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【完結】隻狼の魔法侯爵の俺と悪役令嬢なはずの彼女  作者: 夕凪 瓊紗.com
第1章 隻狼の魔法侯爵と悪役令嬢
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味噌を、求めて。


―――魔法爵会議はさくさく終わらせた。


数日間彼らを王都に待たせたとは思えぬほどのスピード感。


そして、会議が終わるやいなや、クロス魔法伯が送ってくれると言う味噌を待ちきれなかった俺。早速クロス魔法伯との研究活動と言い切り、強引にラーヒズヤを押し切りクロス魔法伯の屋敷があるクロス魔法伯領に向かった。


いや、領地と言ってもウチと同じで広大な領地とか、そう言うんじゃない。だだっ広いお屋敷と霊山のセットと言う特に税収も何もない場所である。

まぁ、魔法爵と名のつく魔法侯爵と魔法伯爵と言うのは名誉爵のようなものだ。特別な魔法や能力を持つ者、とりわけ魔法に優秀な家を他国に渡さないために設けられた名誉職。


国からは爵位持ちと言うことで給料が出るし、研究や活躍によっても報酬が出る。更にはラーヒズヤのように魔法師団に所属するものも多い。


中には元々領地を持っていて、領民を抱えてきた者もいる。そう言った魔法爵は大体国から別に魔法爵と言う称号をもらっているのである。


ただ、元々爵位持ちではなかった魔法爵たちはぶっちゃけ言って魔法バカばっかりなので、特に領地を治めたいなどと言う野望を持っているものは少ない。


この国が気に入らなければすぐに出て行っても、他国ですぐに重宝されることが多いのだ。けれどもこの国にとどまっているのは現状で満足していると言う証拠でもあり、この国の王族に仕えるならいいと言っているからである。まぁ・・・あのバカ王子に関しては俺たちは満場一致で・・・“ムリ”だった。国王陛下がいるからみなこの国にとどまっているし、唯一の魔法侯爵の俺が陛下に忠誠を誓っているから他の魔法伯の彼らも付いてくるのである。


そんな自由だけども結束している俺たちは割と互いの屋敷に遊びに行ったりもする。

俺も早速クロス魔法伯の屋敷にちょっくら挨拶に伺えば、キレイなクロス魔法伯夫人とかわいらしい娘のジュリア・クロス嬢に出迎えられた。


俺が味噌やなんやかんやを仕入れに行くと言えば、ジュリアちゃんもついていきたいと言うので早速クロス魔法伯とジュリアちゃんと3人で隣のカシー伯爵領へ向かった。


しかしながら俺たちを待ち受けていたのは、「大豆派」と「小豆派」の大規模な衝突であった。なんと・・・味噌の原料大豆と・・・あんこの原料小豆の争い・・・?てか、あんこもあったのか!ここにあんこがあったのか・・・!


しかしながら、カシー伯爵の弱り切った表情は・・・。そしてもう終わりだとご家族や家臣たちまで涙を流す始末・・・。しょうがない。ここは俺が出てやろう・・・。


俺は空中高くに浮き上がり、そして拡声魔法で言い放った。


『俺は味噌もあんこも食べたいっっ!!』

・・・と。


そしてそんな俺の膨大な魔力のこもったその声は、何かを破壊した。そう・・・このカシー伯爵領には大規模なジャミング魔法がかけられていたのだ。そして、領民たちを大豆派と小豆派で争わせることで領内を混乱させ、領地の素晴らしい和食食材を領外に宣伝しようとしていたカシー伯爵領に打撃を与えるつもりだったのだ。


なんと恐ろしいことを・・・!味噌もあんこもすばらしいのに!むしろあんこへの禁断症状も出てきてしまったじゃないかっ!


ぐぬぅっ!許せんっ!!


そして俺はそのジャミング魔法の魔力を辿り、隣の領地へと脚を踏み入れ・・・領主とそのお抱えの魔法使いをとっつかまえておどろおどろしいほどの魔力で恐怖を植え付けながら、大豆と小豆のすばらしさを説いてやった。


彼らは二度とカシー伯爵領に手出しをしないと泣いて懇願するので特別に許してやったが・・・大豆と小豆を争わせた罰は国王陛下にチクらせてもらう。その後、領主は降爵の上減俸となり、魔法使いはその資格剥奪と、魔力封じの鎖を嵌められ懲役刑が下ったらしい。


さて、無事にカシー伯爵領の危機を救った俺は、たくさんの味噌や大豆食品、更にはあんこや米まで!!無償で譲ると言われたのだが、それはさすがに味噌魂が許さない・・・。もれなく購入し、領民のみなさまからの感謝のしるしとしておはぎやうぐいす餅、桜餅などの和菓子をカシー伯爵のご家族やクロス魔法伯父娘とともにごちそうになった 。これにはジュリアちゃんも大満足であった。もちろんレシピも教えてもらったのだ。


こうして・・・


―――


「そんな苦労を掛けて手に入れた味噌で作ったのが・・・この味噌汁だ」


俺は屋敷のみんなの前に自慢の和食を並べた。因みにウチの屋敷はそもそものひとの数が少ないし、ひとりでご飯を食べるのは悲しいので、使用人のアールシュや使い魔のわふたんずも一緒に食べる。もちろんニシャとアンシュも一緒だ。


他にも味噌汁の他に、カシー伯爵領で獲れたカシー米、クロス魔法伯の屋敷の自家製漬物、そして俺のマイ・レパートリー筑前煮、卵焼き、焼き鮭などを用意している。


更に食後のお菓子にはあんこを上に乗せたおはぎと、敢えてあんこを中に包んできなこをまぶしたおはぎを用意している。


いやぁ・・・それにしても西洋風な国だと思ったら、その中にも和風な領地があるとは・・・。ん・・・?和風・・・?待てよ・・・?


クロス・・・カシー・・・クロス・・・カシー・・・?カシ・・・イ?


黒須クロス有利ユウリ香椎カシイ海斗カイト!」

※漢字につきましては完全にルドラのイメージです。


「・・・何を仰っているのかわかりませんが・・・前置きが長いです、ルドラさま」


「ぐはっ」

容赦のないアールシュのひと言に、『いただきます』でみんなで今夜の晩餐を楽しむのであった。



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