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【完結】隻狼の魔法侯爵の俺と悪役令嬢なはずの彼女  作者: 夕凪 瓊紗.com
第3章 シュヴァルツ魔法侯爵領
32/48

断罪の行方

※長めです※

※後半処刑シーン入ります。苦手な方はご注意くださいまし※


俺たちの元に現われたのは、黒髪に青い瞳を持つ男性と、ミルクブラウンのセミロングの髪に、ダークグレーの瞳を持つ女性だった。


その姿にさすがのバカ王子とダーシャも唖然としている。

臣下の礼をとる公爵の前を通り、そして牢屋に閉じ込められたふたりの前に立つ。


「レヤンシュ・・・そしてその婚約者、ダーシャ・カシス」


「ち・・・父上、母上・・・!た、助けに来てくれたのですか?」

バカ王子は汗をだらだらと垂らしながらも、目の前の彼の両親・・・陛下と王妃さまにそう問うた。いや、よくそんなことが問えたものだな・・・。やっぱり解剖・・・してみる価値はあるかもしれない。


「騙されちゃだめよ、レヤンシュ!」

しかしそこでダーシャがレヤンシュの両肩を掴む。


「私、知ってるんだから!その女は私に礼儀作法やら王妃教育やら言って、1日何時間も私を王城に閉じ込めるの!お茶会にも夜会にも行けない・・・レヤンシュとのお茶の時間も許してくれない!遊びに行く時間もお金もくれないのよ!?将来の王妃である私に、ドレスや宝石も買うお金をくれないの!やっぱり悪女よ!そしてあの国王もあなたを一緒に冷遇して虐める悪逆王なのよ!!」


「ふぅん・・・言ってくれるな。小娘が」

陛下の顔がマジですごんでいる。あんなのあれじゃないか?魔法爵の古参じぃやおっさんどもが言ってたな。レーヴェの若獅子と呼ばれた王太子殿下時代の陛下はそれはもうすごかったって。その迫力の何のとすごい聞かされたっけ。多分、あぁいうのを言うんじゃないか?


「どうだ、スフィア」

陛下は隣に立つ王妃さまを見る。すると王妃さまが静かに口を開いた。


「ダーシャ・カシス公爵令嬢は、必要な礼儀作法のひとつも知りません。それを身につけさせるために講師を呼んでも嫌だ嫌だと泣きわめき、王妃になるにあたり必要な勉学も講師に暴力を振るいわめいて暴れるため、安全のために近衛騎士に拘束させ謹慎させることが何度もあり、更には城にすら顔を出さなくなりました。更に驚くべきことに、自身の社交界用のドレスや宝石を国費で賄うよう彼女が要求してきた時は驚きました。無論全て断り、王子妃教育を真面目に受けるよう説得しましたが泣いて暴れて手に負えず、やむなく公爵家に帰るように言っても聞く耳を持たずに暴れたため、留置場に隔離する他ありませんでした。その後は公爵家から迎えの馬車が来たため引き取っていただきましたが」

想像していたよりもかなりひどいな・・・よくもまぁ、あの優しくて聡明な王妃さま相手にそこまでやるわ。


「そうか・・・その上お前たちは俺とスフィアを“悪逆”だと言い張り、自らを将来の王妃と王だと語るか」


「そうよ!私は王妃になるの!そしてレヤンシュは王になるのよ!」


「そうか、わかった」


「・・・っ!」

その陛下の言葉に、ダーシャはぱあぁぁっと顔を輝かせる。しかしながら、陛下がふたりに向ける憤怒の表情にさすがにバカ王子・レヤンシュもまずいと気が付き慌ててダーシャに詰め寄る。


「ま・・・待て!ダーシャ!今のは取り消せ!謝るんだ!」


「何でよ!このふたりは長年レヤンシュと・・・未来の王妃の私を虐げたのよ!?」


「此度のルードハーネ公爵への無礼の件、シュヴァルツ魔法侯爵領への不法侵入・・・再教育か廃嫡か・・・考えあぐねていたところだ」


「んな・・・廃嫡!?」

その言葉にさすがにバカ王子・レヤンシュが口ごもる。


「お・・・お願いします!廃嫡だけは・・・!その、ダーシャとは別れます!婚約破棄しますから!ぼくはダーシャが考えているようなことに賛同した覚えはありません!」


「レヤンシュ!?何を言って・・・あなたは私と結ばれて王になる・・・」


「黙っていろ!」

取り乱したようにレヤンシュに詰め寄るダーシャをレヤンシュが一喝すると、これ見よがしにダーシャが泣きまねをし出す。


「うぅ・・・っ!うえぇ~んっっ!レヤンシュ、どぉして私を怒鳴るのぉ?あの悪逆王と悪女王妃に操られてるのねぇっ!私の光魔法で今、治してあげるからぁっ!」


「五月蠅い黙れ!」


ガシャンッッ!


レヤンシュがダーシャを思いっきり牢屋の鉄柵に叩きつけた。


「ひぎゃっ!い・・・痛い・・・痛いよぉ・・・」

それでもぐずるダーシャをレヤンシュは無視し、再び陛下に向き直る。


「ち、父上!お願いです!」


「お前・・・俺と約束したことを忘れたか?」


「え・・・?」


「お前は、俺たちが決めた婚約者のニシャちゃんをほったらかして、別の令嬢・・・そこのダーシャ・カシスにその場で婚約を申し出たんだぞ!」


「父上も認めてくれたじゃないですか!それに、ダーシャとニシャは姉妹です!どちらと婚約しようと同じです!」


「どこがだ!その証拠に、王子妃教育もまともに受けずに俺のスフィアを苦しめるわ、ニシャちゃんはそのダーシャ・カシスに実家で酷く冷遇され続けた!さらには王位を狙っていると今、この場で、王である俺を前に宣言したんだぞ!」


「ひ・・・っ!そ・・・それなら・・・それならニシャと婚約します!なら、父上と母上の望み通りになりますよね!」

キラッキラした顔でいいことを閃いたと言うように豪語するレヤンシュに、さすがにカチンと来た。


「ふざけるなよ・・・クソがっ!誰が貴様にニシャをやるかっ!」

俺は氷で剣を生成し、クソ王子にずいずいと歩み寄る。


「まぁ、待て。ルドラ。元より俺はそんなことは許さないし・・・最期は俺がカタをつける」


「なら、トドメは陛下に。婚約者であるニシャを傷つけられた俺に罰を与える許可をください」


「・・・いいだろう」


「はっ!?」

レヤンシュは訳が変わらないと目を見開く。


ぶしゅっ


ばしゅっ


血しぶきが飛んだ。


『ぎゃあああぁぁぁぁぁ――――――っっ!!!』

哀れな男女の悲鳴が轟いた。


「う・・・うでが・・・ぼくの腕が・・・」

「い~~~だい、いだい~~~っっ!!!」

片腕を氷の剣で落とされ、泣いてもがくふたり。ふん、今度は本物の涙が出ているらしいな。


「すぐには死にません。最期は陛下にお任せしましょう。あと、わふたんが嫌がるので処刑はルードハーネ公爵領でやってください」

俺は氷の剣を砕き消滅させ、陛下に臣下の礼をとる。因みに、牢屋の中で飛び散った血は外に流れ出ないようにしてある。


「・・・お前な・・・」

呆れたように陛下が俺を見やるが・・・


「ウチは本望です。この地で仇敵をほふれるのならば」

公爵はノリノリなようなので、陛下も溜息をついて頷いた。


「まぁ、いい。レヤンシュ」


「あああああ・・・あああああ・・・父上・・・だ、だずげで・・・」


「俺は言ったな・・・ダーシャ・カシスとの婚約破棄・解消いかなるものも認めないし、そのようなことを言い出した時点で廃嫡の上、平民送りだと。その場合でも、お前はダーシャ・カシスと結婚するしかない。他の令嬢との結婚は認めないと」


「ぞ・・・ぞんな・・・っ」

そんなことは聞いていないとばかりに、レヤンシュは首を振るが・・・


「俺はできることならそうしてやりたかった・・・俺も親だし、そんなお前に育ててしまった責任もある。だからせめて、最期は俺の手でケリをつける」


「な・・・何・・・を?」


「来い」

陛下が合図すると、近衛騎士たちがぞろぞろと集まってくる。陛下も転移魔法を使えるし、ここにはもちろん来たことがあるので、好きな時に騎士を伴ってくることも可能だ。


騎士たちが集まってきたので、俺は牢屋をルードハーネ公爵領側に移動させ、そのカギを開ける。するとすかさず片腕を落とされたふたりがルードハーネ公爵領側に引きずりだされ、床に押さえつけられる。


「い・・・いやあぁぁぁぁっっ!!!放して・・・っ!放してえええぇぇっっ!!!私は王太子妃になるの!王妃になるのよおおぉぉぉぉっっ!!!」


最期までわめき散らすダーシャを陛下は冷たい目で見据え、剣の切っ先を向ける。


「貴様がニシャ・シュヴァルツ、そして我が弟にした所業については全て裏が付いた」


「は・・・?おとうと・・・?きし、だんちょ?しらない・・・私、知らない・・・」

あれ・・・この裏ネタ知らないの・・・?アンシュには執着していたのに、隠し攻略対象ルートに隠された秘密の暴露イベントを知らないのか?


「そう言えば、そっちの弟の息子にも、心に癒えない傷を負わせたのだったな」


「は・・・?そっちの弟・・・?何の・・・話・・・?」


「さらには俺とスフィアの首を狙った・・・もはや見過ごせない。最期はこの俺自ら処刑してやる」


「しょ・・・しょけ・・・っ!?何で!?どぉして!?私、首なんて狙ってないよぉっ!」

いや・・・自分が言ったことの意味がわかっていなかったのか・・・?


それでもダーシャは処刑を逃れようと、生き残るための理由を必死に探すため周囲を見回す。

そしてある一点に釘付けになった。


「ま・・・魔王!あれは魔王よ!魔王になるの!その魔王を倒せるのは私だけなの!だから私を殺したら後悔するわよ!今なら許してあげる!だから殺さないでえええぇぇぇっっ!!!」

魔王・・・あぁ・・・魔族角を持つアールシュのことか。確かにアールシュは原作ゲームでは魔王になるけどな。でも・・・


「そんなことは知っている」


「は・・・?」

陛下の言葉にダーシャがぽかんとして陛下を見上げる。


「だが問題ない。あの魔王の手綱を握っている大魔王は、俺の忠臣だからな」


「は・・・?大魔王って・・・何・・・?」

ダーシャは意味が分からないという表情で陛下を見上げるが・・・


「お任せください、我が君」

そう、俺が臣下の礼を取ればさすがにお花畑脳でもわかったのか、ダーシャがわなわなと震え出す。


「あ・・・アンタが・・・大魔王・・・!?そんな・・・そんなの知らない!アニクはそんなの教えてくれなかった!アニクはそんなこと言ってなかったのよおおぉぉぉっっ!!!」

アニク・・・確かダーシャの双子の弟・・・。

そうか・・・何となくわかった気がする・・・


「何の話だ?」

陛下が俺を見やる。


「大丈夫ですよ。“アニク”がそんなことを言っていなかった・・・と言うことは、この女はこれ以上何も知らないのでしょう。全ては“アニク”が知っています。この女を生かす意味はありません」


「な・・・っ!」

自ら墓穴を掘ったことを悟ったダーシャは絶望の表情を浮かべる。そして・・・


ガッ


鈍い音がして、ころころとそれが地面に転がった・・・


それを恐怖の表情で見ていたレヤンシュは、父王が自らの顔の前に立ったことで更に表情を硬くした。


「ち・・・父上・・・ゆ、ゆる・・・ゆるして・・・っ!」


「更生の機会は散々与えたはずだがな」


「そ・・・そんなこと・・・知らない!」


「そうか・・・それすらも、意味がなかったか」


「お・・・お願いです!全てダーシャが言い出したことなんです!ぼ、ぼくは何もしていない!」


「何も・・・?幼い頃のニシャちゃんを傷つけて、クリシュナを傷つけて、イシャンはお前の側近を降りた」


「それは・・・イシャンが・・・!」


「お前は、イシャンにダーシャのシェアを提案したそうだな。先ほどダーシャがルドラに要求したように・・・」


「そ・・・それもダーシャが・・・!」


「何でも他人のせいにするやつが、ひとの上に立てると思うか?」


「・・・」


「残念だ・・・この手で我が子を手にかけないといけないのは」


「なら助けてください!」

この期に及んでそれはない。


この場にいるみなの視線がわからないのか。


「聞けない願いだな」


「そんなっ!」


「最期くらい、腹を括れ!」


「ひっ!」


かつてレーヴェの若獅子と呼ばれて戦場を駆けた王の気迫に、レヤンシュは項垂うなだれる。そしてぐっと押し黙って頭を下げ・・・


どしゅっ


鈍い音と共に散った哀れなレヤンシュの最期であった。


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