酒宴と旅行の予定
「わぁっ!久しぶりね~、大魔王!」
そう威勢よく上がり込んできたのは、ライラック色の髪に赤い瞳の美女である。髪はハーフアップにしているが結び目は左寄せにしており、好奇心に満ちたような瞳は彼女の魔法師団の研究者気質を如実に表している気がする。
「誰が大魔王だ、誰が」
そう、ぴしゃりと言えば・・・
「何だ、先ほどはまんざらでもなかったくせに」
先にソファーに腰掛けて晩酌を始めているラーヒズヤが呟く。そしてラーヒズヤの隣に何の躊躇いもなく美女が腰掛ける。
「おっ!ルドラくんのお墨付きでたの?」
「俺が許可したのはわふたん大魔王の方だ」
「あくまでもわふたんで行くのか」
「もちろん」
「あ~っははははははっ!やっぱりルドラくん最高っ!ルドラくんの魔法使いの異名にも入れろって抗議してきたもんねっ!」
「もちろんだ!最近はニシャの名前も入れさせようか迷っている!」
「じゃぁ、ラーヒズヤもこうする?“ハリカは俺の嫁!鬼の魔法師団長”!」
因みに、“ハリカ”と言うのはこの美女の名前であり・・・言葉通りラーヒズヤの嫁である。
「や・・・やめろ、恥ずかしい!“鬼”は百歩譲って許してやるが・・・それは・・・その・・・」
普段“鬼の魔法師団長”などと呼ばれているラーヒズヤ。現場などでは性格が変わるとかなんだとか言われているが色恋沙汰についてはこうしどろもどろになるのが何より面白い。
「俺も・・・そうしようか。“ニシャは俺の嫁!わふたん大魔王”」
「・・・やめなさい」
そう、ノリノリで言ったのだが、後ろからシロナに肩を掴まれ・・・断念した。そしてシロナはハリカの横に腰掛け早速チューハイを乾杯し合っていた。
「ドゥルーヴは?」
「あぁ、もうすぐ来ると思うが・・・」
『あ・・・あなたはあの時の!』
『あぁ・・・君は・・・』
何だか玄関が騒がしいな。
「何かあったのか」
「あぁ、ルドラさま!この方ですよ!」
玄関では、アールシュとアンシュが騎士団長・ドゥルーヴを出迎えていた。
「この方があの雨の日、俺をここへ送ってくれたんです!」
まさかドゥルーヴがそうだったとは・・・。
「あぁ・・・君は今はここで執事をしているのか」
「はい!執事兼助手です」
「アールシュと同じだな・・・」
「因みに、ラーヒズヤとハリカの養子に入れたんだ」
「はい、おかげさまで」
ぺこり、とアンシュが一礼する。
「え・・・ハリカが産んだのか・・・?」
ドゥルーヴが驚愕したように目を見開いた。
「だから養子だってば」
本当はすごいひとなのに、何故だかたまに抜けている。
そして改めて、一同の前でアンシュとニシャを紹介した。ついでにクロもちびっ子狼双子を抱っこしてソファーに座っている。そしてみんなでソファーに腰掛け、俺が作ったつまみと酒を囲みながらしばし歓談となった。もちろん子ども組はジュースだが。
「そうだ、アンシュちゃんはお酒飲む?もう飲める年齢でしょ?」
と、ハリカ。一応養母と養子なのだが、年齢はそう大差なかったりする。
「あぁ・・・いえ、飲んだことがないので」
「うえぇっ!?飲もうよ~!ほら、果実酒!おいしいよ!」
ゲームでは飲酒シーンなどがなかったからぶっちゃけアンシュのお酒耐性はわからないが、ハリカに勧められておいしそうに飲んでいる。ニシャはちびっ子狼双子と戯れながら兄の様子をしげしげと見つめている。何だかちょっと気にくわなかったので、ニシャの顎を掴んで華麗にこちらへ向けさせる。
もちろん、俺はニシャの横をキープしている。
まぁ、間にちびっ子狼双子がちょろちょろしているがそれはそれで愛らしいのでいいだろう。
「・・・ルドラさま・・・?」
「・・・お前も飲んでみるか?」
「えっ」
ニシャが驚いたように声をあげる。
「・・・セリフと仕草が合っていないような気がする」
ぐごご・・・っ!まさかのたまに天然騎士団長・ドゥルーヴからの指摘が・・・っ!
「ニシャちゃんも興味あるの?試してみる?」
ハリカが飲みやすそうな果実酒を提案するが・・・
「いえ・・・私はまだ、ジュース・・・で」
そんな照れるニシャもかわいい。なでなでしてやるとかわいらしくこちらを見つめてくる。なにこの眼福。
「ねーね、これあ~ん」
あ、白い毛並みのシエルがニシャに唐揚げをフォークに刺して差し出していた。
「あ~む・・・おいしぃ!」
「やったぁ♡」
わふたんと合わさればさらにかわいいっ!
「ニシャは子どもは好きか?」
「・・・っ!はい!シエルちゃんもソラくんもかわいくて・・・」
シエルとソラをなでなでするニシャもかわいい。
「近く、オウカ国と言うところに呼ばれているんだ。そこにもかわいらしい女の子がいてな。一緒にどうだ?」
「・・・!外国・・・行ったことがないので楽しみですし・・・!その子とも仲良くなりたいです!」
「そうか、では早速準備を始めようか」
「いや、待て待て!」
そこでラーヒズヤが驚いたように立ち上がる。
「初耳なんだが・・・!またどこか行く気か!?味噌の時のような何週間も空けるのはよしてくれ!」
何だ。味噌の時は禁断症状が抑えられなかったのだから仕方がないじゃないか。
「1週間程度の滞在だし・・・一度行ったから転移で往復するから問題ない」
「その間の仕事は?」
「急用があればアールシュに頼んでくれ。あぁ、アンシュは一緒に連れて行くから」
「あ、はい!」
アンシュが驚いたように返事をする。まぁ、俺が近くにいられない時もあるだろうし・・・不服ではあるがニシャの兄なので特別に許すのだ。うん。
「あちらには猫がいるから、わふたんを連れて行けないんだ」
「お土産頼んだわよ」
と、シロナ。無論、わふたんへの献身は続けるつもりである。
「わったしもー!おいしいお酒求む!」
と、ハリカ。相変わらずなんだから。
「わかったって。土産も買ってくるから」
「・・・俺も」
と、ドゥルーヴ。
「よさそうなものがあったら買ってくるよ」
そう言えば、能面だが何だか嬉しそうなドゥルーヴである。まぁ・・・今ドゥルーヴの家も嫡男が女性恐怖症を発症していて大変だからな・・・何か気がまぎれるものでも差し入れてやろう。




