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危機は脱した気がする & 奇妙なお仕事

作者: ソウ マチ

 寝る前に必ず「皆さんにイイコトありますように☆」そうお祈りしているソウ マチです☆ 世界の平和を願うほど器がデカくないので、せめてわたしと関わりのある方だけでも幸せになってほしいとお祈りしています☆ もちろん今このエッセイをお読みの「あなた様」もちゃんと入っています♪ わたしは願うことしかできませんけれど、あなたが凹んだ時に「少なくともソウは、わたしの幸せを願っている」そう思い出してくださると嬉しいです♪


 そんなわたしですけれど、ここ数か月はこのお祈りをしていませんでした(!!)いえ、していたことはしていたのですけれど、余分な一文がくっついていたのです。いつもは「皆さんにイイコトありますように☆」で終わるのに、ここ数か月はその後に「わたしにもイイコトありますように!!」そうお願いしていました。いやホント、マジでヤバかったのですよ(苦笑)。必死のもっしだったのです(苦笑)。


 バイトをしながら執筆活動をして、いつか筆だけでご飯を食べてゆけるようになりたいと考えました。そのためにバイトと執筆が両立できるバイトを選んだ……つもり……だった。ところがよく考えたら、バイト代だけで生活できない!(←数字に激弱いのが原因)しかもそのバイトを辞めてしまった! 一刻も早く次のバイトを見つけないといけないのに、心が折れて勇気が出ない(涙)。そうこうしているうちに、身体のあちこちに不調が……! このままじゃ働けないんですけど!! 働けなかったら路頭に迷うんですけど! こんなに崖っぷちになったのは、人生で初めてです! 気合や根性でどうなるものでもないし、もともとそんなに気合も根性も持ち合わせていない。毎日が不安で不安で……(涙)。


 結果、皆さまの幸せを願うと同時に「わたしにもイイコトがありますように!」そう必死のもっしでお願いするようになっていたのです。ところがここ数日「わたしにも……」と言わない自分に気が付きました。どうやらピンチは脱したらしい。今は皆さんの幸せだけお願いしています☆


 ずっとエッセイで「今はしんどいですけれど、いつか『何とかなりました!』って書くのが夢です☆」そう言い続けていた夢が、やっと叶ったようです♪♪ 良かった♪ 良かった♪

 いつも応援してくださって、本当にありがとうございます! これからも「ヤバイです!」って何度も言うでしょうけれど、良かったらお付き合いください♪♪


 では今日のお話です。当事者の方は全員神に召されたお話なので、時効と判断して書きます。出てくるお名前はすべて仮名、年齢は当時のものです。


 わたしの知り合いに明子さん(70代・亡夫の年金で悠々自適生活)がいらっしゃいました。そして明子さんのお友達に悟子さん(60代・ずっと独身・年金はほんのちょっぴり)という方がいました。悟子さんは明るくて働き者ですけれど大した財産もなく、古いアパートで一人暮らしをしていました。年金だけでは食べてゆけないので、お掃除や店番などのバイトをしてギリギリの生活をしていた。そんな悟子さんと同じアパートに太郎さん(独身・70代・たぶん年金暮らし)というおじいさんが暮らしていた。太郎さんは天涯孤独の身であまり丈夫な身体ではなく、あちこちの病院へかかっていました。太郎さんは年を重ねるにつれて独り身の生活が不安になったようです。ある日、同じアパートの住人である悟子さんに、奇妙な話を持ち掛けてきました。


 太郎:僕は家族がいないし、これからの生活が不安だ。

 悟子:それはアタシも同じですよ!

 太郎:そこで悟子さんに頼みたいことがある。

 悟子:アタシにできることなら、やりますよ♪

 太郎:2千万円で僕が死ぬまで面倒をみてほしい。

 悟子:えっ!?

 太郎:僕の生活費は自分で払う。それとは別に2千万円持ってる。悟子さんが僕の面倒をみてくれるなら、僕が死んだ後に2千万円あげる。ただし、僕はいつまで生きるかわからない。数年後かもしれないし、もしかしたら悟子さんのほうが先に死ぬかもしれない。

 悟子:寿命はわかりませんものねぇ……。

 太郎:お互いに何年生きられるかわからないが、僕が死ぬまで面倒をみてくれたら2千万円あげる。

 悟子:うぅ~ん……。少し考えさせてください。


 悟子さんは部屋へ帰っていろいろと考えました。悟子さんだって身体が動かなくなるかもしれない。太郎さんより先に死んでしまったら、タダ働きになってしまう。もし太郎さんのほうが先に亡くなったとしても、10年も20年も面倒を見続けることができるかしら? でも太郎さんも心細くて頼んできたんだろうし、お役に立てるものなら力になってあげたい……。翌日、悟子さんは太郎さんの部屋をノックしました。


 悟子:いろいろ考えましたが、このお仕事をお受けします。

 太郎:そうか! 受けてくれるか!

 悟子:先のことはわかりませんけど、やってみます。

 太郎:ありがとう! ぜひお願いするよ!


 こうして悟子さんは太郎さんのために働きはじめました。簡単な食事を準備したり、お洗濯をしたり。太郎さんは年齢のせいか家事をするのが難しくなっていたので、大喜びでした。そしてそのうち病院へ行く回数が増え、入退院を繰り返すようになりました。悟子さんは病院へ行ってお洗濯物を取り替えたり、家族のいない太郎さんを見舞って過ごす日々でした。この間、とくにお給料はもらっていなかったそうです。タオルやパジャマなどは太郎さんがお金を渡してくれたそうですけれど、それは悟子さんのバイト代じゃなかった。


 悟子さんが太郎さんの面倒をみるようになってから4年後、太郎さんは静かに息を引き取りました。最後まで「悟子さん、ありがとうな。悟子さんのおかげで助かったよ」そう言っていたそうです。


 太郎さんの葬儀を済ませた悟子さんは、太郎さんに言われていた弁護士さんを尋ねました。太郎さんが亡くなった後に弁護士さんのところへ行けば、約束していた2千万円を受け取ることができると言われていたからです。


 弁護士さんなんて会ったこともない悟子さんは緊張して弁護士事務所を訪ねました。受付の事務員に太郎さんと2千万円の約束をしていたこと、太郎さんが亡くなったら弁護士事務所を訪ねるよう言われていたと説明すると、事務員から奥の部屋へ通されました。緊張しながら待っていると、背広を着た無愛想な年配の男性弁護士が、書類を抱えてキビキビと部屋へ入ってきました。


 悟子:どうも……。

 弁護士:〇〇太郎さんの件だとか。

 悟子:そ、そうです。

 弁護士:〇〇さんからお話は聞いています。あなたはさっき事務員へ「2千万円」の契約をしていたとおっしゃったそうですが、間違いありませんか?

 悟子:はい。太郎さんから「僕が死んだら2千万円払う」と言われていたので、この4年間お世話をしました。


 弁護士は難しい顔になりました。手元の書類を見ながら事務的に言います。


 弁護士:おかしいですね。2千万円じゃありませんよ。


 このセリフを聞いた時、悟子さんは太郎さんから騙されたと悟りました。太郎さんの言っていたことはウソだったんだ! アタシは4年間もタダ働きをさせられてしまったんだ! 2千万円という大金に目がくらんだせいで、タダ働きをしてしまった! 老後の生活にと思ってアテにしていたのに、何にももらえないんだ! ショックで顔が真っ白になった悟子さんに気付かないようすで、弁護士は書類を見ます。


 弁護士:あなたがもらう権利のある金銭について説明します。難しい法律用語で話してもわからないでしょうから簡単に説明すると、〇〇太郎さんが亡くなった時点で残っている財産をすべてあなたへ贈るという内容です。

 悟子:え? 

 弁護士:ですから2千万円ではありません。細かい金額は後で説明するとして、現時点でおよそ5千万円(!!!!!!)があなたへ贈られることになります。


 悟子さん、この時点で腰が抜けて立ち上がれなくなったそうです。太郎さんがウソをついていたのは事実でしたけれど、悟子さんが思っていたウソと違っていた! 太郎さんは予定よりずっと多いお金を悟子さんへ支払ってくれようとしていたのです!! 腰が抜けた悟子さんは、弁護士さんや事務員さんの手を借りてやっと立ち上がれるようになるまで、1時間以上もかかったそうです(笑)。そりゃ、そうだ! いきなりそんな大金をもらったら、きっと腰が抜けてしまいます!!(笑)


 そして後日、悟子さんの口座へ振り込まれたのは弁護士さんが言っていた5千万円よりも6千万円に近い金額だったそうです……(笑)。お約束だった2千万円のじつに3倍……。wwwwwww おかげで一生安泰。wwwww


 大金が転がり込んだ悟子さんは、どうなったと思いますか? 新しくてキレイなアパートに引っ越した? それまで行きたくても行けなかった旅行へ行った? 派手な生活になった? どれも違います。悟子さんはそれまでと同じように、お掃除や店番のお手伝いをしたそうです。そして同じ古いアパートで以前と同じ生活を続けた。大金が転がり込んでも生活はまったく変えず、質素な生活を貫いたそうです。


 悟子さんは大金に手を付けないまま、老衰でこの世を去りました。天涯孤独で遺言もなかったそうですから、その大金は……国がもらっちゃったのかなぁ?? もったいない気もするけれど、悟子さんにとって心強い大金だったと思います。何かあってもお金の心配だけはしなくて済んだでしょうから。


 もしもあなたが奇妙な仕事を頼まれたら、どうしますか? そして大金をもらったら、どうしますか? ありえないお話ではないかもしれません。だって似たような境遇の方はたくさんいらっしゃいます。もしかしたらあなたにも、奇妙な仕事の依頼があるかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 太郎さん、幸せだったと思うなあ。自分がそういう身だったら、信用置ける人にお願いしたいもの。 その点、人を見る目は確かだったってことですね。 [気になる点] 太郎さん、7000万円持ってても…
[一言]  口頭でも契約は成立しますが、書面がないと第三者に対抗できない可能性が高いので、危険ですね。  彼がきちんと手続きをしていてくれたおかげで、つつがなく行きましたが、マチ先生はきをつけてね。 …
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