぐると、そこはチョコレートの匂いがする木の中だった。ほのかに甘い香りが鼻先をくすぐる。
木の外に出ると、テンちゃんがテーブルと椅子、紅茶と焼き菓子を用意してくれていた。
「テンちゃんありがと。ミーヤちゃん、お願いします」
「そうだ、先に紹介しておくわ」
「え? 誰もいないけど?」
思わず小首を傾げると、ミーヤちゃんはにっこり笑って木の幹をぺちぺち叩いた。
「この子のことよ」
「木?」
「そう。この子は“マナの樹”。貴方と同じように、この星のマナを管理してくれるの」
木肌に一瞬だけ紋様のような光が走った。自然の木というより、何か仕組みを秘めた装置のようにも見える。
『へぇ……歓迎されてるみたいだな。なるほどな、どうりでこの木の周りのマナ濃度が低いと思っていたが、そういう事か……』
「この木はマナを取り込んで濃縮させて実や根に蓄えるの。この子たちを各地に植えれば、マナの管理はずっと楽になるわ」
木の幹や太い枝からは、ラグビーボールほどの実がぶら下がっている。よく見ると、カカオの実そっくりだった。
「あれって……カカオ?」
「ええそうよ。でもね普通のカカオじゃないわ、マナ濃度が高すぎるの。普通に食べたら高確率で体が破裂するわ。適性があれば進化を促すんだけど」
「は、破裂⁉ 進化⁉」
思わず声が裏返る。脳裏に、わたしの腕を喰った獣が風船みたいに膨らみ破裂した光景がよぎり、手が震えた。
その肩を、テンちゃんがそっと後ろから抱いてくれる。
『森で魔獣達が襲って来ただろ? あれはお嬢の体――つまり濃縮マナを喰らって進化するためさ。種として生き永らえるために、一か八かの賭けってわけだ』
低く落ち着いた声に、不思議と胸のざわめきが静まっていく。
『なるほど、すでに進化した個体がいたのはこの実のせいか。……運よく実を食べに来た魔獣と鉢合わせしなかったのは助かったな』
「そこは心配いらないわ。この子もただの木じゃないもの。私たちを襲うような愚かな魔獣はこの子の養分になってるわ。でもね、今は森全体のマナ濃度が高すぎて、適性の有無にかかわらず進化しちゃう魔獣が出てきているのが厄介なの」
「適性って?」
「知性だったり、単純に強さだったりね」
そう言いながら、ミーヤちゃんはマナの樹に向かって小声で何かを話しかけている。
「――ふふ、知性の高い魔獣は、この子と交渉して実をもらっていくみたい」
「えっ……もしかして、マナの樹さんとお話してるの?」
「ええ。だって加護を与えているもの」
「わたしもお話できる?」
「確か森の中心にある一番大きなマナの樹なら念話が使えたはずだからその子となら話せるわ。マナの樹達は思考を共有しているら、ここで挨拶しておけば伝わるわ」
しゃべる木かぁ。やっぱり顔とか付いてるのかな。ファンタジーだなぁ。
「……そうなんだ。じゃあ、よろしくね、マナの樹さん」
「マナの樹の紹介も済んだ事だしチュートリアルを始めるわ。じゃあまず、貴方に管理を任せた“マナ”って、なんだと思う?」
問いかけられて、頭の中に漠然とした神秘的な力のイメージが浮かぶ。魔法とか……?
「えっと、……魔法とか使える!」
「それも正解よ、マナを魔力に変換すれば魔法が使えるわ。でもね、もっとすごいの。なんと、この世界を構築する全てはマナで出来てるわ。」
「すべて⁉ つまり空気中にもマナは有るの?」
「いい質問ね。酸素や水素、窒素――こうした元素を作っている陽子や中性子、電子も、もとはすべてマナの集合体なの。さらに、“何物にもなっていないマナ”も大量に漂っているわ」
「つまり、常にマナに囲まれて生活しているんだね」
「そうね、それと、これ……」
ミーヤちゃんが人差し指をクルクルと回すと、指の周りに金色の粒子が集まってきた。
「この輝く粒子。これは貴方が集めたマナをギュッと圧縮して出来た“濃縮マナ”よ。貴方が粉々にされた時、このあたり一帯に四散してしまったけどかなりの量よ?」
「え⁉この金色の光わたしが作ったの?」
何処からかふわふわと飛んで来て、体の中に吸い込まれていくアレって、わたし由来の物だったんだ。なーんだ、怖がって損した気分。
「それに――貴方の体も、この濃縮マナで出来ているの。だから普通の生き物と違って、斬られても砕かれても再生できるでしょ?」
確かに……バラバラになっても再生するなんて、普通の体じゃないとは思っていたけど……。
「でもわたし、何もやってないよ?」
「そんなことないわ。貴方はこの星に来て五十年、しっかりマナの回収と圧縮を行っていたの。言い訳になっちゃうけど、ちゃんと使命を果たしていたからこそ問題ないと思って今まで介入しなかったのよ、ごめんなさい」
そう言ってミーヤちゃんは立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。
「もう大丈夫だから、ね? ほら、続き続き」
「ありがと、……じゃあ話を戻すわね」
ミーヤちゃんはどこからか縁の薄いオーバル型の眼鏡を取り出し、鼻にちょこんとかけた。
「さてここで問題になるのが――“何物にもなっていないマナ”についてです!」
妙に先生っぽい口調で指をピッと立てる。
『……なんか、急に授業始まったな?』
「気にしない気にしない。えーと、これはね……」
そう言いながら、机の下で分厚い本をぱらぱら。
「先生! それ、カンニングしてない?」
「し、してないわ! これは確認! 確認なの!」
むきになって頬を赤くしながら眼鏡を押し上げるミーヤちゃん。
「……とにかく! この“何物にもなっていないマナ”はね、増えるの。本来なら生き物が生活して消費するから釣り合いが取れているはずなのに、なぜか五〇億年前から宇宙規模で急激に増え始めたのよ」
「へぇ~……でもマナが増えるのって、悪いことなの?」
「それが問題なの。マナが増えすぎると、生き物に強い影響を与えるの」
声色がぐっと真剣になる。
「マナは願いを叶える力――これは魔法の源。
マナは身体を創り、自由を与える力――進化や体の成長を促すわ。
マナは心を導き、行動を促す力――精神にも影響を与えるわ」
「うーん……、いいことばかりに聞こえるけど?」
「一番の問題は『心を導く力』ね。要するに“やりたいことをやる”って本能が強くなりすぎるの。そうなると、思考そのものがマナに支配され、欲求を満たすために暴走してしまう。結果、争いが増えるのよ。戦争や紛争が増えればマナを消費する生物は減り、さらにマナ濃度がどんどん高まる。負のループね」
「そ、そうだったんだ……。じゃあ、この森で魔獣が死に物狂いで襲ってきたのも……」
「ええ。高濃度のマナにあてられて、進化のために暴走していたのよ」
なるほどねぇ。そうなると魔獣を倒せないと森の中を歩き回ることもできないのか……。
「はい、ここで復習。高濃度のマナを取り込んだ生き物は?」
「えっと……適性がなければ高確率で破裂する……だったよね?」
「ふふっ、そのとおり。そして――星もまた、生き物なの」
「『…………』」
「大丈夫。そうならないために、マナの樹や貴方たち――地球産の魂をスカウトしたんだから」
「思ってたより責任重大だぁ!」
『なぁ、なんで地球産の魂なんだ?』
テンちゃんが疑問を投げかける。
確かに、わたしもそこは気になる。
「言い方は悪いけど、地球は一種の実験場なの。マナ増加に対応するため、宇宙の創造主は地球の生き物を一度一掃して、この危機に適応できる生物を作り始めたのよ。それが約七千万年前だったかしら?」
『えっと……つまり恐竜が絶滅したのって……』
うわぁ、宇宙の創造主って容赦ないな……。思わず息を飲む。
「そういうこと。そして地球の生き物は、マナ濃度を低下させるため“貯めること”と“浪費すること”に特化させられたの」
「貯めるのはわかるけど……浪費って?」
疑問に眉をひそめると、ミーヤちゃんは真剣な顔で答える。
「地球の生き物は、無意識かつ非効率に魔法を使っているの」
「『な、なんだってー!』」
魔法なんてゲームとかお話の中の存在だと思ってた、まさか無意識に使っていたなんて。
「魔法は本来、マナを魔力へ変換して、その魔力を消費して発動させる方法が一番効率的なの。でも地球の生物は基本的にマナを魔力に変換できない造りだから、直接マナから魔法を発動させるの。だから無駄が多いわね」
『前世でも魔法が使えたのか……』
衝撃的すぎてテンちゃんも唖然としている。
「そうね。わかりやすい例だと――恋は魔法の一種よ」
バチ☆コンとウィンクを飛ばすミーヤちゃん。
『あ、そういうのはいいんで』
「違うわよ。恋は“魅了”の魔法。生物として基本的に備わっている、種を繁栄させるための魔法なの。他にも、出生率を上げるために、オスは命の種を放つ瞬間、メスは月の巡りの時に強い魔法をかけているわね」
「『へえ~』」
「話がそれたけど、つまり、マナを管理できる貴方はとても強い力を持っているの。しっかり使い方を覚えれば怖いものなんてないわ。だから、がんばって覚えましょ!」
「がんばる!」
「マナの基本的なことがわかったところで、今度は貴方の髪の制御をやってみましょうか」
「待ってました!」
わたしは着ぐるみパジャマの中に隠していた、やたら長すぎる髪を両手で引っ張り出した。
「そういえば、どうしてこんなに髪が長くなったの?」
わたしは毛先をくるくる弄びながら、ミーヤちゃんに尋ねる。
「貴方の髪の毛にはマナを回収する機能があるの。さっき話したでしょ? バラバラになったとき、体に溜め込んでいた濃縮マナが四散したって」
「うん、金色の粒子なら森の中にいっぱいあった」
「四散した濃縮マナでマナ濃度が急激に上がったから、それに対応するために髪が伸びたのよ」
「そうなんだ……でも、ちょっと長すぎて大変だよ」
「確かに日常生活に支障が出る長さよね、それなら短くしちゃいましょう。体の制御や魔法はイメージが大切よ」
イメージ、かぁ。髪が短くなる……。
「切るイメージ?」
「切るイメージだと本当に切れちゃうわよ? また伸ばすのが大変だから、巻き取るイメージにしましょう」
「巻き取る……長いものが短く……あ、掃除機のコンセント! ちょっと引っ張るとシュルシュルって短くなるやつ!」
有線式掃除機のコードが巻き取られる、そのイメージを固める。
「イメージできたかしら?」
「できたかも!」
「じゃあ、早速挑戦よ」
髪を引っ張りながら集中すると、じわじわと巻き取られるように短くなっていった。
「やった! できた!」
『さすがお嬢!』
喜びのあまり手を離した瞬間、髪が勢いよく頭皮に吸い込まれていった。
「あっ、フサフサが! わたしのフサフサがツルツルに……ああぁー‼」
ツルピカな頭をピタピタと確認する、悲しみのあまり涙が溢れる。
『…………』
「慌てない慌てない。イメージよ、イメージ。ほら、フサフサー、フサフサー……髪型を思い描いてもいいわ。やってみて」
「ううぅ……わかった」
ゆっくり髪が伸びて、腰まであるロングに落ち着いた。ふんわり軽く、可愛らしい印象だ。
「いい感じ!」
『最高にプリチーだお嬢!』
「似合っているわ。さすが私の使徒ちゃん、呑み込みが早いわね。何度かやればイメージしたヘアスタイルにすぐ出来るはずよ」
無事、頭がフサフサに戻った事に胸をなでおろす。
「あー良かった、ちょっと心臓が止まったよ」
「じゃあ今度は、髪を使って身を守ってみましょうか」
『そういや森で魔獣と戦った時、髪で攻撃を防いでたな。あの素早い三匹のジャッカルの時だ』
「あの三匹ってジャッカルだったんだ……イヌだと思ってた」
あの時は無我夢中で、ただ地面に伏せて防御していただけ。でも確かに髪が盾になってくれていた。
「髪で守るなら、長い方がいいよね?」
「そうね。全身守れた方がいいわ。体の強度は人間と大差ないし……痛いのも嫌でしょ?」
「痛いのはイヤ!」
髪を伸ばしながらイメージを固める。
「できた? テンちゃん、叩いてみて?」
テンちゃんが確かめるように袖で叩くと、コンコンと硬質な音が鳴った。
『確かに固いが、これだと肩とか出てるし、衝撃に弱くないか?』
「たしかに……じゃあ、衝撃を吸収できるように……空気で膨らませてみよう!」
頭の中でエアー着ぐるみを思い浮かべる。空気で膨らんだバルーンスーツみたいに、髪の中に空間を作った。
何だか白い布を被ったオバケみたいだ。
「凄いじゃない! その膨らませるのは風の魔法よ! これなら体が露出することもないし、温度調整もできるから快適ね」
「でも……これだと前が見えないよ?」
今までは髪をかき分けて視界を確保できたけど、この状態ではそれもできない。
「そうね……じゃあ今度は、髪の前に“目”があるイメージとか?」
イメージした瞬間、瞼の奥で目玉がムズムズと疼いた。
「わっ……あぶない、これわたしの目玉が飛び出しそう!」
「それは……ちょっとマズいわね」
う~ん……じゃあ目そのものじゃなくて、模様なら?
瞳の模様を思い浮かべると、濃縮マナが集まり、髪の表面に模様を描き出した。模様を通して景色が頭の中にふっと映し出される。
「わぁ……目をつぶってても見える! でも、なんか距離感が変かも?」
『お嬢、それは一つの“目”じゃ遠近感が取れないからだ』
「そうなんだ、じゃあ二つにすればいいんだね!」
もう一つ模様を追加すると、今度は立体的に景色が広がった。
「おお~、これなら自然!」
『……なんかお嬢の姿、既視感あるな』
「…………そうね」
「二人ともどうしたの?」
『あれだ、ほら……エジプト神話に出てくる、白い布をかぶった謎の神……』
「そうそう、目から光線撃ったり、戦闘特化のあの神様ね」
「???」
わたしだけピンと来てない。そんなわたしを見て、ミーヤちゃんがコホンと咳払いをした。
唐突に、空気が変わった。
さっきまで笑顔だったミーヤちゃんが、すっと揺らぎ、光に包まれる。
無風のはずなのに、彼女の髪も洋服もゆるやかに舞い上がっていた。
「……え?」
思わず声が漏れた。けれど次の瞬間、身体が勝手に震えて、片膝をついてしまった。
命じられたわけじゃない。ただ、頭を垂れずにはいられなかった。
声が降りてくる。さっきまでの軽やかな声ではない。
低く、澄んだ、夢の中で会ったミーヤ神の声色だ。
「汝――わが使徒よ」
その声が、胸の奥まで染み渡ってくる。
金色の粒子が空から舞い降り、わたしの身体を包み込んだ。
「今ここに、汝の真なる名を告げる」
光がほとばしる。
わたしの魂に直接、刻印を焼き付けられるような感覚。
「――汝の名は、メジェド」
全身を走る熱とともに、その名は紛れもなく「わたしのもの」となった。
胸の奥で何かが解き放たれる。
「……メジェド」
口にした瞬間、胸の奥にじわりと温かいものが広がっていく。
同時に、背中にぞくりとした昂ぶりが走った。――“打ち倒す者”。その意味が自然と理解できてしまう。
そして一拍遅れて世界がざわめいた。
遠く、森の奥。見えないはずの大樹の葉がざわざわと揺れる音が、耳の奥に直接届いた気がした。
その直後――、まばゆい光柱が天へと立ち昇った。
昼の太陽すらかき消すほどの輝きが、空を突き抜ける。
「マナの樹達も祝福してくれているわ」
目の前のマナの樹も枝葉を揺らして喜んでいるみたい。
ミーヤちゃんはいつもの姿に戻っていた。
肩をすくめてにやっと笑う。
「……あらやだ、片膝なんかつかせちゃって。ごめんね?」
『いや、今のは……神そのものだったぞ』
「ふふん、当然でしょ? だって私、神様だもの」
そう言ってウィンクしたミーヤちゃんを見て、視界が揺さぶられるほど激しく脈打っていた心が次第に落ちついていく。
「そうだ、大事なことを言い忘れてたわ」
「……なに?」
「“メジェド”って名前、普段は絶対に名乗っちゃダメよ。この名前はここにいる、わたしとテンちゃんとマナの樹達、そして貴方だけの秘密」
『真名ってやつだな』
「そう。真名は存在の根幹に繋がるもの。軽々しく口にすれば、余計なものまで引き寄せてしまうから」
わたしはごくりと唾を飲んだ。秘密の名前が、ますます大事なものに思えてくる。
「だから普段は、“メイジェ”と名乗りなさい。それが貴方の表の名前」
「……メイジェ……」
口にしてみると、不思議としっくりきた。
「両方とも、貴方自身の名前よ」
『ふむ、なかなかすごい名前をもらったな。“メイジェ”って名前も可愛らし響きで、お嬢にはよく似合ってる』
「ふふふっ、テンちゃんありがと。ミーヤちゃんもカッコイイ名前をありがとう!」
「どういたしまして。ふぅ、メイジェちゃんの名前も決まったことだし、そろそろ休憩にしない?」
「そうだね、ミーヤちゃん凄かったもんね、おつかれさま」
すかさずテンちゃんが新しい紅茶を淹れてくれる。
一口飲んで一息、そういえば、何か忘れているような……。
「そうだ! 見てるヤツ!」
しっかり忘れてた!
意識を集中すると、まだ見られている気配が!
「ああ忘れてたわね、……うーん、確かにいるわね、魔法を使って監視しているみたいね」
『本当に居たのか!』
「メイジェちゃんは魔法の感知が得意みたいね。でもこの感じだと私達を監視しているんじゃ無くて、この森全体を監視してるみたい」
『そんな事までわかるのか?』
「ミーヤちゃんすごーい!」
「メイジェちゃんだってすぐ出来るようになるわ。このまま監視されたままっていうのも気分が悪いから、ご退場願いましょうか」
そう言うとミーヤちゃんは空を見据え、カッと眼を見開く――
「………………げぇっぷぅ‼」
「キッタねぇでございますワヨ⁉」
『キッタねぇゲップだな!』
私は思わず背筋を引き、両手で口を押さえた。
「あらあら、ごめんあそばせぇ。う~ん、チョコレート味ね、これで大丈夫よ」
『ゲップの味なんかきいて無いだろ⁉お嬢こんな風になっちゃだめだぞ!』
「ゲップの味じゃ無いわよ、相手の魔力の味よ失礼ね」
「あっ、ほんとだ、ほんとに居なくなった、すごーい!」
『…………』
こうして、わたしは“メジェド”と“メイジェ”という名前をもらった。
森の中で誰かに見張られていたってこともあったけど、ミーヤちゃんの力で無事解決――結果オーライ!
これから先、どんなことが待っているのかはわからないけれど――
少なくとも今は、この名前と、この仲間たちがいれば、大丈夫な気がする。
わたし達の冒険はこれからだ!!




