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「なろうラジオ大賞4」のための物語

今日から、星座になりました。

作者: ヤギマルケイト

「──というわけで晴川(はるかわ)春佳(はるか)さん。あなたは星座になりました」


 とある日曜日。彼らは突然現れた。

 たぶん地球人では──いや、そんなことはいい。


「星座?」

 聞き返す。


「星座って何?」

「星座は星座です」

「星座って空の?」

「はい」

「それに私がなったと」


 ナントカ会議だのナントカ条約だの、意味不明な単語を混じえながら、彼らは何度も説明をしてはくれた。

 

 要するに、何やら偉い人たちがややこしい決定をした結果……

 私が星座になったらしい。


 わけが判らない。


 が、とにかく。

 こうして私──晴川春佳は、星座になった。


          ☆


 その日から、私の日常は一変した。


 ……わけでもない。

 実は大して変わらなかった。


 ただ、本を見ると、白鳥座とかオリオン座とか、見慣れた星座と並んで「晴川春佳座」なる謎の星座がある。


 誰も疑問に思っていないようだ。いわゆる記憶操作、みたいな奴だろうか。


 しかも何だか12星座に組み込まれた。占いとかのあれだ。

 かに座としし座の間にねじ込まれている。


 ちなみに私は1月生まれのやぎ座だ。冬生まれだけど春のような暖かい人間に、と名づけたそうで。


 結果「晴川春佳座」なのに夏の星座で、当の晴川春佳はやぎ座──というややこしい事態になっている。

 何だこれ。



 私が晴川春佳座の晴川春佳だ、ということはみんな知っているようだ。


 けど、だから何ってわけでもない。ちょっと名前が有名な人、くらいの認識だろうか。

 連日テレビに引っ張りだこ──みたいなことも別にないし。


 たまにだけど、サインだとか握手だとか、求められることはある。

 サインなんて書いたこともないので、適当に名前を書く。喜んではもらえているらしい。

 星座のサインって何だろう。



 要するにそんなこんなで。

 私は私のままだ。


          ☆


 1年が過ぎた。


 ある日突然全部元通りになるんじゃないか──なんて思っていたのだけど。

 世の中は相変わらずだ。


 これはもう変わることなく、ずっと続いていくのかも、なんて今では思う。


 たまに考える。


 たとえば私が結婚したら、どうなるんだろうか、とか。

 ものすごい犯罪なんかを犯したら、とか。

 

 私が死んだ後は──とか。



 でも考えたって仕方ない。

 たぶんなるようにしかならない。


 これからも、私は私だ。

 晴川春佳なのだ。


 夜空にある自分の星座を見上げながら、生きていこうと思う。


 未だにどこにあるのか、よく判ってないんだけど。


          ☆


「──というわけで晴川春佳さん。あなたは十二支になりました」


 どうなっているんだ私の人生は。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 純粋に面白かったです。唐突に星座に組み込まれたのに、特に何も起きない…まぁ当然だ、と。日常においての疑問ももっともですよね。なんだか、胸がほんわかするような可笑しさが込み上げてきました。 …
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