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新たな伏線


―――季節は廻り・・・乙女ゲームが開始される2年次になっても取り留めてイベント的なものもフラグ的なものも立つことはなく・・・。


あ・・・でも、すっかり仲を深めたイシャンとシャーラの元に、今年新一年生として入学してきたシャーラの妹がイシャンに横恋慕しようとしたことがあったな・・・。


その時はイシャンが一計を投じて、“母上の妹なら・・・叔母上だよねっ!”と言い、彼女の妹を“叔母上―――”と連呼して追いかけまわしたことで彼女の妹はすっかり意気消沈して、塞ぎこむようになってしまったのだと言う。


貴族の令嬢の適齢期は若い。だから、姉妹がいれば若くして叔母になることも少なくない。だが、外見に自信があり、姉よりも美人で可憐な自分の方が玉の輿に相応しいと豪語していた彼女にとって“おばさん”扱いはとてもこたえたらしい。


そして、彼女はひとが変わったようにイシャンに脅え、それから目を背けるように勉学に打ち込んだそうだ。更に男爵家の婿養子となる優秀な男爵家の次男と婚約を結んだそうである。

※なお、イシャンはマザコンではあるが他者を“母上”に例えることは禁じられたのでシャーラのことはしっかりと女性として、フィアンセとして見ているので安心してほしい。


俺はと言えば、アンシュ、クリシュナと一緒に常にニシャとディクーシャの学園生活を魔道具で見守っている。因みにこの離れた場所の風景を映す魔法技能は、魔法師団の研究員たちによって日の目を見ることになった。最近は遠く離れた領地と王都を結ぶ遠隔通信魔法としても応用されて大変活躍しているらしい。


まぁ、俺にとっては如何にニシャの行動をこの目で把握するか・・・が重要なので、最近は録画機能も付けてある。

因みにこれに関しても魔法師団の研究員たちが目を輝かせて応用技術普及に向けて研究に勤しんでいるらしい。


だがしかし・・・伏兵と言うのはどこにでもいるわけで。


俺はその日、学園長室に呼ばれていた。因みに学園長は魔法伯夫人である。

朱色のふんわりロングヘアーに前髪を真ん中分けにした美女で、キリッとした瞳は濃い紫色である。


「で、何の用だ?」


「・・・実は、お耳に入れておきたいことがございます」


「ん・・・?」


「ただいま・・・デゼルト王国の王子王女殿下ご兄妹が留学で我が学園に滞在されていることはご存じでしょう」


「あぁ・・・魔法留学だったか・・・?確か伝統的に行ってきた交換留学だよな。話では第2王子が世話人になっているとか・・・なんとか」


「えぇ・・・妹の方は15歳で1年生。兄の方は16歳なのですが・・・2年生の授業について行けず、今は妹と共に1年生の授業を受講しております」

大丈夫なのか、一国の王子があれで。まぁ、王太子は成人したきちっとしたのがいるらしいのでまぁ、いいけども・・・。


「それで、最近になって兄の方が再び2年時の授業を受講したいと訴えておりまして・・・」


「試験に合格していれば問題ないのではないか?」


「・・・えぇ、そうなのですが・・・試験は不合格なわけでして」


「なら無理だろう・・・何故今頃になって?留学して既に何か月か経っているだろうに」


「その・・・実は、運命の相手を見つけたそうです」


「はぁ・・・?」


「その運命の相手と学びたい・・・彼はそう申しております」


「その運命の相手とは・・・?」


「その・・・恐れながら・・・ニシャ・シュヴァルツ嬢です」


「・・・は・・・?」


「大魔王さまの未来の嫁・ニシャ・シュヴァルツ嬢であらせられます」


「つまりはあれか。これは・・・俺がその留学してきたデゼルト王国の王子を暗殺してもいいと言う命だろうか?」


「・・・残念ながら・・・」


「では、半ごろしか?爆破はしていい?それとも四肢をもいでいいのか?どこから行く?」


「私もできることなら・・・大魔王さまの未来の嫁・・・ニシャ・シュヴァルツ嬢は大変かわいらしい。更に大魔王さまを見つめるあの上目遣いには・・・魔法爵夫人会としても満場一致で“尊い”と結論付けておりますが」


「それは良い心がけだな」


「えぇ。しかしながら・・・現状としては・・・デゼルト王国との友好のためにも王子王女を殺さぬようにと・・・国から命じられてしまったため、あのバカ・・・いえ、兄王子殿下を2年生に進級させないことくらいしか対策の打ちようがございません」


「んなん・・・っ!陛下・・・先手を打ったか・・・っ!」


「国王陛下だって・・・きっと断腸の思いでしょう!何せ・・・末の弟くんの妹なんですから!」


「アンシュも最近はシスコンを暴走させて、魔道具ニシャモニターの監視にも熱を入れ、その交友関係もしっかり把握、調査しているしな・・・」


「ぐ・・・っ!私たちには・・・私たちにはもう手はないのでしょうか!私たち魔法爵夫人会がお手上げだなんて・・・っ!」


「いや・・・待て・・・手はふたつ残っているぞ」


「そ・・・その・・・手とは・・・?」


「デゼルト王国ごと滅ぼそう?」


「残念ながら、現デゼルト王陛下と王太子殿下はまともですし、何よりメロンがとても甘くておいしくて、この間の夫人会にニシャちゃんとディクーシャちゃんを招待したらとても気に入っていたのです。何卒・・・それだけは!」


「ぐ・・・っ!ニシャはデゼルト王国のメロンを気に入っているのなら・・・まぁ、滅ぼすのはやめておこう」


「ありがたく存じます」


「では・・・次の手は・・・」


「はい・・・!」


「殺さなければいいんだよな?」


「・・・そうです・・・そうですよね!ついでにヒーリング魔法の練習台が手に入ります!」


「では、その案で。俺のニシャに手を出した時点で実行する」


「えぇ・・・うふふ」


「うふふ」


『うふふふふふふ・・・っっ』

その後学園長室の前を偶然訪れた講師のひとりが、その中から漏れ出る不気味な笑い声に青ざめて逃げ出した・・・と言う後日談は特に伏線でもなんでもないので忘れてくれて構わない。


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