7.朝の日常②
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
エルナがドアを数回ノックすると少し掠れた声でオルマスは返事をした。
ドアを開けて中に入るとオルマスは眠たげにベッドに腰掛けていた。
ナイトローブは少し乱れていて細身の均等のとれた身体が不用心にも曝け出されていた。
(朝、弱いのか……)
監視していたときには見られなかった様子に少女は珍しそうにまじまじと見つめた。
すると、オルマスは少し困り顔をしてエルナはコホンと一つ、咳払いをした。
「見過ぎだ……」
「え。ああ、申し訳ございません。」
オルマスが恥ずかしそうに言うと、少女は視線をそらした。
やってしまった、と少女は軽く肩を落とした。
「さあ、オルマス様は朝の支度をなさってください。あなたは私と少しお話をしましょうか。」
少女の肩を叩きながらエルナが言った。
恐る恐るエルナの様子を伺うと、硬い笑みを浮かべたエルナがいた。
オルマスは「少し待ってくれ。」と言って別室の洗面所へと向かったため、エルナと2人で部屋に残された少女は硬く口を結びながら処罰を待った。
視界の端でエルナが手を振りかざしたのが見え、少女は唇を噛んだ。
「……めっ。」
「……はい?」
額を軽く指と指で弾かれた。
少女は思わずキョトンとした。
「ふふ、今日はこれくらいで許してあげますけど、次にオルマス様に失礼なことをしたらおやつ抜きにしますからね。……どうかしましたか?もしかして、痛かったかしら?」
茶目っ気たっぷりに言ったエルナだったが、少女が未だに微動だにしないことに焦りをおぼえた。
少女は額に手を置くと、痛みとは別の何か温かい感覚がした。
「いえ、痛くはありません。ただ……何というか、とってもあったかい気持ちになって……。ご心配をおかけして申し訳ございません。」
(また、やってしまった……)
少女はエルナに深々と頭を下げた。
以前少女が働いた屋敷では、よく使用人たちは鞭で叩かれたり、殴られたりされていたため、少女は反射的に反応してしまっていた。
しかし、エルナがしてきたのは大して痛みがしないもの。
更に、少女はなぜか温かさを感じた。
「本当に、すいません。」
「……いいえ、痛くないならよかったわ。」
少女は罪悪感と恥ずかしさとでしばらくエルナの顔を見れずにいた。
そして、エルナが何かを考え込んでいることに、気が付くことはなかった。
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