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隻狼の秘密


その日、ダイニングへ向かうとニシャがきょとんとしていた。


「わ・・・わふたん・・・?」


「あぁ、わふたんだ」


「ルドラさまは、わふたんだったのですか?」


「わふたんは・・・嫌いか?」


「だ、大好きです!」


なら、良かった。


「いや、ちゃんと説明しとけ!」

と、外野からラーヒズヤの声が響いた。


海の街での定番・サーモンサンドを食べながら、一応初めてのニシャとアンシュのために説明をしようか。


「ウチの魔法侯爵家にはシルヴィーの血が入っているんだ」


「そうそう。遠い昔にね。私はその先祖なのだよ」

一緒にサーモンサンドを食べているシルヴィーが微笑む。

シルヴィーは神狼しんろうと崇められる精霊のような存在で、この地の守り神である。

今は中性的なひとの姿を取っているが本性は銀色の大きなふわもふわふたんである。


「その影響で、血の濃いウチのものには、度々わふたんお耳やしっぽが生えるものが生まれる。大体は満月の日にこうなる」

何だか狼男の習性みたいだが・・・あくまでもケモ耳しっぽ状態になるだけである。


「きょうのにーにわふたん!」

「わふたん、おそろい!」

ちびっ子狼のシエルとソラも大興奮。この日ばかりは俺の久々のふわもふわふたんしっぽに飛びつく。朝食が終われば早速そのわふたんしっぽに群がる。


「あ・・・あの・・・」


「どうした、ニシャ」


「触っても・・・いいのですか?」

頬を赤らめながら告げてくるニシャ。


「あぁ、ニシャならどこでも構わない。ケモ耳しっぽ以外もいいぞ。どこがいい?」


「ふぇっ!?」

驚いているニシャもかわいいな。


「んもぅ、ルドラくん?ニシャちゃんをからかったら脇腹の下触っちゃうぞ~~~っ」


「やめろっ!ハリカ!」

何故か前世から俺はそこが弱いんだからぁっ!


「・・・からかう・・・冗談・・・なのですか・・・」

ニシャがしゅーんとしてしまう。


「いや、耳としっぽは触っていいぞ」


「・・・っ!」

その言葉にニシャが顔を輝かせる。


「ねーねもわふわふ」

「こっちでわふわふ」

双子のちびっ子狼たちに呼ばれ、ニシャが恐る恐る俺のわふわふしっぽに手を伸ばす。


ふぁさっ


「・・・っ!」


「どうだ?俺の毛並みは」


「だ・・・大好きです!」


ぐはっ!!


「待て待て、ルドラ。聞いていたか?大好きなのはルドラのしっぽの毛並みの話だ」

と、ラーヒズヤ。いいだろう!しっぽだって俺の一部なんだから!!


「あの・・・ルドラさまの・・・隻狼の魔法侯爵さまという二つ名は・・・この、わふたんモードがあるから・・・なのですか?」

わふたんモードか・・・。いいな、そのネーミング。


「それもある」


「では・・・」


「単にわふたん大好きだからよ」

「んだな」

使い魔のわふたん、シロナとクロ夫妻から声がかかる。


「わ、悪いかっ!」


「あら、いいと思うわ。いい趣味してるわね」

「ん」

・・・っ!そ、そんな褒められると照れる・・・。やっぱり姉ちゃんだ!前世の姉ちゃん感すごい!姉ちゃんがたまに褒めてくれる時の弟の高揚感を感じる・・・!


「あの、ルドラさま」


「どうした?ニシャ」


「お耳・・・」


「あぁ、いいぞ」


「はい・・・っ!」

再び目を輝かせたニシャが俺のわふたんお耳をふにふにしてくる。

わふたんモードもなかなかにいいものだな。ふふふ。


「食べるものは変わったりするのですか?」


「いいや。そう言えば・・・ニシャは他に食べたいものはあったか?もしあったら・・・」


「串カツ!」

と、元気に手を挙げたのは・・・


「ディクーシャ!?いつの間に・・・てか、ニシャに聞いたんだぞ!」

そこにはディクーシャとクリシュナがいつものようにおり・・・


「いいじゃない。ニシャちゃんにたくさんおいしいもの食べてほしいんだもの。串カツもおいしいのよ?」

まぁ、貴族はあまり食べないであろう、串カツだが・・・。だが、一度その魅力を知ってしまえば抗えない。最近はルードハーネ公爵もディクーシャとその姉・リディの串カツ好きに触発されて、とうとう自らも目覚めたらしいし。街への視察の際には必ず串カツを注文するらしい。


早速とばかりに串カツとソースを用意。揚げたての串カツをディクーシャと一緒にニシャもおいしそうに口にしていた。

うん・・・何だか俺もわふたんモードの時は肉がおいしいな。


「にに、おかわり」


「あぁ、いいぞ」

もちろんちびっ子狼たちに串は危ないので、箸で丁寧に細かくしてやりあ~んしてやる。


「そう言えば・・・ルドラ」


「何だ、ラーヒズヤ」


「一応言っておくが・・・学園、忘れてないよな」


「せっかく忘れて思いっきりニシャとのバカンスを楽しむつもりだったのに」


「ルドラったら!私もニシャちゃんも楽しみにしてるんだから、忘れないの!」

最後にディクーシャからぴしゃりと言われ・・・まぁ、仕方がないかと溜息をつく。そう言えば・・・ヒロインもメイン攻略対象も、カシス公爵家も断罪してしまったから・・・あれ、てことは前世のゲームのシナリオとかイベントも、何も関係なくなったのでは・・・?とふと思った俺だった。


ゲーム開始時期の前に、全て片付けていたな・・・。まぁ、かわいいニシャの学生姿が見られるのならいいか。


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