学園生活
学園生活を送るニシャもかわいい。ディクーシャに連れられて物珍し気に周囲を見渡すニシャ。そして周囲に配置した魔法爵家のものたち・・・。
「守備は万端だ。ふふふ・・・。これが俺の開発した最高傑作!結界内の任意の場所を映す素晴らしい魔動具だ!」
「・・・いや、何作ってんですか、ルドラさま」
しかし後ろからは呆れたようなアンシュの声が響いた。
「何だ・・・アンシュだってニシャの学園生活が気になるだろう?」
「そりゃぁ・・・妹のことは心配ですけど・・・。ディクーシャちゃんはいい子みたいですし・・・。そもそもルドラさまが魔道具で結界を張って守っている以上、滅多なことはないのでは?と言うか・・・その、そのために結界を張る魔道具まで開発しているとは思いませんでした」
「ニシャが俺の知らないところでいじめにでもあっていたらどうする!」
「それは・・・っ!その、放ってはおけませんが・・・でも、ディクーシャちゃんのことは信頼していますし・・・その、周りの魔法爵家ゆかりの子女の子たちはみんないい子そうでしたよ」
「もちろんだ。彼ら彼女らにもニシャ防衛計画についてはしっかりと話してある」
「・・・いや、魔法爵家の子たちまで巻き込んで何やってんですか」
「これも魔法の訓練、研究の一環だ!そしてこの魔道具も結界の魔道具も・・・全てはこの国の未来のために役立つ!いや・・・主に応用して世に出すのは魔法師団員に任せるが」
「またラーヒズヤさんから小言を言われますよ」
「俺はこの魔道具でニシャをスト・・・見守るので忙しい!」
「・・・ルドラさまがこんなこと言ってますけど・・・いいんですか?ハリカさん」
アンシュは同じ部屋で研究の資料をまとめているハリカに声をかける。
「うん~、そこら辺は私の分野じゃないからいいよぉ~!他の団員さ!」
「ハリカさんまで・・・」
「もぅ・・・みなさんったら・・・」
アンシュと一緒に、クリシュナも溜息をつく。
「何だ、クリシュナ。ディクーシャの学園生活が気にならないのか?」
「えっ」
「ほら、ディクーシャだぞ」
「あ・・・っ」
ディクーシャの生き生きした様子を見て、クリシュナの頬が赤らむ。わかりやすいな。ははは。
「物も使いようじゃない?あ、いっけない!次講義だ!クリシュナ、助手お願いねっ!」
「はい、ハリカさん」
クリシュナは必要な道具を持ち、ハリカと最終確認を行う。
「それじゃぁ、何かあったら知らせてね!イシャンくんのこと、よろしく!」
そう言ってハリカとクリシュナは教鞭をとりに出かけた。
そして俺とアンシュは部屋の隅っこでうずくまる青年を見やる。
「いやだ・・・いやだ・・・ひとがいっぱい・・・うわあああぁぁぁんっっ!!!クリシュナくんが・・・クリシュナくんが男だったなんてぇ・・・っ!!!」
余程ショックが大きかったらしい。イシャンは今日も安定の錯乱っぷりであった。
まぁ・・・解説が後回しになったが、今俺たちがいる場所は学園の講師たちが主に使っている研究棟である。その中のハリカの研究室である。ここにいる魔法の講師は魔法師団から派遣されており、ここで研究活動を行いながら教鞭をとっている。
魔法師団の中でも研究のみ行う施設もあり、そこら辺は師団員によるが・・・。
学園で主に学ぶのは魔法である。学生によっては武術の講義などを受けるものもいる。更に貴族の子女が多く通うとあってマナー講習なども充実している。
俺とクリシュナも15歳と言うことで、本来ならば学園で学ぶ必要があるのだが・・・。
クリシュナは最年少で魔法師団員になっており、俺も魔法爵たちの中のトップ・魔法侯爵である。その俺に魔法を教える・・・のはさすがに“ナイ”と言うのが魔法師団の見解で。
ただ貴族である以上は学園に通わねばならぬため、学園で研究活動をすると言う名目で通っているのだ。ニシャと四六時中一緒にいられないのは心配ではあるが、俺が開発した魔道具の成果でニシャの行動をずっとこうして見ていられるのでまぁ、悪くはない提案だったな。
因みにクリシュナに関しても、魔力が膨大な彼に魔法の実技を受けさせた場合にもしものことがあってはならない、また、クリシュナは立派に魔動師団員として研究活動をしていることから、講義を受ける側ではなく研究者側に配属された。
なので、ハリカの助手としてここで研究したり、講義のアシストをしたりしている。
ついでに、イシャンも貴族令息なので学園に通う必要がある。ただ、特殊な事情を持つため当分はハリカの研究室で自習と言う特別な待遇を取ってもらっている。何故ハリカの研究室かと言えば、ここが一番安全だからである。
イシャンの大公令息と言う立場を利用されたり、言い寄ったりされては大変だし、またこの研究室には俺も、ハリカもいる。そのような目的で来るものも阻止できる。何よりハリカはイシャンの母であるアデラさんを“先生”として慕っている。アデラさんは魔法の先生ではないのだが・・・そんな恩師の令息だからと自分の研究室で預かると申し出たらしい。
因みにアールシュには屋敷の方を任せているので、ここで俺の助手を務めるのはアンシュの役割なので、アンシュも一緒に来ているのだ。
「彼・・・大丈夫なんでしょうか」
と、アンシュ。
「ま、暫くは温かく見守ってやったらどうかな?」
「面倒くさいだけでは?」
アンシュの怪訝な視線が突き刺さる。
「いや、俺はニシャを見るのに忙しい」
「全くもう・・・」
そう言いつつも、アンシュもニシャの姿を目で追っていた。