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月が照らす夜でまた会いましょう  作者: 下池結花
1章
2/9

1.闇に潜む者


 少女は埃が舞う屋根裏で息を潜め、そして、下の部屋から聞こえてくる話し声に耳を傾けていた。

 板と板の隙間から下の様子を伺うと、犬のような顔をした騎士風の男と、資料に載っていた不鮮明な写真の男性、オルマスがいた。


 2人の話す内容を理解はできなかったが、会話の多くは機密情報に準ずるものらしい。


(あ、私……)


 ふと少女は普段の諜報活動のせいか、彼らの会話を記憶していることに気が付いた。


 少女は苦笑し、改めてオルマスたちの会話に耳を傾け直した。


「――ですので、人員の補充をお願いしたく……。」

「昔からそうだ……。参謀部に人望がない訳ではないだろうが、やはり、皆前線で戦うことを望むのだろうな。

 分かった、俺の方から人事部に申請しておこう。その方が、多少は融通が効く。」

「ありがとうございます、オルマス様。

 では、私は本日はこれで失礼いたします。」


 獣人の騎士がいなくなると、オルマスは小さく欠伸をした。

 続けて眼鏡とネクタイを取り外し始めた。


(私には分からないけど、部下の前で尊厳を保つのって大変なんだろうな)


 椅子の背に寄りかかるような形で座り出したオルマスを見ながら、少女は称賛を送った。


 寝込みを襲おうと考えていた少女だったが、オルマスのデスクに積まれた書類の山を見てその考えを諦めた。

 代わりに、部屋全体を観察した。


(この部屋じゃ、狭すぎるな)


 なんとかオルマスを外にだそうと少女は屋根裏を見回した。

 すると、少女は部屋の隅に猫の死骸があるのに気が付いた。


(あれを使うか……)


 少女は心の中で猫に謝罪をしながら、死骸を手に取った。



――――――――――――――――――――――――――



「にゃーにゃー」

「うん?猫の声……?」


 もうじき日付が変わろうとしていた時、オルマスは外から猫の声らしきものが聞いた。

 バルコニーへと続く大きな窓から森の方を眺めると、森と敷地の境目辺りに金色に光る2つの目があった。


(この森で猫が生きていられるなんて……)


 珍しい、とオルマスは窓を開け、バルコニーからゆっくりと地面に降下し、猫に近付いた。

 オルマスは猫を撫でようと、手を伸ばした。



 後ろで月明かりに照らされたナイフの刃が光った。



 

「死ね……」

「なっ……!!誰だ!」


 オルマスが間一髪のところで避けると、少女は小さく舌打ちをした。

 オルマスが触ろうとしていた猫はいつの間にか正気を失い、元の死骸となって地面に落ちていた。


(死霊魔法……気が付かなかった)


「中々良い腕をしている。だが、惜しいな。」

「……そう。」


 少女はナイフを構え、真っ直ぐオルマスを睨んだ。

 一方、オルマスの方もフードに隠れて少女の表情は見えていなかったが、睨みをきかせていた。



読んでいただき、ありがとうございます


・誤字、誤字等の報告がありましたら、宜しくお願いいまします

・感想も受け付けております


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