アディティア・レーヴェ
※誤字修正しました(/・ω・)/
―――オウカ国玉座の間
玉座の間にて平伏するおっさんどもが、3匹。
1匹目は俺の国の人間・・・予想はつくがあのおっさんが外務大臣だ。
更にオウカ国の伝統衣装を着ているおっさん他の2匹は恐らくこの国の貴族だろう。
「さて・・・貴様ら・・・貴様らのバカ息子どもが、やらかしたこと・・・わかっているだろうな?」
ユエの抑揚のない声が玉座の間に響く。その威圧は俺も感心するほどで、びくびくとおっさんどもが震えているのがわかる。周りにいる近衛や臣下たちまでだ。
まぁ、この状況で普通でいられるのは俺くらいか。それでもアンシュは緊張しつつも平静を保とうとしている。なかなかに骨がある。まぁ、当然か。ずっとずっとあの家でニシャを守ってきたのだものな・・・。ちょっと悔しい・・・いや、そこはひとまずいいか。
なお、ニシャはミンミンや侍女たちと一緒に別室で厳重に警護してもらっているのでこの場にはいない。
「何か弁明があるのなら、聞こうか」
その言葉に、ウチの国の外務大臣が恐る恐る口を開いた。
「お・・・恐れながら・・・今回の件は全て我が息子が独断で・・・私の目の行き届かなかったこと、誠に申し訳なく・・・」
「しかし貴様の息子は、貴様に許可をもらって我が娘の部屋に不当に侵入しようとしたそうだぞ?」
「な・・・何かの、間違いで・・・!あ・・・そ、そうです!その、使節団代表の息子として、王女殿下とお話しする機会を設けてもらっていると聞いておりますので・・・勘違い・・・したのかと・・・」
何だそのバカバカしい言い訳は・・・。それに・・・
「ほぅ・・・?ではお前が使節団代表なのか?」
外務大臣の顔のすぐ真横に立った影に、くわっと外務大臣が噛みつくように声をあげる。
「そうだ!私が使節団の代表で・・・っ!」
そして、ピタリと固まった。そりゃぁそうだろうなぁ・・・?かわいそうに・・・。
「俺はそんな命令書を渡した覚えはないが?」
俺の目からは後ろ姿しか見えないが、恐らく外務大臣は憤怒の青い炎を宿した双眸を向けられていることだろう。
「貴様が使節団の代表を名乗るのならば、今すぐ、この場でその命令書を見せてみろ」
「う・・・ぐ・・・ち、違うのです!陛下ぁっ!」
「あ‶!?何が違うって!?俺が使節団の代表に任じたのは、貴様じゃない!そもそも貴様は、オウカ国とは長年の付き合いがあるからとサポートの意味で同行を申し出たのではなかったか!」
「そ・・・それは・・・その・・・やつが・・・魔法伯ごときがその任は重いと自ら降りたのです!そもそも使節団の代表は外務大臣であるこの私が一番適任であり・・・!」
「はぁ・・・?その適任者の息子が、オウカ国の姫の私室に侵入したと聞いたが?」
「それは・・・何かの間違いで・・・!」
「何が間違いなものか!それはルドラ・シュヴァルツ魔法侯爵が現認しているぞ」
その言葉に、ハッとして外務大臣は、“陛下”の後ろでほくそ笑む俺の顔を見て険しく睨みつけてくる。
「な・・・何故アイツが・・・っ!全てそいつの企みなのです!」
「何が企みなものか!俺はシュヴァルツ魔法侯爵の推薦で使節団の代表にクロス魔法伯を選んだんだ」
「何故・・・何故あんな魔法伯ごときが・・・!」
「必要だったからだ!」
「・・・何故・・・何故ですか・・・!」
「貴様が知る必要はない」
陛下はぴしゃりと外務大臣に告げると、玉座の上のユエに頭を下げる。
「この男に使節団への同行を許可した私にも責任があります。この男と息子ともども好きにしてくださって構いません。我が国は貴国にそれ相応の賠償も支払いましょう」
陛下の言葉にユエは頬杖をついて暫く見据えた後、口を開いた。
「・・・わかった。では、我が国のものたちと同様に首謀者の息子とそれを唆し、私に使節団の代表と偽り騙そうとしたその父親にはそれ相応の罰を下す」
「そ・・・そんな・・・!お待ちください!」
その言葉の意味を、外務大臣は悟ったらしい。さすがはオウカ国と古くから付き合いのある貴族。
「貴様には発言を許可していない」
ユエの冷たい双眸が外務大臣を射貫く。
「連れて行け」
ユエが冷たく言い放てば、近衛たちが早速おっさんどもを玉座の間から引きずり出していく。
「や、やめてくれぇ~っ!た、助けろっ!陛下!この殺戮王め!残虐王がっ!」
いや・・・助けてくれと言っている割には・・・後半ただの悪口になってたけど。
「・・・では、アディティア・レーヴェ“殿”。貴殿とは後程話をさせてもらう」
「わかりました。オウカ国国王陛下」
丁寧に礼をしたアディティア陛下に対し、ユエは冷たくそう言い放ち、玉座を後にした。
そして俺の方へ振り返って歩いてきた陛下は盛大に溜息をついた。
「・・・お前な・・・一応俺、さっきまで会議の途中だったんだが」
「別にいいだろ?オウカ国を怒らせたら国の一大事なんだから」
「はぁ・・・全く・・・俺が即位してからは大人しくしていたと思えば・・・こんな欲を出すとはな」
「そのおかげで掃除が楽になっただろう?」
「・・・まぁな」
先ほどの緊張感を微塵も感じさせずに脱力した様子で頭をぽりぽり掻いている男に、俺の隣に立っていたアンシュも周りの臣下たち、近衛たちもぽかんとしていた。
「さて、まずはウチの国の使節団を激励してやらないとな」
「あぁ・・・そうだな」
そう言ってアンシュを引っ張って行こうとすれば、アンシュが困惑しながら耳元で囁いてきた。
「あの・・・えっと・・・陛下・・・ですか?」
「あぁ・・・そうだけど?」
「それがどうかしたか?」
俺と陛下のその答えにアンシュは目をぱちぱちさせながらも・・・
「わ、わかりました」
うん。その柔軟性は養父のラーヒズヤによく似ていると感心した俺であった。
ルドラ「あ、因みにウチの国の名前はそのまま陛下の苗字の・・・“レーヴェ”王国だ」
アンシュ「いや、最初に紹介させておくべきでしょう、それ」
ルドラ「すまん、忘れてたわ」




