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レーヴェ王国からの使節団


さてはて、俺たちの国・・・レーヴェ王国の国王・アディティア・レーヴェ陛下を伴い、俺とアンシュは早速レーヴェ王国からの使節団に用意された部屋へと通された。使節団用とはいえ、随分とこじんまりしている。


そこで待っていたみなは、陛下の顔を見てきょとんとしていた。無理もない。今頃国にいる陛下がここにいるのだから。因みに、陛下も転移魔法は使えるがオウカ国を訪れたことがないので俺が転移魔法で連れてきたのだ。


「クロス魔法伯」

陛下がその名を呼ぶと、さすがに戻ってこない外務大臣父子のこともあり何があったのかを悟ったのか即座に臣下の礼をとる。


「ご命令をたがえたこと、申し訳ありません」


「魔法伯であるお前が俺の命令を違えるとは、よほどの事情があったのだろう。話してくれ」


「・・・娘を人質にとられました」


「んな・・・っ?!」

その言葉には俺も、陛下も、そしてアンシュも言葉を失った。


「子どもを人質にとるなんてもっての他だが・・・そもそもあの子がいなければこの外交の使節団は意味を成さないぞ」


「はい。ただ、そのことを外務大臣に告げれば娘が更なる危険にさらされる恐れがありました」

それはそうだ。オウカ国にとってとても意味のある“ジュリア”のことを話せば、きっと利用したがるに違いない・・・。


元々は、ジュリアをミンミンと面会させる予定でこの使節団の派遣を俺が打診したのだ。俺個人でお膳立てをしてやってもいいが、ユエも陛下に対しては興味も持っていたから。突然王同士が面会する・・・のはさすがに周辺国にも奇妙に思われるだろうし、この陛下だからなぁ。周辺国に妙な勘繰りを持たれても困る。だからまずは使節団を派遣してご挨拶・・・と行きたかったのだが。予定が狂ってしまった。まぁ、先に使節団には会ってもらったのだから、順序はそのままだ。


そして何をどう捉えればあのような考えになるのか・・・。

本来の使節団代表の娘・ジュリアとミンミンが面会する時間を作る件を、不当に使節団代表の座をむしり取った外務大臣と息子が“ミンミンと使節団の子女との面会を許可される”と勘違いしたと言うことか。詳しい事情を知らずともちょっと考えればわかるだろう。女の子同士で同い年。普通はよき友人付き合いとかそう言うふうに考えるだろうに。


何故そこで息子に挿げ替えられると思ったのか。意味が解らない。しかもオウカ国の貴族のボンボンまで巻き込んで・・・。


そして、オウカ国の近衛が金髪の女の子を伴ってこちらに来た。


「あの、例の偽使節団代表にあてがわれた部屋にいた男を拘束したのですが、こちらのご令嬢を保護しました」


「ジュリア!」

俺は真っ先にその名を呼び、その名にクロス魔法伯も飛びついた。


「お兄ちゃん!お父さま!」

クロス魔法伯はすかさずジュリアを抱きしめた。


「お父さま!会えた!」


「あぁ・・・ごめんな・・・すぐに助けてやれなくて・・・!」

ジュリアとクロス魔法伯の腕には魔力封じの腕輪までついている。そうか・・・ジュリアなら魔力を封じられなかったら、周りに助けを訴えられる・・・。あの元外務大臣父子がジュリアの能力のことを知らなかったとはいえ魔法伯の娘として一応は警戒していたということか。


「まずはお前たちの腕輪を外すぞ」


「はい、ルドラさま」

クロス魔法伯とジュリアが腕輪を見せてくれたので、すかさず解除、と。


「相変わらず鮮やかな手癖です」


「ふふっ、そうだろう?」

でもその言い方だと俺、悪者わるもんみたいに聞こえねぇか?


「わぁいっ!変な感じなくなったよ!お兄ちゃん!」


「そりゃぁ良かった。体調不良があったら遠慮なく言えよ?」


「うん!わかったわ!」


ジュリアの頭を撫でてやれば、いつもの花のような笑みを浮かべる。人質に取られていて心細かっただろうに。さすがはクロス魔法伯家の令嬢だな。


「私もルドラさまのように転移魔法や攻撃魔法などを使えればよかったのですが・・・」

クロス魔法伯がしゅんとしたように呟く。


「いいんだよ。クロス魔法伯のところの専門はそこじゃないだろ?気にすんな」


「はい、ありがとうございます」


「それで・・・その」

オウカ国の近衛が何やら言いよどんでいるようだ。


「どうした?」

俺の言葉にハッとして顔を上げる。


「これはレーヴェ王国の陛下に申し上げることかもしれませんが」


「構わない」

陛下がそう口にすると近衛は頷きを返し続ける。


「そのご令嬢を保護した場所にいた者はこちらで拘束しておりますが、いかがいたしましょうか」


「そいつは使節団を名乗りオウカ国王陛下をたばかった。俺はオウカ国王陛下の意思を尊重する。要らなかったらこちらに寄越してくれ。こちらで処分するから」

ユエに比べれば、こちらは普段へらへらしているものの、最後のひと言は心底底冷えするような声色で思わず近衛も顔を真っ青にしていた。


「そう、ユエに伝えてくれるか?」


「は、はい!」

その場の空気を壊すように近衛に声を掛ければ、体の硬直がかれたかのように近衛は一礼しこの場を後にした。


「それじゃぁ、陛下。ユエに会いに行きましょうか?」

俺が一応確認のため見上げれば・・・


「ん~・・・そうだなぁ」

と、先ほどまでの凍てつくような空気を微塵も感じさせないいつもの間の抜けたような返事が来た。



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