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明日、君に会いたい  作者: 小槻みしろ/白崎ぼたん


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第73話 教室は静寂に


 チャイムが鳴るまで、隼人は龍堂と廊下で話していた。

 陽光がどんどん高くなって、日差しの角度が変わる。曲がり角のむこうから、熱気と人の気配がだんだん増えてきた。道行く生徒たちが、ちらちらとこちらを見ていく。

 龍堂が、隣り合う隼人の背に手をやった。隼人は、にこっと笑って、「うん」と応える。知らず入っていた肩の力を抜いた。


 チャイムが鳴った。予鈴だ。隼人は龍堂を見上げ、「行くね」と言った。龍堂は何も言わない。何も言わないで心配して、ずっと自分の側にいてくれた。その優しさが、嬉しかった。ぐっと握りこぶしを作り、「大丈夫」とかかげてみせる。


「またな」

「ありがとう!またね」


 そうして、隼人と龍堂は、それぞれのクラスへと入った。


 クラスには、あらかたの人が集まっていた。

 隼人が入ると、一瞬、しん、とクラスが静まりかえった。隼人はお腹に力をいれて、自分の席へと向かった。すると、クラスがにわかにざわめきだした。


「えっ?」

「からあげ?」


 互いに、確認しあっている。隼人は、鞄を置いて、席に座った。抑えきれないどよめきが、クラス中に走っていた。「ええ」と驚くもの、困惑するもの、いっそ笑いを浮かべるもの――それらを全部遠くにおいて、隼人はそこに座っていた。

 制服も変わった。髪形も変わった。自分はここにいる。

 マオやケン、ヒロイさんたちがじっと目を見開いて、こちらを見てるのがわかった。彼らの反応の意味は、いいものなのか、悪いものなのか、わからない。ただ、自分はここにいる。

 どうにでもなる。いっそ、そんな気持ちだった。


「っべー!セーフ!」


 大きな足音とともに、教室のドアをたたくようにして、一人の生徒が走りこんできた。ユーヤだった。ちょうど、本鈴のチャイムが鳴った。

 笑顔の残る顔で、クラスを見ると、隼人のところで止まった。反射的に、といった様子で顔をしかめると、隼人のもとへ向かってきた。


「どの面下げてきてんだよっ?変態やろお!」


 大股で、隼人のところへむかってくると、隼人の机に、自分の鞄をたたきつけた。そうして、隼人の胸倉をつかむ。


「こなくてせーせーしてたのにっ!消え……っ」


 そこで、ユーヤは言葉を止めた。隼人の姿をまじまじと見つめている。零れ落ちそうなほど、目を見張って、硬直する。隼人は、手から逃れようともがいた。以前より、ユーヤと視線の距離が近い。


「えっ……?」

「離してくれ!」


 隼人はユーヤの手をつかむと、ぐいと引きはがした。手は震えていたが、ユーヤは気づいていないみたいだった。


「ユーヤ、よせ」


 しん、と静まりかえるクラスに、オージの声が響く。見れば、皆、隼人とユーヤを見ていた。隼人は、唇をひきむすび、席に座りなおした。

 そのとき、担任が部屋に入ってきた。そこでクラスの空気が少し、凪いだ。オージがユーヤを連れていく。ユーヤはどこか、呆然とした様子で、引っ張られていった。隼人は胸を撫でおろす。


「うそでしょ」


 と、誰かの呟きが、あたりに響いていた。



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