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【完結】隻狼の魔法侯爵の俺と悪役令嬢なはずの彼女  作者: 夕凪 瓊紗.com
第3章 シュヴァルツ魔法侯爵領
33/48

アニク・カシス

※断イベのため最後に処刑シーンあり※

※予約投稿日が間違っており、更新遅れました<(_ _)>※



―――王都


全く・・・せっかくの休暇だと言うのに次から次へと厄介ごとは舞い込む。あの元第1王子とダーシャ・カシスが処刑されてほどなくして、陛下は部下を率いてカシス公爵領を制圧した。謀反を企んだダーシャ・カシスの一族として。


また、彼らが長年にわたって行ってきた行為も彼らの処刑要因となった。カシス公爵については国王陛下も先王のしでかした失態により公爵に貸しがあったものの、例え先王の不貞行為がカシス公爵とその隠された妹に多大なる屈辱と傷を負わせたとしても彼の罪は重いと見えた。公爵家の内情を家長として統制する立場にありながら妻と次女の長女・ニシャとアンシュへの冷遇、そして非道な仕打ちを放任し、妹のみを守り、アンシュが虐げられることを黙認した。例えおおやけにはできないとしても、国王陛下は最後には先王が犯した失態の貸しよりも、自らの異母弟・アンシュを取ったのだ。


国王陛下の断罪に、公爵は抵抗しなかったと言う。そしてその断罪を受け入れ謀反を企んだ罪人の一族の当主としての人生に幕を下ろした。それに対して最期まで抵抗したのが公爵夫人だったと言う。自分は何ら間違ったことをしておらず、国に忠誠を誓ってきたと豪語したが・・・領民の血税を湯水のように貪り、財産を根こそぎ没収され、公爵により領地に連れ帰られた後もその浪費癖は治らず家の金を勝手に使い多額の借金を抱えたのだとか。いたずらに領民の血税を貪り、国の第1王子をそそのかして謀反を企んだ次女の教育を怠った罪は重く、それは次女の王子妃教育に対する不真面目な態度や国庫を貪ろうとする態度からも明らかだとして同時に処刑された。なお、お家は取り潰し、ニシャやアンシュを虐げた使用人たちへの調査も全て終えており、酷いものは処刑、良くても終身刑を言い渡された。


そして・・・


「さて、アニク・カシス元公爵令息」

俺が目の前で手錠をはめられて座らされている少年に目を向ける。ピンクブラウンの髪に、エメラルドグリーンの瞳は、かのダーシャ・カシスにそっくりだが、その顔立ちはダーシャ・カシスに比べてきりっとしており、吊り目がちで強気な印象を受ける少年だ。


「此度の陛下への謀反について・・・」


「え、冤罪だ!」


ガタンっと、取調室のテーブルを叩いてアニク・カシスが立ち上がる。


「脚を切り落とされたくなければ座るんだな」

そう、冷たく言い放ったのは騎士団長だ。他にもこの部屋には、ラーヒズヤ、そして陛下がいる。その中で俺が代表してコイツの前に腰掛け向かい合っているのだ。


「んな・・・っ!」


「まず、お前はアンシュに数々の不当な扱いをした。本人の意に反して、彼が庇護していたニシャから引き剥がしてダーシャ・カシスの下僕のように仕えさせた。そうだな?」


「んな・・・っ!?あの女は悪役令嬢だ!」


「まぁ、その話については俺も頭に来ているものでな・・・この後で話をしようか。それで、お前は何故、アンシュにそのような扱いをさせた」


「んな・・・アンシュは・・・アンシュはダーシャの運命の相手だからだ!」


「この国の元第1王子の婚約者のダーシャ・カシスのか・・・?妙な話だな」


「だが・・・だが、この世界はそう言うふうにできているんだ!ダーシャは・・・ダーシャは聖女になって、この世界を魔王から救う!そして愛を育むんだ!」


「ふん・・・愛・・・ねぇ・・・?ただの尻軽じゃないか」


「何だと!?」


「お前は、この世界をゲームか何かだと勘違いしているんじゃないか?あぁ・・・確かタイトルは・・・“君と育む愛の魔法”だったか?何かこっぱずかしいタイトルだが、ニシャがかわいかったのは覚えている」


「お前・・・何故それを」

俺が前世でプレイしたゲームのタイトルを述べれば、アニク・カシスは驚愕の表情を浮かべる。


「お前も・・・お前も転生者なのか?」


「あぁ・・・“お前も”と言うことは貴様も転生者だな」


「なら・・・ならばわかるはずだ!ダーシャはヒロインだ!この世界で最も愛され、聖女となる少女だ!わかるだろう!?」


「はぁ・・・?わかるかそんなもん」


「何で・・・」


「何でもこうしても、この世界がゲームではないからだ。俺たちはゲームの駒でもモブでもない。俺はモブですらない。だがこの世界で生きている。それが一番の証拠だ。ゲームには出てこなかった、陛下の弟の騎士団長、そして魔法師団長、また、陛下もな。だが間違いなくみんなこの世界で、自分の人生を歩んでいる。お前がゲームのシナリオ通りにアンシュをダーシャのものにしようとしたが、アンシュにはアンシュの人生があるし感情もある。アンシュが何より守りたく、大切に想っていたのはアイツを兄と慕うニシャだ」


「そんな・・・あの男は、どうやっても、どう調教してもダーシャに惚れなかった!ダーシャの言うことは聞いてもダーシャのものにならなかった!あの悪役令嬢ばかりを気にして、守った!何で・・・何でだよ・・・!」


「いい加減にしろ!」

そこで声を荒げたのは陛下だった。


「そんな理由で、俺の弟を長年虐げたのか!この件は、先代の愚王がしでかした失態から、俺がカシス公爵の元にアンシュ母子おやこを還したことも要因のひとつだ。そのせいでアンシュは公爵からも、お前らからも虐げられた!言っておくがな・・・会って言葉を交わしたのはついこの間だが、ドゥルーヴが同じ目に遭っていたとしたら、俺は同じように怒る。何故だかわかるか!」

ドゥルーヴと言うのは、陛下の弟で騎士団長の名前である。


「・・・知らない・・・何で!アンシュはヒロインのダーシャのものになれば幸せになれたんだ!」


「お前がそんな身勝手なことを押し付けたから、アイツは悲しみ、苦しんでいたんだ!弟がそんな目に遭っているのに、怒らない兄がどこにいる!」


「・・・ひっ」

幾多の戦場を駆けてきたレーヴェ王国の獅子の迫力に、アニク・カシスは本気でビビっている。


「んで・・・?もうひとつ聞くが・・・お前は俺のニシャをどうして虐げた」


「んな・・・そんなの、悪役令嬢だからに決まっている!」


「ニシャは何一つ悪いことなどしていない」


「そんなわけないだろう!アイツは将来ダーシャを虐める!原作のように王子の婚約者にはならなかったけど、それでもダーシャに嫉妬してダーシャを傷つけるんだ!だから幼い頃からダーシャを守るためにあの悪役令嬢を攻略する必要があったんだ!」


「バカか!」


「何で・・・!レヤンシュがダーシャに一目惚れして結ばれたことが、ダーシャがこの世界に愛される何よりもの証拠だろう!?そのダーシャを虐める女を、何故虐げちゃいけないんだ!あの女は生まれながらに断罪されるべきなんだ!ダーシャを傷つけるあの女を!」


「なら・・・実際に、ニシャがダーシャ・カシスを傷つけたのか?」


「これから傷つけるんだ!」


「つまりは、ニシャが何もしていないのに・・・お前は前世のゲームの通りにニシャが育つと勝手に思い込み、傷つけ迫害したわけだ」


「そうだ!フラグはすぐに潰さなきゃ、ダーシャが幸せになれない!」


「ふざけるな。フラグを潰す?確かにフラグが立っていれば叩き折るのも手だが・・・元々立っていないフラグを潰すと言い張り、何の罪もないニシャを虐げることがまかり通ると思うなよ・・・?この世界はゲームじゃない。そんな似通っているだけのシナリオに沿って幸せになる・・・?お前のやったことで結果はどうなった?ダーシャ・カシスは反逆罪で首を落とされた。ダーシャ・カシスは幸せになれたのか?」


「そ・・・それは・・・それはお前たちが悪いんだ!ヒロインのダーシャを・・・ダーシャを殺すなんて・・・魔王が復活したら、この世界は滅ぶぞ!お前たちの愚かな行いのせいで!」


「そんな心配はない」


「何故、そう言い切れる」


「この国には大魔王がいるからな。魔王は大魔王の忠実な部下だ。大魔王が陛下に忠誠を誓う限り、この世界は平穏だ。むしろ、お前が望む世界になった方が、大魔王は世界を本気で滅ぼすだろうさ」


「んな・・・どう言うことだ・・・?そんな話・・・ぼくは知らない・・・!大体、大魔王って何だ!そんなもの、いるわけないだろう!?」


「いるさ、目の前に」


「え・・・」


「名乗るのが遅れたな。俺は、“ニシャは俺の嫁!わふたん大魔王魔法侯爵”ルドラ・シュヴァルツだ。よろしくな」


「いや、お前・・・隻狼の魔法侯爵はどこ行った」

と、ラーヒズヤ。

今の俺は大魔王の方だからな、こちらの渡り名を名乗ることにしたまでだ。


「は・・・お前が・・・?ゲームにも登場しないモブ・・・いや、モブ以下が!?」


「そうだ。お前はゲームにも登場しないモブ以下の・・・真にこの世界に生きる者たちによって処刑される」


「しょ・・・処刑だなんて・・・そんなバッドエンド知らない!ぼくは・・・ぼくはダーシャのためにダーシャを支える役割で・・・っ!」


「残念だが、この世界はゲームじゃない。現実だ。お前の人生はここで終わるんだ。残念だったな」


「え・・・そん、な・・・そんな、ばかなっ!」


「お前は、公爵家を裏から操って、ダーシャ・カシスと第1王子に謀反を企てさせ実行させた。更には王弟と未来の魔法侯爵夫人を虐げた一番の大罪人だ。明朝、お前は公開処刑される。逃れることは許さない」


「そん・・・な、公開処刑・・・?ぼくが・・・死ぬのは嫌だ!助けて!ぼくは・・・ぼくはヒロインの弟なんだ!重要なキャラなんだ!」


「知るかっ!もう少し現実を見て、自分のやったことを考えろ!一応、最期の晩餐は用意してやった」

俺はアニク・カシスの前に、マジックボックスからとあるものを取り出した。


「これ・・・」


「かつ丼とみそ汁。こういう時にはこうって、決まってるだろ?」


「何で・・・」


「お前のせいでニシャはたくさん傷ついた。だが、ニシャが悪役令嬢にならなかったのはお前がニシャを虐げた結果かもしれん。腹が立って仕方がないがな・・・。だから、これはその礼だ。せいぜい味わって食べろ」


「・・・」


「さて、俺はもう聞きたいことは聞き終えた。他、ある?」


「いや、特にはないよ」

「俺もな、一発お見舞いしてやりたいが」

「おいおい・・・」

陛下、騎士団長、魔法師団長・ラーヒズヤがそれぞれ述べる。


そして、見張りの騎士を置いて俺たちは退室した。その後、アニク・カシスは静かに俺が出したかつ丼とみそ汁を食べ終え・・・その翌日早朝に彼と、カシス公爵家、元第1王子の罪が明るみになり、更に先王の庶子、陛下の異母弟であるアンシュの存在が明かされた。


なお、アンシュに関しては既に魔法侯爵家の養子に入り、臣下に下っているため王位継承権はないものとされた。


そして、アニク・カシスが断頭台に上がり、陛下自らアニク・カシスを公開処刑した。


―――その後、第2王子の立太子が正式に宣言された。


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