アヤン・レーヴェの報告書 後
※今回も第2王子・アヤン・レーヴェ視点のお話です※
※誤字修正しました<(_ _)>※
―――これは、レーヴェ王国第2王子・アヤン・レーヴェの報告書から抜粋した記録である。
学園生活が始まって半年が過ぎた頃、恒例のデゼルト王国からの交換留学生がやってきた。それは第2王子・メヌリス・デゼルト殿下と、第1王女・モネ・デゼルト殿下であった。
メヌリス殿下は、紫色の髪にレモンイエローの瞳を持っている。目鼻立ちは整っているがどこか俺様気質を感じた。そしてモネ殿下は紫がかったシルバーの長い髪にレモンイエローの瞳。デゼルト王国でも一番の美女と名高い方だが、少し夢見がちなところがあるようだ。
一応、父上も留学先で俺とエリンそれぞれの部屋へ彼らがお遊びで侵入した事件のことは知っているので、最大限警戒するようにと命を受けた。まぁ、遠ざけるよりもすぐ隣にいた方が叩きやすいと言うことだった。
何だか王子教育の際に教師陣から散々聞かされた父上のレーヴェの若獅子時代の話を思い出してしまった。王太子時代の父上は遠くから慎重に様子をうかがうよりかは真っ先に陣頭に立ち斬り込んでいくタイプだったらしい。それで圧倒的な戦力で全戦全勝を勝ち取った英雄だと言うのだからすごい。
そして俺たちに万が一のことがあってはならないと更に警護も厳重にしてくれた。
その上魔法侯爵は、もしもエリンが不快に感じた時に自動電撃を放つ魔道具・・・スタンガンブレスレットを下さり、早速エリンに装着してもらった。令嬢が付けるにあたってちゃんとデザインもかわいらしい花柄となっている。エリンは不安そうだったが、魔法侯爵がせっかく開発してくれたのだし使わない手はない。
なお、留学に来たメヌリス殿下は1歳年上なのだが、とてもではないが2年生の授業にはついて行けないとのことで、モネ殿下と同じく1年生の授業を受講している。
まぁ、俺たちが1歳年下なのにデゼルト王国王立学園の1年生として留学した時も、学力が追い付いていないとのことだったし・・・。しょうがないと思いつつ、エリンと共に世話人を務めることとなった。
最初は確かに王太子殿下夫妻の言ったように、少し天真爛漫なモネ殿下に俺さまなメヌリス殿下ではあるものの、基本的には問題はなさそうだ。
勉強も付いていけないことはあっても授業はしっかり学んでいるようだ。時折2人でこそこそと話してはいるものの、兄妹と言うのはあぁいうことも普通にするのかな、と何となく思った。
俺にとっての兄のような存在はイシャン兄さんだったけれど、最近は女性恐怖症を発症したり、マザコンを暴走させたり・・・婚約者の令嬢がしっかりした方なのでまぁ大丈夫そうにはなってきたけども。
それに最近ではマザコンを利用して婚約者の令嬢の妹を追い払ったのだとかなんだとか。いや、何故追い払う必要があったんだ。聞いた話では、イシャン兄さんに横恋慕しようとしたらしい。
ただ、何があったのかわからないが、その後ご令嬢の妹君はとてもまじめな学生になったらしい。イシャン兄さんが更に別の次元に行ってしまったようで悲しいが、ひとまずアンシュさんと言う新たな叔父もいるため、まともなアンシュさんと話すことで俺はひとまずほっとしていた。
だが、ある時・・・メヌリス殿下が不意にエリンの腰に手を回そうとしてエリンのブレスレットが反応。メヌリス殿下が電撃で気絶した。
このことは国際的に大問題だとモネ殿下は仰ったが、滞在先の王子の婚約者に悪戯に手を触れようとするのが悪い。
この出来事を機に、そろそろ学園生活にも慣れただろうしと俺たちは彼らの世話人を外れた。なお、この件は父上からデゼルト王国王にも話が言っており、デゼルト王国王も甘やかしたばかりに羽目を外したのだろうが、このままではダメだと納得してくれたようだ。今までは彼らを国賓として俺たちが世話人を務めていたが、これからは世話人を外れることも了承してくれたらしい。
だが、更に何かあってはいけないと、俺ができる範囲でエリンをエスコート。エスコートしきれない部分は魔法侯爵からの善意で覗き見システ・・・いや、見守りシステムで護衛たちも協力のもと、常に学園内でエリンのことを注視しモニター越しで見守る体制を整えたのだ。
これでひとまず一安心・・・と思っていた頃だった。俺とエリンは目撃してしまったのだ。メヌリス殿下が・・・ディクーシャ嬢と共に廊下を歩くニシャ嬢に這い寄り、“君が欲しい!俺と結婚しろ!”と、宣言しているのを・・・。
すかさずディクーシャ嬢がニシャ嬢を庇うものの、相手は隣国の王子であることを振りかざし“不敬罪で訴える!”とまで言い出す始末。このままではいけないと、俺たちもニシャ嬢の元へ向かった。だがしかし、その間にもディクーシャ嬢を振り切りメヌリス殿下がニシャ嬢に手を伸ばそうとする。
そしてその周囲から学生たちが飛び出しディクーシャ嬢とニシャ嬢をガードするが、メヌリス殿下は諦めずにニシャ嬢に掴みかかろうとしており・・・
そこに、大魔王さまが顕現したのは言うまでもない。
俺はその時本当に、あの方は“大魔王さま”なのだと実感したのであった。
次回・・・大魔王・・・降臨っ!!