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【完結】隻狼の魔法侯爵の俺と悪役令嬢なはずの彼女  作者: 夕凪 瓊紗.com
第3章 シュヴァルツ魔法侯爵領
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ディクーシャとクリシュナ



―――シュヴァルツ魔法侯爵領領主邸


「実は・・・今日の昼すぎに先触れが来たのよ。しかも唐突に今日の夜には着くから出迎えの準備をしろですって!あの温厚なおじさまが激怒してたわよ」

ディクーシャの言う“おじさま”とはルードハーネ公爵閣下のことである。まぁ、婚姻したらいずれは義父となるのだが、今は“おじさま”と呼んでいる。


「だからとにかくクリシュナを避難させないと・・・ってことで荷物を大急ぎでまとめてこっちにきたのよ。幸い、午前中にアールシュが新人の執事さんを連れてルードハーネ公爵家に挨拶に来てくれたから、ちょうど現在、魔法侯爵大魔王自身がここに滞在していることはわかっていたもの。何せクリシュナが身を隠せそうなところで一番安全な場所が徒歩5分の場所にあったのよ?」


「まぁ、それは英断だな」

お隣さんとは言え、ここはウチのシュヴァルツ魔法侯爵領なのだ。それも、当主である俺がここに滞在中・・・となればすぐに魔法侯爵である俺自身に許可を取ることができるし、庇護を受けられる。元々、魔法爵たちを取りまとめトップに立つ身の上だ。彼ら彼女の身に危険が迫った時は真っ先に頼ってもらう立場なのだから。


・・・しかし・・・遂に魔法侯爵そのものに“大魔王”がつくようになるとは。

因みに、魔法爵連中の間では俺=大魔王認定にめっちゃフィーバーしまくっている。

魔法師団長のラーヒズヤからしてみれば、涙目ものらしいが。

大魔王がこの国の魔法のトップに立つのだ。これほど頼りになる人選はいないだろうに。むしろ泣いて喜べと思う。


しかしながら、一番危険なクリシュナをディクーシャと一緒に避難させたとは言え、ディクーシャはまだ心配でならないらしい。


「本当は姉さまのことも心配だわ。でも、カビーア義兄さまが守ってくださるから大丈夫と信じて、断腸の思いでここに来たの」

まぁ・・・シスコンと言うか、過保護なんだよな。この姉妹の場合・・・特に妹のディクーシャが。


「あぁ・・・多分お父さまなら大丈夫だとは思うけど・・・心配で・・・」

クリシュナが目を潤ませる。そう言えば、ゲームにもこんなかわいいクリシュナのシーンがあったよな。まるで女の子のようなかわいさだとネット上で随分と話題に上ったのを覚えている。

尤も、ゲームの中のクリシュナと父親との仲は険悪だから、父親に対して目を潤ませることはなかったが。


「だいたい、何の目的でルードハーネ公爵家にくるんだ?」


「う~ん・・・カビーア義兄さま曰く、故公爵夫人さまと王妃さまが異母姉妹だから、そのつながりで何かを頼みに来たんじゃないかって」


「ふぅん・・・母親の縁をつたってねぇ?」


「ルドラが話してくれたあの王妃さまが許可したとは思えないけどね」


「ふん、十中八九独断だろう?さすがに王妃殿下がそれを知ったら、義理の兄に何をしてくれたと激怒するだろう。故公爵夫人は王妃殿下の・・・異母とは言え大切な妹だからな。更にあの爬虫類女が一緒となると・・・」


「援助・・・でしょうか・・・」

戸惑いがちにクリシュナが告げる。


「あり得るな・・・同じ公爵家と言う家格。落ちぶれて貧乏になったカシス公爵家。それを婚約者のバカ王子の伝手を辿って援助を申し込みに来た・・・そう考えてもおかしくはない」


「バカバカしいわね。てか、おじさまはもうとっくに第2王子殿下派よ。今更バカ王子が来たところで手を貸すはずがないじゃない?」

ぴしゃりとディクーシャが言い切る。母親の縁だけ辿って援助を申し込みに行ったはいいが、自身の派閥すらも把握していないとは嘆かわしい。むしろ全ての国の臣下が自分に味方するとでも思っているのだろうか、あのお花畑バカ王子。

今の臣下たちは国王陛下には忠誠を誓っている。特に魔法爵たちはだ。だがあのバカ王子につくかとなると・・・なぁ?


更にあの爬虫類女に関しては王妃殿下もほとほと手を焼いているそうだ。国王陛下も内心諦めていそうだし。そして何か決定打があれば・・・国王陛下はバカ王子を切り捨てるだろう・・・。そして第2王子を王太子に指名する・・・。

今までの所行を思い返せば無理もない・・・。


ゲームの中では第1王子は学園入学と同時に王太子に指名され、ヒロインはゲームエンディングにて王太子妃になる。だが、現実はそうそううまくはいかない。

陛下は未だに王太子を指名していない。それは第2王子が王太子となる地盤を確実に固めるため・・・。


それも分からずあのバカ王子は自分が自動的に王太子になると本気で思っているのだから笑えてくるだろう?まぁ、陛下もバカ王子が自らしっかりと自分を見つめ直し王子としての自覚を持つことを期待しているのかもしれないが・・・その期待すらもう持ちそうにない。


「まぁとにかく今晩は泊まっていけ。俺のニシャとその兄のアンシュもいるから、仲良くしてやってくれ」

と、ふたりに紹介すればお互いに軽く礼をする。


「本当にルドラがお嫁さんをもらったのね。まだ婚姻はしてないんでしょうけど」

ディクーシャは意外そうにも頷く。ディクーシャは幼馴染みなので俺のことはプライベートでは呼び捨てなのだ。因みに当時俺は、クリシュナが前世のゲームの攻略対象だとは気が付かなかったのである。推し・・・とかじゃなかったしな。ニシャに会うまでは特に気にすることがなかった。


「あぁ。俺はニシャを生涯放すことはない」


「る、ルドラさま・・・っ」

あぁ・・・照れたように俺の腕にくっつくニシャが尊い。


「お兄さん、ルドラは結構破天荒すぎる爆破好き魔法使いなので、気を付けてくださいね」


「はい、心得ております」

ディクーシャもディクーシャだが・・・アンシュもアンシュでにっこりと頷くな―――っ!!

やはり、いや確実に・・・ラーヒズヤやアールシュと同じ人種になりつつあるっ!!


「あの・・・ルドラさま」

そんなこんなで考えていたら、ニシャがかわいらしく俺の腕をちょんちょんしてくる。何このかわいい生物!!


「あの・・・バカ・・・王子さま・・・?と、爬虫類さんって・・・どなたのことなのですか?」


『・・・っ!!?』

その言葉に、ここにいる全員が絶句した。


「・・・その・・・バカ王子と言うのは第1王子のことだ」


「・・・っ!!」

その事実にニシャが絶句していた。

多分ニシャの中では印象最悪な王子のことだったからだろうか。それとも彼が“バカ”だった事実に関してだろうか・・・どちらかはわからないが。


「爬虫類女については・・・名をダーシャ・カシスと言う」


「・・・っ!?」

その名を聞いて、ニシャはショックと言うよりも盛大に頭の上に“???”を掲げていた。


「・・・あの子は・・・人間ではなかったのですね・・・」

愕然とするニシャ。


「あぁ・・・残念ながらな」

そして、俯きがちに現実を受け入れようとするニシャの肩に優しく手を置いて優しく慰めるように囁く。


「いや、何嘘教えてんのよ!!」

く・・・っ!やっぱり本格派ツッコミ担当令嬢がいると・・・ツッコミのキレがいつも以上に違うな・・・!



ルドラ「・・・今回の回想の中に、何か忘れていることが含まれていた気がするんだけど・・・何だったか・・・。まぁ、いいか。今夜もわふたんわっふわふだからな」

ディクーシャ「伏線放棄して寝んなやっ!!」

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