今日から、星座になりました。
「──というわけで晴川春佳さん。あなたは星座になりました」
とある日曜日。彼らは突然現れた。
たぶん地球人では──いや、そんなことはいい。
「星座?」
聞き返す。
「星座って何?」
「星座は星座です」
「星座って空の?」
「はい」
「それに私がなったと」
ナントカ会議だのナントカ条約だの、意味不明な単語を混じえながら、彼らは何度も説明をしてはくれた。
要するに、何やら偉い人たちがややこしい決定をした結果……
私が星座になったらしい。
わけが判らない。
が、とにかく。
こうして私──晴川春佳は、星座になった。
☆
その日から、私の日常は一変した。
……わけでもない。
実は大して変わらなかった。
ただ、本を見ると、白鳥座とかオリオン座とか、見慣れた星座と並んで「晴川春佳座」なる謎の星座がある。
誰も疑問に思っていないようだ。いわゆる記憶操作、みたいな奴だろうか。
しかも何だか12星座に組み込まれた。占いとかのあれだ。
かに座としし座の間にねじ込まれている。
ちなみに私は1月生まれのやぎ座だ。冬生まれだけど春のような暖かい人間に、と名づけたそうで。
結果「晴川春佳座」なのに夏の星座で、当の晴川春佳はやぎ座──というややこしい事態になっている。
何だこれ。
私が晴川春佳座の晴川春佳だ、ということはみんな知っているようだ。
けど、だから何ってわけでもない。ちょっと名前が有名な人、くらいの認識だろうか。
連日テレビに引っ張りだこ──みたいなことも別にないし。
たまにだけど、サインだとか握手だとか、求められることはある。
サインなんて書いたこともないので、適当に名前を書く。喜んではもらえているらしい。
星座のサインって何だろう。
要するにそんなこんなで。
私は私のままだ。
☆
1年が過ぎた。
ある日突然全部元通りになるんじゃないか──なんて思っていたのだけど。
世の中は相変わらずだ。
これはもう変わることなく、ずっと続いていくのかも、なんて今では思う。
たまに考える。
たとえば私が結婚したら、どうなるんだろうか、とか。
ものすごい犯罪なんかを犯したら、とか。
私が死んだ後は──とか。
でも考えたって仕方ない。
たぶんなるようにしかならない。
これからも、私は私だ。
晴川春佳なのだ。
夜空にある自分の星座を見上げながら、生きていこうと思う。
未だにどこにあるのか、よく判ってないんだけど。
☆
「──というわけで晴川春佳さん。あなたは十二支になりました」
どうなっているんだ私の人生は。